【バスケW杯1次ラウンド展望・前編】アメリカvsギリシャがいきなり実現。セルビア、イタリア、リトアニアが首位通過の本命か<DUNKSHOOT>

【バスケW杯1次ラウンド展望・前編】アメリカvsギリシャがいきなり実現。セルビア、イタリア、リトアニアが首位通過の本命か<DUNKSHOOT>

1次ラウンドでいきなりアメリカとギリシャのマッチアップが実現。前回大会では2次ラウンドで対戦し、アメリカが勝利を収めた。(C)Getty Images

4月29日、この夏開催されるワールドカップの決勝の地、フィリピンのマニラで予選グループの抽選会が行なわれた。

 グループA、Bの試合会場となるマニラ首都圏ケソン市のアラネータ・コロシアムには、現在はそれぞれ自国の協会会長を務める元中国代表のヤオ・ミン(元ヒューストン・ロケッツ)や、スペイン代表のホルヘ・ガルバホサ(元トロント・ラプターズ)など、レジェンドたちが集結。

 その中から、大会アンバサダーを務めるダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス/ドイツ)とルイス・スコラ(元ロケッツほか/アルゼンチン)がステージに上がり、元日本代表の折茂武彦、元フィリピン代表LAテノリオ、インドネシアからはアーティストのラフィ・アマ氏、そしてフィリピン出身の2018年ミスユニバース、カトリオーナ・グレイらとともに抽選を取り行なった。

 フィリピン、インドネシア、日本の3か国が共催する今大会では、フィリピンと日本がそれぞれ地元会場で開催国枠として参戦するのに加え、“ホスト国セレクション”として、自国会場に1か国ずつ、呼びたいチームを指名できるシステムが登場。フィリピンのマニラ会場はアメリカ、インドネシアのジャカルタ会場はカナダ、日本の沖縄会場はスロベニアをチョイスした。
  抽選は、全32チームが最新のFIBAランキングに応じて8つのポットに分けられ(決勝会場となるフィリピンは自動的にポット1)、ヨーロッパからは1グループに最大2チーム、その他の地域は同大陸から1チームのみという地理的な条件を考慮しつつ、グループと対戦順に関わる1~4までのスポットが決められた。

 まずはグループA~Dの顔ぶれと展望を見ていきたい(カッコ内はワールドカップ出場回数)。

■グループA 会場:マニラ(フィリピン)
1 アンゴラ(8回)
2 ドミニカ共和国(3回)
3 フィリピン(6回)
4 イタリア(9回)

 タイプの違ったチームが混在するグループAだが、ドミニカ、フィリピン、イタリアは前回の2019年大会でも同組で戦っている。前回はセルビアが1位で勝ち抜け、イタリア、アンゴラ、フィリピンと続いたが、今回はイタリアが優勢か。
  昨年のユーロバスケットでベスト8入りしたイタリアは、今季ユタ・ジャズでNBAデビューしたシモーネ・フォンテッキオら有望な若手も台頭し、前回大会よりも実力は増している。左ヒザの十字靱帯断絶で今季全休となったダニーロ・ガリナーリ(ボストン・セルティックス)もすでに実戦トレーニングを開始しているとのことで、彼の復帰も強力な戦力アップとなる。出場を熱望しているという昨年のNBAドラ1、パオロ・バンケロ(オーランド・マジック)が参戦するかも注目ポイントだ。

 しかし、前回は全敗で最下位に終わったフィリピンの、地元での熱狂的な応援は侮れない。アジア随一のバスケ国を自負する彼らには、さらに強力な助っ人が加わる。

 母方がフィリピン系で、2018年に同国代表としてデビューしているジョーダン・クラークソン(ジャズ)は、昨夏の予選にも参戦。サウジアラビア戦では23得点、5リバウンド、6アシストの活躍で快勝(84-46)に貢献したほか、ブザーと同時にハーフラインから超ロングショットを決めるなど、会場を興奮の坩堝に陥れた。

 同じくアフリカ大陸のバスケ大国のプライドを提げるアンゴラは、スピードを駆使したハイペースなゲームを得意する。また、前回大会でも1次予選を突破しているドミニカ共和国は侮れないダークホースで、アメリカ予選では前回大会準優勝のアルゼンチンを締め出した。彼らとフィリピンが対戦する初戦の結果が、このグループの順位争いに大きく影響しそうだ。
 ■グループB 会場:マニラ(フィリピン)
1 南スーダン(初)
2 セルビア(4回)
3 中国(9回)
4 プエルトリコ(14回)

 順当にいけば、セルビアの首位勝ち抜けは堅い。

 ヤオの引退後はパンチに欠ける中国だが、アジア予選は12戦中、オーストラリアとの2試合を除き全勝、日本にも2戦2勝している。昨年11月には、選手としても指揮官としても欧州各国で豊富な経験をもつセルビア人HC(ヘッドコーチ)のサシャ・ジョルジェビッチを招聘し、グループリーグ突破を狙っている。

 ワールドカップ常連のプエルトリコは、常に第1ラウンド突破のボーダーラインにいる感じのチームで、この両者によるグループ最終戦は見ものになりそうだ。

 注目は、ルオル・デン(元シカゴ・ブルズほか)が協会会長として、時には指揮官として、文字通りチームを牽引する南スーダン。ワールドカップは初参戦だが、最終予選ではエジプトに20点差をつけて快勝するなど、本戦でも予想を上回る奮闘を見せる可能性もある。ロスターの平均身長が2mを超えるという、彼らの高さは大きな武器だ。
 ■グループC 会場:マニラ(フィリピン)
1 アメリカ(18回/優勝5回)
2 ヨルダン(2回)
3 ギリシャ(8回)
4 ニュージーランド(6回)

 第1ラウンドからアメリカ対ギリシャ戦が拝めるのはありがたい。2006年大会の準決勝、さいたまスーパーアリーナで、ギリシャがレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)擁するチームUSAを101-95で破った試合を記憶している人も多いことだろう。

 このグループはアメリカとギリシャの勝ち抜けでまず間違いなさそうだが、ニュージーランドは前回大会もギリシャとグループリーグを戦い、97-103と惜しいゲームを展開した。1勝同士で彼らが最終戦で激突した場合、スロースターター気味のギリシャが、戦い慣れないオセアニア勢にリズムを狂わされるようなことがあれば、アップセットもあるかもしれない。
 ■グループD 会場:マニラ(フィリピン)
1 エジプト(6回)
2 メキシコ(5回)
3 モンテネグロ(1回)
4 リトアニア(5回)

 大黒柱ドマンタス・サボニス(サクラメント・キングス)のいるリトアニアは、ここ最近の国際大会では目ぼしい成績を残せていないが、実際に試合で見せるゲーム内容の質は高く、首位通過の筆頭候補だ。モンテネグロとは欧州予選でも同組で対戦し、リトアニアが2戦2勝している。

 しかし、旧ユーゴスラビア国であるモンテネグロのバスケットには、セルビアやクロアチアと同様、歴史と文化に裏打ちされた独特の巧さがある。昨年のユーロバスケットでも1次リーグを突破した彼らの経験値は着実に上がっている。

 2014年大会以来の出場となるメキシコは、昨年のアメリカップのグループリーグでNBA勢が不在のアメリカを破り、最終的に5位と奮戦した。そしてBリーグ、京都ハンナリーズのロイ・ラナHCが率いるエジプトは、アフリカ予選で42得点のハイパフォーマンスを披露したパワーフォワードのアミル・アブデラヒムに加え、2016年のNBAドラフトでセルティックスから指名を受けたスモールフォワードのアブドル・ネイダーも参戦する可能性がある。2位争いが面白くなりそうだ。(後編に続く)

文●小川由紀子

【PHOTO】NBA最強の選手は誰だ?識者8人が選んだ21世紀の「ベストプレーヤートップ10」を厳選ショットで紹介!

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?