2022年のF1を席巻したレッドブル、他の追随を許さなかった強さの理由を3つの視点から考察する【識者の目】

2022年のF1を席巻したレッドブル、他の追随を許さなかった強さの理由を3つの視点から考察する【識者の目】

2013年以来のコンストラクターズタイトルを掴んだレッドブル。その強さが際立つシーズンとなった。(C) Getty Images

11月最後の週末、ホンダ・レーシング・サンクスデーが開催されたモビリティリゾートもてぎには、2年連続でのF1王者に輝いたマックス・フェルスタッペンとランキング3位という成績を残したセルジオ・ペレスの姿があった。

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 2022年シーズンのレッドブルは、2013年以来となるコンストラクターズタイトルもつかみ取ったが、前年限りでF1参戦活動を終了し、HRC(ホンダ・レーシング)へと体制を変えながらもレッドブル・パワートレインズを献身的にサポートし続けたホンダの技術力が、その結果に大きく貢献したのはいうまでもないだろう。

 常勝を誇ったメルセデスがマシン開発の方向を見誤り、序盤、好調だったフェラーリが失速したとはいえ、年間を通して一貫性を発揮したレッドブルの強さの秘密とは何なのだろうか?

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【ハンドリングにも好影響を及ぼした軽量化】

 まず挙げられるのは、長らく禁止されてきたグラウンドエフェクトが合法化、ホイールサイズがこれまでの13インチから18インチに大径化され、また、最低重量が752kgから795kg(その後、チーム間の合意で798kgに変更)へと引き上げられるなど、大きく変更された新レギュレーションに適切な対応をしていったことだ。

 レッドブルが用意したRB18は、開幕を迎える段階で最低重量を15kg程度上回っていると噂され、モータースポーツコンサルタントのヘルムート・マルコも「我々が抱える唯一の問題」とそれを認めていた。だが、シーズン半ばまでに5~6kgの減量に成功。さらに最低重量近くまで軽量化を進め、1周あたり、0.2~0.3秒のタイム短縮につなげた。

 そして軽量化は、副次的な効果も生んだ。

 シーズン序盤、重量バランスの問題もあり、ペレスが好むアンダーステア傾向だったマシンが、バラスト(重り)の位置を自由に移動させられるようになったことで、フェルスタッペンが好むオーバーステア傾向のマシンへと特性を変えたのだ。

 テクニカルディレクターのピエール・ヴァッシュは「シーズン初めには、ウェイトを動かせなかった。でもいくつかのオプションが存在するようになり、セットアップに自由が生まれた。フロントエンドの動きを調整し、シャープにすることで、自分の求めていたものを手に入れたマックスが有利になった」と語っている。
 【的を射ていた奇才ニューウェイの設計思想】

 チーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイの設計も的を射ていた。

「最初にレギュレーションを読んだ時、全ての車が同じようになってしまうと思い、魅力を感じなかった」と振り返るが、「サイドポッドの処理は非常にオープンであり、結果的にほぼ全てのチームが独自の異なる空力ソリューションを思い付いた」と腕を振るう余地はあったようだ。

 リアタイヤへ向かって滑らかな曲線を描き、低くなっていくサイドポッド、空気の渦を生み出すようなフロアボード前端の形状から、後方への気流を促そうという意図が見えるものの、RB18からはフロアを含めたマシン全体で効率的にダウンフォースを稼ごうという設計思想が感じられる。
  サイドポッドを必要最小限のサイズに抑えて“ゼロポッド”化し、マシン上面にきれいな空気を流そうとするメルセデス、サイドポッド上面を凹ませ、そこでもダウンフォースを得ようとするフェラーリのような分かりやすい特徴はないが、その辺りのバランス感こそ「空気が見える男」とも呼ばれるニューウェイならではのものといえる。

 グラウンドエフェクトが解禁されたことで問題になった、ダウンフォース量の変化でマシンが上下に振動するポーパシング現象に関しても、マスダンパーのようなパーツを装備して共振を抑制。ダウンフォースも大きいが、空気抵抗も大きいと評価されていたフェラーリが、さまざまな仕様のウィングを持ち込んでいたのに対し、レッドブルは、空力の肝となるフロア形状の微調整に注力し、シーズン終盤にはコースを問わず、速いマシンに仕上げた。

「フェラーリは早い段階から非常に速いクルマを持っていたし、多くのレースで彼らの方が少し速かった。しかし、我々はマシンを完成させ、全てのサーキットで機能させることに成功したんだ」と奇才は胸を張る。


【RB18でマックスより活躍する選手はいない】

 パワーユニット、新レギュレーションの解釈や開発方法以外に強さの要因を挙げるとすれば、それはやはり卓越したドライバーの力だろう。

 チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「年間最多記録となる15回の勝利、17回の表彰台、7回のポールポジション……。同じマシンで他の誰もが真似できないレベルのパフォーマンスを発揮している。RB18でマックスより活躍する選手はいない」と賞賛する。

 ペレスもモナコとシンガポールで優勝し、特にシーズン前半はフェルスタッペンを脅かす速さを見せたが、マシンの熟成が進むにつれ、その差は広がっていった。

「マックスは素晴らしい1年を過ごしたと思う。アップデートでRB18が僕にとって快適でなくなり、彼がクルマに慣れた時、間違いなく他の誰よりも上のレベルで運転していた。シーズンのどの段階でもレッドブルが支配的なマシンを持っていたとは考えてないけど、RB18を支配的なクルマに変えたのはマックスさ」

「2028年末までのレッドブルとの契約を終了した時点で引退することも頭にある」と語ったとされるフェルスタッペンだが、少なくともHRCが技術支援を行なうことが決まっている2025年までは、これまで通りの強さ、速さを見せてくれるに違いない。

文●甘利 隆

著者プロフィール
甘利隆(あまり・たかし)/東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter:ama_super

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