リビングストンが語る“ウォリアーズ王朝が長く続いた理由”。「世界のスポーツシーンを見ても非常に稀なこと」<DUNKSHOOT>

リビングストンが語る“ウォリアーズ王朝が長く続いた理由”。「世界のスポーツシーンを見ても非常に稀なこと」<DUNKSHOOT>

ウォリアーズのフロントとして働くリビングストン。昨年9月にはジャパンゲームズで来日も果たした。(C)Getty Images

かつてゴールデンステイト・ウォリアーズで3度のリーグ制覇を果たしたショーン・リビングストン。2019年9月に現役を引退してからは同球団のフロント入りし、昨年はマネジメント側として初めて優勝を経験した。

 現在の彼の役割は、コートの内外で選手を管理すること。主に19~20歳の若い選手たちをサポートしている。

「NBAでは、選手1人1人が自分の会社の社長のようなものだ。メーカーと組んで自分をブランディングしたり、SNSでの発信にはパブリシティの役割がある。そしてファンたちとどう関係を育んでいくかも重要な点だ」

 2004年のドラフトで全体4位という高順位でロサンゼルス・クリッパーズに迎えられたものの、その後は大ケガを負い、Gリーグ行きも経験。リビングストンはなかなかの苦労人だ。
 「どんなことが起きてもいいように、自分のメンタルを常に準備しておくこと」

 これが、彼が選手たちに授けている教えだという。2007年に複数の靭帯を損傷する重症を負い、翌シーズンには全休も経験している彼の言葉だけに重みがある。

「彼はコート上でも素晴らしい選手だったが、フロントでは、リーダーシップ、コミュニケーション能力、そして静かな闘志、謙虚さと自信といったものを存分に発揮してくれている。

 彼には若い選手にとってのメンターになってもらいたいと願っている。彼自身が選手時代にあらゆることを経験しているからね。彼のキャリアには多くのアップダウンがあったが、彼はそうした経験を、若い選手たちと共有してくれている」

 選手時代から彼を高く評価していたスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)も、リビングストンがチームにもたらしているプラス要素をそう表現する。

 しかし、彼がキャリアで体験したのは苦労だけではない。10年間で9球団を渡り歩き、ジャーニーマンと言われたリビングストンだが、現役最後にプレーしたウォリアーズには5年間在籍。そのすべてのシーズンでファイナル出場を経験するという、華々しいキャリアのクライマックスを謳歌した。
  ウォリアーズは、リビングストンが加入した2014-15シーズン以降の8年間で6回ファイナルに到達し、そのうち4回、優勝リングを手に入れている。なかでも彼にとって格別なのは、やはり最初の、2015年の優勝だそうだ。

「どれも嬉しかったが、最初のものは特別に感慨深い。ケガやGリーグとの行き来など、浮き沈みの激しいキャリアを経た自分が、29歳で手にした栄誉だった……。ここまでの軌跡を振り返って、私は今のこの瞬間や、自分に与えられているものへの感謝を学ぶことができた」

 ウォリアーズが、現存する30球団の中でも傑出して継続的な結果を出せている理由について、リビングストンはフランスのメディア『レキップ』紙とのインタビューで、こう分析している。

「やはり、ステフ・カリー(2009年入団)、ドレイモンド・グリーン(2012年入団)、クレイ・トンプソン(2011年入団)ら、主力選手の存在が大きい。そしてもちろんスティーブ・カーHC(2014年入団)とボブ・マイヤーズGM(ゼネラルマネージャー)の尽力もある。彼らは全員、この期間にウォリアーズを牽引していたメンバーだ。
  チームの中核となる選手やヘッドコーチを、これだけ長い間キープし続けることができている球団が、歴史上でもどれだけあるだろうか?1980年代のレイカーズ、1990年代のシカゴ・ブルズくらいだろう。

 バスケに限らず、世界のスポーツシーンを見てもこれは非常に稀なことだ。なぜなら、そうした常勝クラブに居続けることはつまり、常に安定して競争力や結果を生み出すことを求められるプレッシャーに晒されることだからだ」

 今年2月のトレード期間にもケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ→フェニックス・サンズ)ら大物の移籍が球界を賑わせた。ウォリアーズの“スプラッシュ・ブラザーズ”の結束は固いが、常にファイナル出場を期待されるチームにいるというのがプラスなことばかりではなく、結果を求められるプレッシャーを常に背負い続ける精神的な辛さもあるという彼の指摘は興味深い。
  ちなみに15年という長いキャリアの間で、共闘するのが楽しかった選手を聞かれて、リビングストンはシャーロット・ボブキャッツ(現ホーネッツ)時代のスウィングマン、スティーブン・ジャクソンや、ウォリアーズ加入前に在籍していたネッツ時代のケビン・ガーネット、そして、ウォリアーズでの同僚アンドレ・イグダーラやドレイモンド・グリーンらの名前を挙げている。

 では逆に、アウトサイドシュートこそないが、器用な万能プレイヤーと呼ばれた彼が、マッチアップに苦心した相手は?
 「コビー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)だね。R.I.P……。彼は攻撃面においてはまったく弱点がないし、無限大の武器を携えている感じだった。当時の私は若く、動くこともできた。それでも彼と対戦したときは、無人島に一人ぼっちで取り残されたような感覚を味わわされたものだよ(笑)」

文●小川由紀子

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