【ユーロバスケット・プレビュー|後編】スロベニアの連覇か、それとも……。欧州選手権に出場する24か国から注目チームをピックアップ<DUNKSHOOT>

【ユーロバスケット・プレビュー|後編】スロベニアの連覇か、それとも……。欧州選手権に出場する24か国から注目チームをピックアップ<DUNKSHOOT>

2017年大会ではドンチッチ(右)とドラギッチ(左)擁するスロベニアがセルビアを破り頂点に。はたして今大会の優勝の行方は?(C)Getty Images

9月1日に開幕するユーロバスケット。8日までの8日間で行なわれる予選ラウンドでは、24チームが4つのグループに分かれて総当たり戦を行ない、各グループの上位4チームが、ベルリンに場所を移して10日から始まる決勝トーナメントに参戦する。

 予選ラウンドのグループ分けは以下のとおりだ。(括弧内は開催地)

■グループA(トビリシ、ジョージア)
モンテネグロ
ジョージア
スペイン
ブルガリア
ベルギー
トルコ

■グループB(ケルン、ドイツ)
ドイツ
ハンガリー
スロベニア
リトアニア
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
フランス

■グループC(ミラノ、イタリア)
ギリシャ
エストニア
ウクライナ
英国
イタリア
クロアチア

■グループD(プラハ、チェコ)
オランダ
フィンランド
ポーランド
チェコ共和国
イスラエル
セルビア
 “死のグループ”となりそうなのは、ディフェンディングチャンピオンのスロベニア、昨年の東京オリンピックの準優勝国フランス、伝統的な強豪国リトアニア、そして近年NBA にも多くの選手を輩出しているホスト国のドイツが揃ったグループB。このメンツを見る限り、ハンガリーとボスニア・ヘルツェゴヴィナの次ラウンド勝ち抜けは相当厳しそうだ。

 そしてこのグループを勝ち抜けた国が決勝トーナメントで対戦するのは、グループAに属するチーム。ここでは、現世界チャンピオンのスペインとトルコの2強だ。グループAの1、2位チームが、グループBの4、3位チームとラウンド16で対戦することになるため、グループBの4強にとっては、グループ内での順位争いが焦点となる。グループ予選最終日、9月7日に行なわれるフランス対スロベニア戦は、ノックアウトステージ級の激戦になることだろう。

 ただ、スペインは大エースのリッキー・ルビオ(クリーブランド・キャバリアーズ/負傷中)とマーク・ガソル(元メンフィス・グリズリーズほか/代表引退)の2人が不在で、2019年のワールドカップ優勝チームからはかなりインパクトが劣る。今大会へ向けたテストマッチでも、これまでギリシャ、リトアニアとそれぞれ2回ずつ対戦したうち、勝ち星はギリシャ戦の1勝のみに止まっている。
  一方でシェド・オスマン(キャバリアーズ)、アルペレン・シェングン(ヒューストン・ロケッツ)、フルカン・コルクマズ(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)のNBAトリオに、アメリカから帰化したポイントガードのシェーン・ラーキン(元ボストン・セルティックスほか)が加わるトルコは大会屈指のダークホースだ。この春、代表ヘッドコーチに任命されたエルギン・アタマンHC(ヘッドコーチ)も「目標は優勝」と豪語している。

 アタマンHCは昨季も「アナドルー・エフェスのユーロリーグ2連覇」を公約に掲げ、見事に実現してみせた実力者。以前トルコ代表を率いた際には、2014年のワールドカップでベスト8入りを果たしている。

 オスマンはこの時のメンバーで、ラーキンも言わずと知れたアナドルー・エフェスの司令塔であることから、アタマンHCのバスケットボールを実践できるメンバーは揃っている。8月12日に行なわれたスロベニアとのテストマッチも、オーバータイムに持ち込み1点差で惜敗という大健闘だった。
  ラーキンが不在だったこの試合では、コルクマズがゲームハイの33得点をマークし、ゴラン・ドラギッチ(シカゴ・ブルズ/28得点)、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス/23得点)を上回った。ただ、スターターとベンチメンバーに力の差があるため、いかにメンバーを回すかでアタマンHCの手腕が問われそうだ。

 グループCでは、アデトクンボ兄弟に加え、欧州きっての名司令塔ニック・カレイテス(元グリズリーズ)、NBA復帰が噂される若手ビッグマン、ヨルゴス・パパヤニス(元サクラメント・キングスほか)、帰化したアメリカ生まれのシューティングガード、タイラー・ドーシー(マーベリックス)らが仮ロースターに名を連ねるギリシャが、紙の上では今大会の最強軍団の一角だ。キャンプ中のテストマッチでも、スペインに一度敗れた以外は白星を重ね、順調な仕上がりを見せている。

 このグループでライバルとなるのは地元イタリアとクロアチアだが、クロアチアは2016年のリオ五輪では5位と奮闘、今大会の予選でもいち早く本戦出場を決めるなど強豪の顔を見せる一方で、すでに来年のワールドカップ予選からは脱落するなど、アップダウンがあまりに激しくまったく読めないチームだ。
  しかし得点頭であるボーヤン・ボグダノビッチ(ユタ・ジャズ)を筆頭に、2015年のドラフト5位指名のマリオ・ヘゾニャ(元オーランド・マジックほか)、ダリオ・シャリッチ(フェニックス・サンズ)、イビツァ・ズバッツ(ロサンゼルス・クリッパーズ)、ドイツリーグで活躍中の帰化したアメリカ人ガード、ジェイリーン・スミスなど、戦力はなかなか揃っている。

 そして、昨年のオリンピックでの善戦(5位)も記憶に新しいイタリアが、地元のサポートをどこまでエネルギーに変えられるか。

 彼らが上位3位までを埋めるとして、グループCではウクライナ、イギリス、エストニアによる4位争いが見どころとなりそうだが、戦禍にある祖国のため士気が高まっているウクライナは、会場の声援も味方につけそうだ。キングスのアレックス・レンや、トロント・ラプラーズ所属のシヴィ・ミハイルークらNBA組も奮闘してくれることだろう。

 グループDは、セルビアが頭ひとつ抜きん出ている。
  ニコラ・ヨキッチの参戦だけでも影響力は絶大だが、彼以外にも2年連続でユーロリーグのファイナル4MVPに輝いたヴァシリエ・ミチッチ、近年好調なバイエルン・ミュンヘンを牽引するフォワードの ウラジミール・ルキッチ、元グリズリーズのマルコ・グドゥリッチら実力者揃いの彼らは、今大会の優勝候補の筆頭に挙げられている。

 右ヒザの手術を受けたボグダン・ボグダノビッチは欠場。今年のドラフトでマイアミ・ヒートから27位指名を受けたニコラ・ヨビッチと、オクラホマ・シティサンダーの若手アレクセイ・ポクシェフスキーは球団との合意が得られず出場できない模様だが、セルビアの首位通過はまず間違いない。

 しかしそのほかにも、なかなか勝負強さをもったチームが揃っている。八村塁のワシントン・ウィザーズでのチームメイトであるデニ・アブディヤのいるイスラエル。 自国ファンの声援がすさまじい、ラウリー・マルッカネン(キャバリアーズ)擁するフィンランド。粘り強さのあるポーランド。ウィザーズから古巣バロセロナへの移籍が決まったトーマス・サトランスキーがいるチェコも、結束力がすばらしい好チームだ。オランダが一歩劣るか、といったところで、3席を4チームで競う展開が予想される。
  巷の優勝予想は、スロベニア対セルビアの旧ユーゴスラビア勢による頂上対決だ。セルビアがグループ首位、スロベニアがグループ2位で勝ち抜けた場合、両者は決勝戦まで顔を合わせることはない。

 しかしその場合、スロベニアは準々決勝でヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)率いるギリシャを破り、ヨキッチのセルビアは準決勝でフランスが立ちはだかるという難関が待ち受けるかもしれない。
  今大会の優勝チームを占う上で重要なのは、グループBの順位模様だ。そして、トルコを筆頭としたダークホースの躍進、さらにはどんな番狂わせが起きるかもユーロバスケットの醍醐味のひとつ。

 ここから本戦までの間に、ブルガリア、ポーランド、クロアチアを除く21チームは来年のFIBAワールドカップの予選試合も消化する。トレーニングキャンプを公式戦で仕上げるという、最高の状態で挑んでくる猛者たちによる熱い3週間が、もうすぐ幕を開ける。

文●小川由紀子

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