渡邊雄太、NBA5年目は「間違いなくベストシーズン」。一方で痛感した課題も「自分はチームメイトに依存する」<DUNKSHOOT>
2023年05月01日 16時30分THE DIGEST

NBA5年目を終え、帰国した渡邊雄太が今季を総括。激動のシーズンを振り返った。(C)Getty Images
日本人史上最長となるNBA5年目を終えた渡邊雄太が4月28日、オンラインでの囲み取材にて“激動のシーズン”を総括した。
渡邊は冒頭、「今シーズンも大きなケガをすることなく終えることができて、昨日の夜、日本に帰ってきました」と帰国を報告。続けて、「本当にいろいろあったシーズンだったので、思うこともありますけど」と語り、以下のように今季を振り返った。
「自分にとっては本当にいいシーズンだったと思いますし、過去の4年間に比べてこの5年目が間違いなく自分のベストシーズンだったというふうに思っています。もちろん全然満足していないですし、もっともっと上を目指してやっていきますけど、とりあえずひとつ大きく成長できたと感じられたシーズンだったので、本当に自分にとって中身の濃いいいシーズンだったと思っています」
本人の言葉通り、“いろいろあったシーズン”だった。8月下旬にブルックリン・ネッツと契約を結ぶも、内容はいつ首を切られてもおかしくない無保証契約。
「トレーニングキャンプの時は本当に正直ものすごく大変で、自分があの段階で、この先チームにいれられるかどうかわからなかった。もちろん部屋を借りることもできなかったんで、普通のホテルの狭い部屋で奥さんと2人で約2か月。この先どうなるんだろうっていう不安と闘いながら、9月から10月のトレーニングキャンプが始まるまで過ごしていました」と回想する。
それでもキャンプで結果を残すと、開幕直後から戦力として平均20分前後の出番を確保。ケビン・デュラント、カイリー・アービングらリーグ屈指のスーパースターを支えるロールプレーヤーとして強豪チームの一角を担った。
好調のシーズン前半戦、「意識していたことは、とにかく自分の役割に徹しようということ」だったという。
「今シーズンだけに限らず今までのシーズンもそうだったんですけど、もう自分のできないことはできないで、無理にやろうとするのではなく。当時はケビン・デュラントだったり、カイリー・アービングだったり、何でもできる選手がいてくれたんで、自分は自分のできることを徹底しようって思っていました。
まずはディフェンスをしっかりと全力でやること。あと、どうしても自分たちのオフェンスの場合、相手のディフェンスが絶対にKDだったり、カイリーに寄るので、自分が空いたら思い切って打とうということをずっと意識しながらやっていました」
その結果、2月のオールスター前の時点では3ポイント成功率で驚異の48.1%(52/108)を記録。一時はリーグの公式ランキングで1位に立つなど、大きな存在感を放った。 しかし、その2月にデュラントとアービングが電撃トレードでチームを去ると、それぞれの対価で加入してきた新加入選手たちに押し出される形で、渡邊の出番は激減。好調の前半戦から一転、苦しい後半戦を過ごすこととなった。
「トレードがあったことは仕方がないんで、あんまり“たられば”を言ってもしょうがないんですが、正直『彼らがチームに残っていたらどうなっていたか』『今頃(プレーオフで)まだプレーしてるのかな』っていうのは、思うことはあります。ただトレード後に来た選手ともすぐに打ち解けて、彼らも本当にいい人たちばかりだったので、彼らとバスケするのがすごく楽しかったし、自分のプレータイムがなくなったのは、やっぱりあれだけウイングの選手がやってきて、もうしょうがないっていうふうに思っていました」
「過去4年間は試合に出れなかった時間の方が多かったので、今までと同じことやり続けようっていうふうに、すぐに気持ちを切り替えた」という渡邊だが、一方で胸の内では歯がゆい思いも当然あったという。
「正直モチベーションを保つのはすごく大変だったのは事実です。チームによって色々あると思うんですけど、ネッツでは『STAY READY』ていう試合に出てない人たちのグループがあるんです。練習前に集まったり、練習後ちょっと残ったりして、プレーができるコーチ陣を入れて5対5をやったり、少ないと1対1、2対2だったり、試合にいつでも出られるように準備するグループ。
最初、僕はそこに1回も入ることはなくて、トレードの後からはほぼ毎日その『STAY READY』のグループで、キャム・トーマス、デイロン・シャープ、エドモンド・サムナー、パティ・ミルズら、試合になかなか出られないメンバーと一緒にやってきました。そこは正直、最初自分にとってすごく苦しかったというか、今まで試合に出れていたぶん、今までやってきたことをまた1からやらなきゃいけないのかっていうしんどさはすごくありました」
それでも渡邊は、「頑張った先には、何かしらのご褒美が絶対返ってくる」との思いで、研鑽を続けたと語る。「さっきも言ったように、自分にとってはそれが今まで当たり前だったんで、そういう状況の中で腐らずにやってきた結果が、今シーズンのトレード前の結果だと僕は思っています。だからまた1からやり直しっていうふうに思ったんですけど、また頑張った先には、来シーズンなのかもっとあとなのかわからないんですけど、何かしらのご褒美が絶対自分に返ってくるんだっていうふうに思って、それをモチベーションにしてやるようにはしていました」
結果としてネッツはイースタン・カンファレンスの第6シードでプレーオフに進出したものの、渡邊は4試合のうち初戦の4分43秒しか出場機会がなく、チームも1回戦敗退で今季の戦いを終えた。
渡邊は「次はそこに自分が出て活躍して、チームを勝たせられるような存在になりたい」と決意を新たにするとともに、今後の課題についても言及した。
「今シーズン一番はっきり見えたのが、やっぱり自分はまだまだチームメイトに依存するなと。スーパースター以外はある程度誰でもそうだと思うんですけど、ただやっぱり自分はあまりにもそこに依存しすぎている。
もともと自分はそんなに1対1が上手い選手だとは思っていません。ただ、そのなかでもやっぱり自分でもうちょっとクリエイトできるようにならないと、こういうトレードでチームが変わったときに、今年みたいな感じで試合に出られないっていう状況も出てくると思います」
具体的には、「プレーの幅をもうちょっと広げていかないと」とし、今季躍進した3ポイントシュートとディフェンスのさらなる進化を挙げた。
「キャッチ&シュートは高確率で決められたんですけど、来シーズンは動きながらでもあれだけ決められるかとか、ドリブルからのプルアップでも決められるとか、そういうところが今後の自分の課題になるかと思います」
ディフェンスについては、「もっと強度を上げなきゃいけないなっていうふうには感じています。あからさまに僕を狙ってくる時間帯があって、その時間帯で僕が相手にしなきゃいけないのは相手の得点源であるエースなので、そこを抑えるだけのディフェンス力っていうのが、今後つけていかなきゃいけない部分かなと思っています」
“飛躍”と“研鑽”のシーズンを経て、目指すはリーグ屈指の3&D。日本バスケ界を背負う28歳のNBA6シーズン目が、今から楽しみだ。
構成●ダンクシュート編集部
渡邊は冒頭、「今シーズンも大きなケガをすることなく終えることができて、昨日の夜、日本に帰ってきました」と帰国を報告。続けて、「本当にいろいろあったシーズンだったので、思うこともありますけど」と語り、以下のように今季を振り返った。
「自分にとっては本当にいいシーズンだったと思いますし、過去の4年間に比べてこの5年目が間違いなく自分のベストシーズンだったというふうに思っています。もちろん全然満足していないですし、もっともっと上を目指してやっていきますけど、とりあえずひとつ大きく成長できたと感じられたシーズンだったので、本当に自分にとって中身の濃いいいシーズンだったと思っています」
本人の言葉通り、“いろいろあったシーズン”だった。8月下旬にブルックリン・ネッツと契約を結ぶも、内容はいつ首を切られてもおかしくない無保証契約。
「トレーニングキャンプの時は本当に正直ものすごく大変で、自分があの段階で、この先チームにいれられるかどうかわからなかった。もちろん部屋を借りることもできなかったんで、普通のホテルの狭い部屋で奥さんと2人で約2か月。この先どうなるんだろうっていう不安と闘いながら、9月から10月のトレーニングキャンプが始まるまで過ごしていました」と回想する。
それでもキャンプで結果を残すと、開幕直後から戦力として平均20分前後の出番を確保。ケビン・デュラント、カイリー・アービングらリーグ屈指のスーパースターを支えるロールプレーヤーとして強豪チームの一角を担った。
好調のシーズン前半戦、「意識していたことは、とにかく自分の役割に徹しようということ」だったという。
「今シーズンだけに限らず今までのシーズンもそうだったんですけど、もう自分のできないことはできないで、無理にやろうとするのではなく。当時はケビン・デュラントだったり、カイリー・アービングだったり、何でもできる選手がいてくれたんで、自分は自分のできることを徹底しようって思っていました。
まずはディフェンスをしっかりと全力でやること。あと、どうしても自分たちのオフェンスの場合、相手のディフェンスが絶対にKDだったり、カイリーに寄るので、自分が空いたら思い切って打とうということをずっと意識しながらやっていました」
その結果、2月のオールスター前の時点では3ポイント成功率で驚異の48.1%(52/108)を記録。一時はリーグの公式ランキングで1位に立つなど、大きな存在感を放った。 しかし、その2月にデュラントとアービングが電撃トレードでチームを去ると、それぞれの対価で加入してきた新加入選手たちに押し出される形で、渡邊の出番は激減。好調の前半戦から一転、苦しい後半戦を過ごすこととなった。
「トレードがあったことは仕方がないんで、あんまり“たられば”を言ってもしょうがないんですが、正直『彼らがチームに残っていたらどうなっていたか』『今頃(プレーオフで)まだプレーしてるのかな』っていうのは、思うことはあります。ただトレード後に来た選手ともすぐに打ち解けて、彼らも本当にいい人たちばかりだったので、彼らとバスケするのがすごく楽しかったし、自分のプレータイムがなくなったのは、やっぱりあれだけウイングの選手がやってきて、もうしょうがないっていうふうに思っていました」
「過去4年間は試合に出れなかった時間の方が多かったので、今までと同じことやり続けようっていうふうに、すぐに気持ちを切り替えた」という渡邊だが、一方で胸の内では歯がゆい思いも当然あったという。
「正直モチベーションを保つのはすごく大変だったのは事実です。チームによって色々あると思うんですけど、ネッツでは『STAY READY』ていう試合に出てない人たちのグループがあるんです。練習前に集まったり、練習後ちょっと残ったりして、プレーができるコーチ陣を入れて5対5をやったり、少ないと1対1、2対2だったり、試合にいつでも出られるように準備するグループ。
最初、僕はそこに1回も入ることはなくて、トレードの後からはほぼ毎日その『STAY READY』のグループで、キャム・トーマス、デイロン・シャープ、エドモンド・サムナー、パティ・ミルズら、試合になかなか出られないメンバーと一緒にやってきました。そこは正直、最初自分にとってすごく苦しかったというか、今まで試合に出れていたぶん、今までやってきたことをまた1からやらなきゃいけないのかっていうしんどさはすごくありました」
それでも渡邊は、「頑張った先には、何かしらのご褒美が絶対返ってくる」との思いで、研鑽を続けたと語る。「さっきも言ったように、自分にとってはそれが今まで当たり前だったんで、そういう状況の中で腐らずにやってきた結果が、今シーズンのトレード前の結果だと僕は思っています。だからまた1からやり直しっていうふうに思ったんですけど、また頑張った先には、来シーズンなのかもっとあとなのかわからないんですけど、何かしらのご褒美が絶対自分に返ってくるんだっていうふうに思って、それをモチベーションにしてやるようにはしていました」
結果としてネッツはイースタン・カンファレンスの第6シードでプレーオフに進出したものの、渡邊は4試合のうち初戦の4分43秒しか出場機会がなく、チームも1回戦敗退で今季の戦いを終えた。
渡邊は「次はそこに自分が出て活躍して、チームを勝たせられるような存在になりたい」と決意を新たにするとともに、今後の課題についても言及した。
「今シーズン一番はっきり見えたのが、やっぱり自分はまだまだチームメイトに依存するなと。スーパースター以外はある程度誰でもそうだと思うんですけど、ただやっぱり自分はあまりにもそこに依存しすぎている。
もともと自分はそんなに1対1が上手い選手だとは思っていません。ただ、そのなかでもやっぱり自分でもうちょっとクリエイトできるようにならないと、こういうトレードでチームが変わったときに、今年みたいな感じで試合に出られないっていう状況も出てくると思います」
具体的には、「プレーの幅をもうちょっと広げていかないと」とし、今季躍進した3ポイントシュートとディフェンスのさらなる進化を挙げた。
「キャッチ&シュートは高確率で決められたんですけど、来シーズンは動きながらでもあれだけ決められるかとか、ドリブルからのプルアップでも決められるとか、そういうところが今後の自分の課題になるかと思います」
ディフェンスについては、「もっと強度を上げなきゃいけないなっていうふうには感じています。あからさまに僕を狙ってくる時間帯があって、その時間帯で僕が相手にしなきゃいけないのは相手の得点源であるエースなので、そこを抑えるだけのディフェンス力っていうのが、今後つけていかなきゃいけない部分かなと思っています」
“飛躍”と“研鑽”のシーズンを経て、目指すはリーグ屈指の3&D。日本バスケ界を背負う28歳のNBA6シーズン目が、今から楽しみだ。
構成●ダンクシュート編集部
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