“異色のキャリア”のヴェラアズール。渡辺薫彦調教師が下した英断が大舞台で花開く【ジャパンカップ】

“異色のキャリア”のヴェラアズール。渡辺薫彦調教師が下した英断が大舞台で花開く【ジャパンカップ】

ジャパンCで3番人気に支持されたヴェラアズール(6番)がGⅠ初挑戦で初制覇を果たした。写真:産経新聞社

27日、42回目を迎えるジャパンカップ(GⅠ、東京・芝2400m)が東京競馬場で行なわれ、単勝3番人気に推されたヴェラアズール(牡5歳/栗東・渡辺薫彦厩舎)が、1番人気のシャフリヤール(牡4歳/栗東・藤原英昭厩舎)を差し切って優勝。GⅠ初挑戦・初制覇という快挙を成し遂げた。
 
 3着には4番人気のヴェルトライゼンデ(牡5歳/栗東・池江泰寿厩舎)が差し込み、5番人気の”三冠牝馬”デアリングタクト(牝5歳/栗東・杉山晴紀厩舎)、2番人気のダノンベルーガ(牡3歳/美浦・堀宣行厩舎)はそれぞれ4、5着に入着。上位人気の馬が5着までを占める結果となった。

 天皇賞(秋)(GⅠ、東京・芝2000m)を制したイクイノックス(牡3歳/美浦・木村哲也厩舎)や日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)を制したドウデュースが出走を回避したこともあり、人気は割れに割れた。なかでも人気を集めたのは、昨年の日本ダービー馬シャフリヤール、前走の京都大賞典(GⅡ、阪神・芝2400m)を圧勝して重賞初制覇を達成したヴェラアズール、前走の天皇賞(秋)で僅差の3着に食い込んだダノンベルーガの3頭だった。

 当日早朝の前売りではこの3頭がオッズ4.7倍の1番人気で並ぶ時間帯もあったほどだった。最終的にはシャフリヤール(3.4倍)、ダノンベルーガ(4.2倍)、ヴェラアズール(4.5倍)の順になったが、そのオッズの差はわずかで、いわば”三強対決”というような図式になった。

 続く4番人気のヴェルトライゼンデ(9.5倍)までが”一桁オッズ”で、5番人気のデアリングタクト(13.0倍)からは10倍を超え、上位人気馬とは支持率にやや差が付いた。
  前日の早朝に降雨はあったものの、当日の馬場コンディションは、少し時計がかかる「良」。芝が傷んではいるものの、インコースを通った馬が止まらないという傾向は顕著で、最終コーナーで外を回った馬は距離を損する分、やや不利になるトラックバイアスは前週と同様だった。

 レースは予想通りにユニコーンライオン(牡6歳/栗東・矢作芳人厩舎)の逃げでスタート。ヴェルトライゼンデが先行集団に加わり、ダノンベルーガとヴェラアズールは中団、デアリングタクトとシャフリヤールは後方を進んだ。

 向正面に入るとユニコーンライオンがペースを落としたため、馬群は密集した様相で展開。1000mの通過ラップが1分01秒1というのは、トップ・オブ・トップのGⅠのペースとしては極めて遅く、上がりの勝負になる公算が高くなった。

 そして、馬群が一団となって向いた直線。距離ロスを防ごうとしてインを回った馬たちは前が壁になって、なかなか進路を見い出せないでいたが、先行したヴェルトライゼンデが抜け出しにかかり、早めに仕掛けたダノンベルーガがそれに襲い掛かる。

 さらには外を回ったシャフリヤールが一気に脚を伸ばすが、インコースからようやく進路を見つけたヴェラアズールが馬群を縫うように末脚を爆発させる。ゴール寸前まで3頭の激闘が繰り広げられたが、勢いに優るヴェラアズールがシャフリヤールを3/4馬身抑えて栄光のゴールを駆け抜けた。

 先行勢で唯一粘ったヴェルトライゼンデが3着に入り、ようやく”らしい”末脚を繰り出したデアリングタクトが4着に健闘。ダノンベルーガは、シャフリヤールに進路を妨害される(同馬の鞍上クリスチャン・デムーロ騎手は不注意騎乗で騎乗停止処分を受けた)不利もあって、やや差が開いた5着に終わった。

 外国馬では、昨年も5着に入ったグランドグローリー(牝6歳/仏・G.ビエトリーニ厩舎)の6着が最先着。今年も勝負に絡むことはできなかった。 ヴェラアズールは、父が2010年の日本ダービーや2012年天皇賞(秋)を制したエイシンフラッシュ、母ヴェラブランカ(父クロフネ)という血統。エイシンフラッシュ産駒としては初のGⅠ制覇となった。

 素質は評価されていたものの、馬体が大きいため脚元に負担がかかることなどもあって、デビューから16戦にわたってダートを使われていた本馬。「いつか芝を使いたいと思っていた」という渡辺調教師が英断に踏み切ったのは今年3月。淡路特別(2勝クラス、阪神・芝2600m)を快勝すると、芝路線に転向して4戦目のジューンステークス(3勝クラス、東京・芝2400m)も勝利を挙げた。

 そして秋初戦、初の重賞挑戦となった京都大賞典(GⅡ、阪神・芝2400m)でも実績馬をなで斬りにして圧勝。ここまでの芝5戦では、全て上がり3ハロンの最速タイムを叩き出していた。

 GⅠ初挑戦となったジャパンカップ。6番枠から出たヴェラアズールは中団馬群の後ろ目でロスなくインコースを進み、抜群の手応えで直線を向いた。”止まらない”内に各馬が殺到したため前が壁になったものの、ライアン・ムーア騎手はじっと我慢し、僅かにできたスペースを急襲。

「追い出したときに勝ったと思った」とムーア騎手が言うように、ヴェラアズールは自慢の末脚を爆発させて一気に突き抜けて快挙を成し遂げたのである。ちなみに上がり3ハロンは33秒7と、シャフリヤール、デアリングタクトと並び、またも最速タイを記録していた。

 文字通り”我慢”の末に芝へ路線変更し、今回の勝利を勝ち取った渡辺薫彦調教師。騎手時代には1999年菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)を制したナリタトップロードとのコンビで知られるトレーナーは、「こちらの想像を超えた走りをする馬で、まだまだ良くなっていくと思う」と先々への夢を広げていた。

 もうひと言付け加えるなら、”スローペースの上がり勝負”に強いというキャラクターは、同じ傾向のレースとなった日本ダービー、天皇賞(秋)を制した父エイシンフラッシュと非常に似ている。これからも、こうしたレースではマークを怠れない存在となるだろう。 惜しくも2着に敗れたシャフリヤールは、馬体の良さが際立っていた1頭。惜しむのは15番という外枠からのスタートになったため、終始、馬群の外々を回らされたこと。その距離損を考えれば勝ちに等しい能力を発揮したと言ってよいだろう。さすがダービー馬、海外GⅠの勝ち馬だと言える走りを見せた。

 3着のヴェルトライゼンデは、先行勢のなかで唯一粘り切ったタフさが光った。ムラ駆けの傾向がある馬だが、ホープフルステークス(GⅠ、中山・芝2000m)で2着、日本ダービーで3着と大舞台で好走している実力をあらためて示した。

 5着に敗れたダノンベルーガは、いったんは先頭をうかがいながら、最後は脚が止まった印象。抜け出してきたヴェラアズールと、内へもたれたシャフリヤールに挟まれて、川田将雅騎手が立ち上がるシーンが見られたが、この時点ですでに両脇の2頭を跳ね返すだけの脚勢はなかったように見える。追い切り後の共同会見で堀宣行調教師が、「2400mとなると工夫が必要」と話していたが、2000mがベストで、2400mは彼にとって距離的に少し長いのかもしれない。

文●三好達彦

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