多彩なパス&キックの使い手に、驚異のスプリンターも! 日本の国内ラグビーを盛り上げる“ファンタジスタ”5選【リーグワン】

多彩なパス&キックの使い手に、驚異のスプリンターも! 日本の国内ラグビーを盛り上げる“ファンタジスタ”5選【リーグワン】

日本の国内ラグビーを魅了するスタンドオフのクウェイド・クーパーと田村。(C) アフロスポーツ、Getty Images

世界中から有力なラグビー選手が集まる国内リーグワンのレギュラーシーズンは、中盤戦に突入する。

 ハイレベルなラグビーのよさは、様々な凄みを堪能できる点にある。

 骨のきしむようなぶつかり合い、圧巻のスピード、驚きの跳躍と、ファンの心を掴みうる要素には、「ファンタジスタの美技」も挙げられるのではないか。

 防御をきりきり舞いさせる走り、遠くのスペースを射抜くキックやパスは、最近まで声出し禁止だったスタンドを沸かせるファクターだ。

 本稿では、第8節からのスタジアムに楽しみをもたらしそうなファンタジスタたちを紹介する。予測不能な動きを是非現地で。

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 ●田村優(横浜キヤノンイーグルス・34歳)
スタンドオフ/181センチ・92キロ

 ワールドカップ日本大会時の日本代表。手にしたキャップ(代表戦出場数)は70。司令塔のスタンドオフとしての信条は「ゲームプランを理解して、コミュニケーションを取ってリードして、皆を同じ方向へ行かせる。スペースに速くボールを運ばせる」。この考えを形にするためのパス、キックは精度が際立っており、スペースを大胆にえぐる。相手に球を捕られれば即失点しかねない自陣ゴール前からでも、大外の味方へキックパスをつなげられる度胸とスキルを有する。

 今季は12月18日の第1節では、現役ジャパンのスタンドオフ、李承信を擁するコベルコ神戸スティーラーズと対戦。判定に苦しみながら39―30で勝利するまでの間、防御網の裏へ時にはふわりと、時にはシャープにキックを飛ばし、相手防御に混とん状態を作ったり、首尾よく陣地を奪ったりした。貫録を示した。


●アイザック・ルーカス(リコーブラックラムズ東京・24歳)
スタンドオフ/180センチ・85キロ

 2020年にオーストラリアから来日した金髪のランナーだ。愛称は「ミルキー」。連続攻撃のさなか、フォワード陣が作る陣形の後ろから出現しては防御ラインに仕掛ける。わずかな隙間を見つけてパスダミー、ステップを交えて一気に突破する。その繰り返し。すると防御が極端に走路を塞ごうとするから、フリーの味方へのパスが活きる。

1月29日の第9節では、2季連続国内タイトル4強のクボタスピアーズ船橋・東京ベイに38―40と迫った。長距離を走り切ってのトライ、グラウンド中盤のスペースを切るパスでチームに活力をもたらした。

「周りが頑張ってくれたおかげで、私の目の前にスペースが空く。私ひとりの成果ではない」

 そう謙遜したうえで、胸を張った。

「目の前の状況を見て、それに対応してプレーするのが得意です」
 ●山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ・28歳)
スタンドオフ、フルバック/176センチ・ 84キロ

 中学まではラグビーに加えてサッカーにも親しみ、丸いボールの方で全国有数の強豪校からも誘われた。

楕円球に専心するようになったのは、当時の深谷高ラグビー部監督だった横田典之氏に「2019年(ワールドカップ日本大会)の日本代表で10番を」と手紙で伝えられたから。以後はボディバランスとひらめきで天才と謳われ、18歳で日本代表の候補合宿に呼ばれるようになった。

 しなやかにタックルをかわす走り、相手の意表を突く多彩なキックが光る。スペースに転がった球をドリブルで弾ませ、軽やかに走ってトライを決めるさまは拍手喝采を呼ぶ。

「何をモチベーションにするかというところは、正直、自分のなかで定まり切っていないところではあります。ただ目の前のひとつ、ひとつの積み重ねが大切になってくる」
  練習熱心でもある。


●クウェイド・クーパー(近鉄ライナーズ・34歳)
スタンドオフ/187センチ・90キロ

 オーストラリア代表76キャップのレジェンドファンタジスタ。同僚のシオサイア・フィフィタ曰く、「すごく、タフな人」。どんな状況下でも落ち着いていて、プレーの質が変わらない、という意味だ。

パスをもらう際は果敢に防御の壁に仕掛ける。そのままぬるりと抜け出したり、タックラーに捕まる間際や捕まった直後に、多彩なパスを繰り出したり。昨季は、右端から左端へアメリカンフットボールで見られるようなワンハンドパスを通したこともある。

今季は開幕前からの怪我で長期離脱中だが、春までには復帰できるか。所属先のライナーズは目下、開幕7連敗中だ。2019年の来日以来、味方にも高いプレー水準を求めてきたこの人は、クラブの浮沈もカギを握る。


●クワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ・29歳)
ナンバーエイト/180センチ、・94キロ

 ラグビーでファンタジスタと言えば、幻惑的なプレーをするバックスの戦士が想像される。ただ、ぶつかり合いの激しいフォワード第3列にもファンタジスタと形容されうる人がいる。ブルーレヴズの闘将だ。

 一線級にあっては決して大柄ではないのに、相手の接点に何度も腕、肩を差し込む。ターンオーバーを決める。大型選手に正面からタックルしながら、そのままボールをもぎ取ることもある。

15人制のみならず、スピードを擁する7人制でも南アフリカ代表になったことがある。それだけに浮き球を捕る時のジャンプ力、パスをもらって走り出す際の加速力も光る。

「細かいことを気にするのではなく、自分がチームのために何ができるかを考えながらプレーします」

 三菱重工相模原ダイナボアーズに27―27と引き分けた第5節。味方のイエローカードで数的不利を強いられていた前半29分以降の10分間で、立て続けにジャッカルを繰り出した。両軍のファンを驚愕させるファンタジスタ。

構成●向風見也

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