体重超過で減給のザイオン、減量でボーナス支給のディーオウ――NBA選手たちの特殊な契約形態<DUNKSHOOT>

体重超過で減給のザイオン、減量でボーナス支給のディーオウ――NBA選手たちの特殊な契約形態<DUNKSHOOT>

体重超過で減給のザイオン(左)のほか、ディーオウ(右上)は減量、デイビス(右下)はウェイト維持でボーナス支給という条件が契約内容につけられていた。(C)Getty Images

先日、ニューオリンズ・ペリカンズのザイオン・ウィリアムソンが延長契約を締結。内容は5年で1億9300万ドルのMAX契約だが、ここに今季オールNBAチーム入り、あるいはMVP、最優秀守備選手賞に選ばれれば、金額が2億3100万ドルに跳ね上がることが話題になった。

 ただしこの契約には条項が盛り込まれている。198cm・128kg、負傷後には一時136kgまで体重が増えた巨漢のザイオンが、これ以上オーバーウェイトにならないよう、規定の体重を超えたら減給というものだ。報道によれば、体重(ポンド)と体脂肪率の数字を合わせて「295」を超えないことがその条件だ。

 現在の体重128kgは約282ポンドだから、体脂肪は13%以下に絞らなければならない。オーバーウェイトは身体に負担をかけ、ケガの危険性も上がるため、予防のためにも、賢明な条項だろう。

 だがNBAにおける「太り過ぎ減給作戦」は、ザイオンが初めてではない。

 コビー・ブライアントを軸に、2009、10年と連覇したロサンゼルス・レイカーズに、10年のドラフト2巡目で入団したデリック・キャラクターという選手がいた。彼は身長206cm、体重も一時140kg近くあった文字通りのビッグマン。レイカーズは47万3000ドルのサラリーを提示したが、これには条件がついていて、シーズン前の9月10日の時点で125kgであること。もしそれが達成できなければ、手にできるのは約半分の25万ドルだった。
  その一方で、「体重を減らせばボーナス支給」の"ニンジン作戦”のケースもある。

 元フランス代表のボリス・ディーオウは、サンアントニオ・スパーズで優勝を勝ち取った14年のオフ、チームと4年2800万ドルの契約延長にこぎつけた。

 この時の契約には、「シーズン開幕時の10月25日に115 kg以下であること」。そして「オールスターウィークエンド明けの火曜」と、「シーズン終盤の4月1日」にもその規定内の体重に収めていれば、それぞれ15万ドル、15万ドル、20万ドル、つまり、3回とも体重をキープできていれは、計50万ドルのボーナスが得られる、という条項がつけられていた。

 多くの選手がウェイトオーバーになるのは長期休暇明けであるから、おもにそのタイミングに喚起を促したものだ。

 50万ドルは現在のレートだと、6750万円。体型キープで大金が手に入るなら、さぞかし体重管理にも気合いが入ったことだろう。

 同じく元ボストン・セルティックスのグレン・デイビスも、「体重管理ボーナス」を提示された1人だ。“ビッグベイビー”の愛称で知られたように、130kgを超える巨体を誇った彼は、09年のオフに2年間で600万ドルの契約延長を勝ち取ったが、そのうち保証されていたのは500万ドル。残りの100万ドルは、しっかりウェイトをコントロールできたら1シーズンにつき50万ドルのボーナスをもらえる、という条件付きだった。
  トレーニングキャンプに絞った身体で登場したデイビスは、地元紙の記者陣から契約内容について聞かれ、「このボーナスは大きい。金額次第では、承諾しなかった」と語っている。

 また、身体はビッグながらアジリティがあり、プレースタイルがデイビスと似ていると言われたセルティックスの後輩、ジャレッド・サリンジャーも、体重問題を抱えていた。

 サリンジャーはマイケル・ジョーダンやコビー・ブライアント、レブロン・ジェームズら、歴代のスーパースターたちも活躍した高校生版オールスター、マクドナルド・オールアメリカンゲームに出場(10年)し、大会MVPにも選出されたほどの注目選手だった。

 しかしドラフト前から背中にトラブルを抱えていることが漏れ伝わり、それはオーバーウェイトが原因であると、多くの球団は二の足を踏んだ。

 そんななか、セルティックスは12年のドラフト1巡目21位で彼を指名。10戦目のトロント・ラプターズ戦でダブルダブルを達成するなど前途洋々のスタートを切ったかに思われたが、2月に腰椎の手術が必要となり、シーズン中の復帰は絶望視されていた。

 その後も体重増加が原因で疲労骨折を起こした彼に、当時のGMダニー・エインジは「クラブが求めるフィットネス基準を満たしていない」と指摘。サリンジャーの素質を高く評価し、ルーキー契約終了後の延長も視野に入れていたからこそ、エインジはチームの一員であることの条件として彼に真剣に体重を管理することを促した。
  負傷欠場中、チームがプレーオフ出場に向けて邁進していたのをコート外で眺めていた彼は一念発起。スイミングを中心に減量に取り組むと、4月には試合に復帰する軌跡的な回復を遂げた。

「疲労骨折は神からの啓示だった。これがあったから、ウェイトコントロールの大事さに気づけた。みすみすNBAでのキャリアを縮めるところだった」(サリンジャー)

 翌シーズンは81試合に出場し(先発73試合)、デビュー以来もっとも安定したシーズンを送ったが、結局ボストンは一度提示したクオリファイングオファーを取り下げ、サリンジャーはオフにトロント・ラプターズに移籍。そこでも開幕前に左足の第5中足骨を修復する手術を受け、デビュー戦は年明けに持ち越されると、結局この年がNBAで最後の年に。現在は中国リーグでプレーしている。

 サリンジャーの場合、 父親も最高時には390ポンド(177kg)に達するなど、 家系的に代謝に問題があり、遺伝的に体重が増加しやすい体質だったとのことで、減量は人並み以上の努力と苦労が必要だったようだ。
 
 バスケットボールの才能は高く評価されつつも、体質的な問題でオーバーウェイト、それがケガの原因となってキャリアに影響するのは残念だが、アスリートである以上、避けては通れない道だ。

 ザイオンにとっても、「295」はなかなかタイトな数字に思えるが、スーパーMAXなサラリーだけでなく、昨シーズンを全休した後、己の真価を示したいという強い思いが、ウェイトコントロールへのなによりのモチベーションになることだろう。

文●小川由紀子
 

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