【リーグワン】今季導入の「アーリーエントリー制度」で大卒ルーキーの早期デビューも!? 躍動が期待される逸材5人をピックアップ!
2023年01月28日 07時00分THE DIGEST

リーグワンで早期の活躍が期待される帝京大の高本(左)と慶応義塾大の中楠(右)。写真(高本):産経新聞社/写真(中楠):西村尚己/アフロスポーツ
ラグビーのリーグワンは、昨年12月に開幕した今シーズンから新たな機会を作っている。
「アーリーエントリー制度」を導入したのだ。
旧トップリーグ時代を含め、これまでの国内リーグで大卒ルーキーが上位カテゴリーの試合に出られるのは最終学年を終えた後の4月1日以降だった。
ところが今季からは、所定の手続きを踏んだ学生が、年度の改まる前の大学選手権決勝後からデビューを狙えるわけだ。その決勝は去る1月8日に行なわれ、帝京大の優勝に終わっている。
もちろん新人が試合に出るには、既存の在籍選手との競争に勝たなくてはならない。当然ながら大学シーンとリーグワンとでは、フィジカリティの質が異なる。練習や試合でぶつかる外国出身者の数が多く、故障のリスクも高まる。
かような舞台へ、たとえば直近の選手権で頂点を争っていた学生がほぼ無休で挑むことには慎重な意見もある。実際にアーリーエントリーの登録を発表していても、チーム方針から本格的な合流をしていない選手も多い。
有力選手の加入が期待される東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督も、このように言う。
「(戦う)準備ができたらエントリーします。ただ、怪我(の危険性)もある。できるかどうかを見極めてからです。リフレッシュができているかどうか。旅行など、学生らしい最後を過ごしたほうがいいとも思っています。うちは『(学生に)早く来い』ということは言っていないです」
現況を踏まえれば、少なくともレギュラー組が盤石である、もしくは将来を見据えての起用を検討しない傾向のあるチームでは、アーリーエントリーでのデビューができる新卒生は生まれにくそうだ。
それでも早期の躍動が期待されるのは、以下の5名か(登録を発表していない、もしくは登録前の選手も含む)。持っている才能と所属先のニーズが符合する日は、いつやってくるだろうか。
――◆――◆――
■家村健太
(京都産業大→静岡ブルーレヴズ)
スタンドオフ、インサイドセンター/176センチ・93キロ
大学選手権で2シーズン連続4強入りの京都産業大で、ゲーム運びを担ってきた。立ち位置を自在に変え、相手の急所にキック、パスを通す。味方を前進させる。
「常に早くスペースにボールを運ぼうとしてきて、それが形になってきています」
一般的に、スタンドオフの選手は防御の際に相手の突進役の標的となりがちだ。家村には、その正面衝突へも耐性がある。
遡って2年時、コロナ禍に伴う長期の活動停止期間に筋力トレーニングに注力。体重自体の増加は「2~3キロ」ほどだが、筋量は大きく増やした。地道な積み重ねが、いまのパフォーマンスを支える。
ブルーレヴズでは、昨季、正司令塔に定着したサム・グリーンとの競争、もしくは協働が期待される。
■中楠一期
(慶應義塾大→リコーブラックラムズ東京)
スタンドオフ/174センチ・84キロ
スポーツ推薦制度を持たない慶應義塾大の正司令塔として、豪華戦力を有するライバル校に勝つべく「完璧な試合運び」を目指してきた。
具体的には、向こうの隊列の穴を絶妙なキックで突いた。陣地の取り合いを経て、望む位置から攻め返した。少機をものにして、接戦を制するイメージだった。
本人の目指す選手像が面白い。
「武器は頭。歩いていても試合が成立するような選手になりたいです」
常に思考を巡らせる習慣と、高いパス、キックの技術には、一緒に練習をしたことのある日本代表スクラムハーフの流大(東京サントリーサンゴリアス所属)にも高く評価される。
ブラックラムズでは昨季のリーグワンでベストフィフティーンのアイザック・ルーカス、好キックの冴える堀米航平に挑戦する。
■アサエリ・ラウシー
(京都産業大→進路未発表)
ロック、フランカー、ナンバーエイト/190センチ・113キロ
一般的に留学生選手が期待される突進力、攻撃力のみならず、防御時のワークレートでも高く評価される。味方のキックを追いかけて捕球役に圧をかけたり、地上の相手ボールに絡みついたりし、流れを引き寄せてきた。
「コンタクトは好きで、やらなあかん(と思っている)。1試合で何回、アタックするか(プレーに参加する回数)も増やそうと意識しています」
トンガ人で日本航空石川高出身。リーグワンにおいては、日本出身者と同列の「カテゴリーA」の扱いとなる可能性が高い。「カテゴリーA」は出場枠に上限のある「カテゴリーB」「カテゴリーC」の海外出身者と比べ、出場機会を得やすい。新天地で避けられぬハイレベルなポジション争いへ、愚直に挑む。
■サイモニ・ヴニランギ
(大東文化大→進路未発表)
ロック、フランカー、ナンバーエイト/196センチ・103キロ
フィジー出身である。背が高く、フィジカリティに長け、スピーディーかつしなやかに走る。タックラーを蹴散らす。
1年時から正ナンバーエイトとしてプレーできた大東文化大では、今季、スクラムでの馬力を期待されてロックとしても出番を得た。学生ラストイヤーは、12月11日の「関東大学リーグ戦1部 入替戦」でシーズンを終えている。
いまは新たな所属先でさらなるハードワークに耐えられるよう、個人練習を積んでいるようだ。その爆発力を、周りの実力者とシンクロさせられるか。
■高本幹也
(帝京大→進路未発表)
スタンドオフ/172センチ・83キロ
大学トップクラスの司令塔と謳われるスタンドオフは、帝京大の大学選手権2連覇達成に大きく貢献。防御を引き付けながらのパス、高低、長短を織り交ぜた足技、緩急自在の走りを適宜、使い分ける。
状況判断の礎は、広い視野だ。
「周りは見るようにしています。前だけじゃなく、色んなところに目を向けています」
もともと同級生だった李承信は、1年で退学してコベルコ神戸スティーラーズ入り。昨年には日本代表で10番をつけた。中学時代からしのぎを削ってきた間柄でもある仲間が、早々と晴れ舞台に立っているわけだ。
高本自身も早期のリーグワン出場、さらにその先を見据える。
「承信も入っている日本代表は、意識します。海外でもプレーしたい。成長のための選択をしていきたいです」
取材・文●向風見也
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「アーリーエントリー制度」を導入したのだ。
旧トップリーグ時代を含め、これまでの国内リーグで大卒ルーキーが上位カテゴリーの試合に出られるのは最終学年を終えた後の4月1日以降だった。
ところが今季からは、所定の手続きを踏んだ学生が、年度の改まる前の大学選手権決勝後からデビューを狙えるわけだ。その決勝は去る1月8日に行なわれ、帝京大の優勝に終わっている。
もちろん新人が試合に出るには、既存の在籍選手との競争に勝たなくてはならない。当然ながら大学シーンとリーグワンとでは、フィジカリティの質が異なる。練習や試合でぶつかる外国出身者の数が多く、故障のリスクも高まる。
かような舞台へ、たとえば直近の選手権で頂点を争っていた学生がほぼ無休で挑むことには慎重な意見もある。実際にアーリーエントリーの登録を発表していても、チーム方針から本格的な合流をしていない選手も多い。
有力選手の加入が期待される東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督も、このように言う。
「(戦う)準備ができたらエントリーします。ただ、怪我(の危険性)もある。できるかどうかを見極めてからです。リフレッシュができているかどうか。旅行など、学生らしい最後を過ごしたほうがいいとも思っています。うちは『(学生に)早く来い』ということは言っていないです」
現況を踏まえれば、少なくともレギュラー組が盤石である、もしくは将来を見据えての起用を検討しない傾向のあるチームでは、アーリーエントリーでのデビューができる新卒生は生まれにくそうだ。
それでも早期の躍動が期待されるのは、以下の5名か(登録を発表していない、もしくは登録前の選手も含む)。持っている才能と所属先のニーズが符合する日は、いつやってくるだろうか。
――◆――◆――
■家村健太
(京都産業大→静岡ブルーレヴズ)
スタンドオフ、インサイドセンター/176センチ・93キロ
大学選手権で2シーズン連続4強入りの京都産業大で、ゲーム運びを担ってきた。立ち位置を自在に変え、相手の急所にキック、パスを通す。味方を前進させる。
「常に早くスペースにボールを運ぼうとしてきて、それが形になってきています」
一般的に、スタンドオフの選手は防御の際に相手の突進役の標的となりがちだ。家村には、その正面衝突へも耐性がある。
遡って2年時、コロナ禍に伴う長期の活動停止期間に筋力トレーニングに注力。体重自体の増加は「2~3キロ」ほどだが、筋量は大きく増やした。地道な積み重ねが、いまのパフォーマンスを支える。
ブルーレヴズでは、昨季、正司令塔に定着したサム・グリーンとの競争、もしくは協働が期待される。
■中楠一期
(慶應義塾大→リコーブラックラムズ東京)
スタンドオフ/174センチ・84キロ
スポーツ推薦制度を持たない慶應義塾大の正司令塔として、豪華戦力を有するライバル校に勝つべく「完璧な試合運び」を目指してきた。
具体的には、向こうの隊列の穴を絶妙なキックで突いた。陣地の取り合いを経て、望む位置から攻め返した。少機をものにして、接戦を制するイメージだった。
本人の目指す選手像が面白い。
「武器は頭。歩いていても試合が成立するような選手になりたいです」
常に思考を巡らせる習慣と、高いパス、キックの技術には、一緒に練習をしたことのある日本代表スクラムハーフの流大(東京サントリーサンゴリアス所属)にも高く評価される。
ブラックラムズでは昨季のリーグワンでベストフィフティーンのアイザック・ルーカス、好キックの冴える堀米航平に挑戦する。
■アサエリ・ラウシー
(京都産業大→進路未発表)
ロック、フランカー、ナンバーエイト/190センチ・113キロ
一般的に留学生選手が期待される突進力、攻撃力のみならず、防御時のワークレートでも高く評価される。味方のキックを追いかけて捕球役に圧をかけたり、地上の相手ボールに絡みついたりし、流れを引き寄せてきた。
「コンタクトは好きで、やらなあかん(と思っている)。1試合で何回、アタックするか(プレーに参加する回数)も増やそうと意識しています」
トンガ人で日本航空石川高出身。リーグワンにおいては、日本出身者と同列の「カテゴリーA」の扱いとなる可能性が高い。「カテゴリーA」は出場枠に上限のある「カテゴリーB」「カテゴリーC」の海外出身者と比べ、出場機会を得やすい。新天地で避けられぬハイレベルなポジション争いへ、愚直に挑む。
■サイモニ・ヴニランギ
(大東文化大→進路未発表)
ロック、フランカー、ナンバーエイト/196センチ・103キロ
フィジー出身である。背が高く、フィジカリティに長け、スピーディーかつしなやかに走る。タックラーを蹴散らす。
1年時から正ナンバーエイトとしてプレーできた大東文化大では、今季、スクラムでの馬力を期待されてロックとしても出番を得た。学生ラストイヤーは、12月11日の「関東大学リーグ戦1部 入替戦」でシーズンを終えている。
いまは新たな所属先でさらなるハードワークに耐えられるよう、個人練習を積んでいるようだ。その爆発力を、周りの実力者とシンクロさせられるか。
■高本幹也
(帝京大→進路未発表)
スタンドオフ/172センチ・83キロ
大学トップクラスの司令塔と謳われるスタンドオフは、帝京大の大学選手権2連覇達成に大きく貢献。防御を引き付けながらのパス、高低、長短を織り交ぜた足技、緩急自在の走りを適宜、使い分ける。
状況判断の礎は、広い視野だ。
「周りは見るようにしています。前だけじゃなく、色んなところに目を向けています」
もともと同級生だった李承信は、1年で退学してコベルコ神戸スティーラーズ入り。昨年には日本代表で10番をつけた。中学時代からしのぎを削ってきた間柄でもある仲間が、早々と晴れ舞台に立っているわけだ。
高本自身も早期のリーグワン出場、さらにその先を見据える。
「承信も入っている日本代表は、意識します。海外でもプレーしたい。成長のための選択をしていきたいです」
取材・文●向風見也
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