2004年に“ボストンの奇跡”を成し遂げたMLB戦士がセルティックスにエール。劇的勝利の第6戦前に「今日俺たちを勝たせるなよ」<DUNKSHOOT>
2023年05月28日 20時50分THE DIGEST

MLBで唯一0勝3敗から逆転した04年レッドソックスの一員のミラー氏(左)が、同じボストンのセルティックスにエールを送った。(C)Getty Images
現地時間5月27日に行なわれたイースタン・カンファレンス・ファイナル第6戦、ボストン・セルティックスは試合時間残り3.0秒にジミー・バトラーにフリースロー3本を決められ、102-103と逆転されていた。
2勝3敗と後がないセルティックスにとって、この試合を落とせばプレーオフ敗退。昨季NBAファイナルでゴールデンステイト・ウォリアーズに2勝4敗で敗れ、悔しい思いを味わったチームは、ファイナルに到達する前にシーズンを終える危機にさらされていた。
迎えた最後のポゼッションで、セルティックスはマーカス・スマートが3ポイントを放つもミス。だが、スローインからゴール下に走りこんでいたデリック・ホワイトがオフェンシブ・リバウンドから値千金のティップショットを押し込み、劇的勝利。シリーズを最終第7戦に持ち込んでみせた。
「ボールが僕のところへ落ちてきて、ショットを決めたということ」。試合後、そう謙遜したホワイトだったが、チームメイトのジェイレン・ブラウンが「デリック・ホワイト、まるで電光石火だった。どこからともなくやってきて、俺たちを救ってくれた。もう信じられないプレーだったよ」と語った通り、セルティックスを窮地から救う珠玉の、そして歴史的なプレーになったことは間違いない。
ホワイトも「すごく嬉しかった。シーズンが終わってしまう窮地にあったからね。僕らは(負けて)家には帰りたくなかった」と喜びを口にしていた。
NBAのプレーオフ史上、4戦先勝の7ゲームシリーズで0勝3敗に陥ったチームはこれまで150回あったが、逆転の4連勝でシリーズ突破を果たした例は皆無。3連勝で第7戦まで持ち込んだチームもわずか3つだけというなか、セルティックスが史上4チーム目となった。
ロサンゼルス・レイカーズと並んでNBA史上最多タイとなる17回の優勝回数を誇るセルティックスは、これまでプレーオフの第7戦で27勝9敗。現在は4連勝中で、昨年のカンファレンス・セミファイナル(対ミルウォーキー・バックス)とカンファレンス・ファイナル(対マイアミ・ヒート)、今年のカンファレンス・セミファイナル(対フィラデルフィア・76ers)ですべて勝利を飾っているだけに、29日にホームのTDガーデンで開催される第7戦も最高のムードで戦えそうだ。 ちなみにMLB(メジャーリーグ)では、0勝3敗から奇跡の4連勝でシリーズを制したチームが存在する。その達成チームは奇しくも、セルティックスと同じボストンに本拠を置くレッドソックスだ。2004年のアメリカンリーグ・チャンピオンシップのシリーズで、ボストン・レッドソックスは0勝3敗からニューヨーク・ヤンキース相手に4連勝して、見事にワールドシリーズ進出を果たしたのである(その後、86年ぶりの優勝も達成)。
当時レッドソックスの一員だったケビン・ミラーは、運命の第4戦を迎える前に、地元メディア『The Boston Globe』の記者に対して「今日俺たちを勝たせるなよ」(Don't let us win today)という有名なフレーズを発していた。
そして今回、セルティックスが0勝3敗から2連勝を飾って迎えたカンファレンス決勝第6戦前にも、ミラーが当時の名フレーズをSNSで発し、同じボストンの姉妹チームを鼓舞していた。
するとこの試合前のシュートアラウンドでブラウンは、「コーチたちがそのことをロッカールームで話したんだ。そこで『可能だ』『このチームならやれるぞ』と言ってくれた。それで俺たちも信じるようになったんだ」と話していた。
「俺たちは信じている。このシリーズでは俺たちの方がいいチームなんだとね。これは俺たちが次のレベルへ達するために課せられた宿命なんだ。歴史は俺たち側についている。やり返さなきゃいけない」
敵地での第6戦はタフなゲームとなったものの、セルティックスはなんとか勝利してファイナル進出へ首の皮一枚つなげることに成功した。29日の第7戦では、大観衆がTDガーデンを埋め尽くし、割れんばかりの大歓声で選手たちをサポートしてくれることだろう。
“記録は破られるためにある”という言葉があるように、どんな記録もいつか誰かが塗り替える日が訪れる。セルティックスが0勝3敗からNBA史上初の大逆転劇を実現することができるか、ぜひともその行方を見届けていただきたい。
文●秋山裕之(フリーライター)
2勝3敗と後がないセルティックスにとって、この試合を落とせばプレーオフ敗退。昨季NBAファイナルでゴールデンステイト・ウォリアーズに2勝4敗で敗れ、悔しい思いを味わったチームは、ファイナルに到達する前にシーズンを終える危機にさらされていた。
迎えた最後のポゼッションで、セルティックスはマーカス・スマートが3ポイントを放つもミス。だが、スローインからゴール下に走りこんでいたデリック・ホワイトがオフェンシブ・リバウンドから値千金のティップショットを押し込み、劇的勝利。シリーズを最終第7戦に持ち込んでみせた。
「ボールが僕のところへ落ちてきて、ショットを決めたということ」。試合後、そう謙遜したホワイトだったが、チームメイトのジェイレン・ブラウンが「デリック・ホワイト、まるで電光石火だった。どこからともなくやってきて、俺たちを救ってくれた。もう信じられないプレーだったよ」と語った通り、セルティックスを窮地から救う珠玉の、そして歴史的なプレーになったことは間違いない。
ホワイトも「すごく嬉しかった。シーズンが終わってしまう窮地にあったからね。僕らは(負けて)家には帰りたくなかった」と喜びを口にしていた。
NBAのプレーオフ史上、4戦先勝の7ゲームシリーズで0勝3敗に陥ったチームはこれまで150回あったが、逆転の4連勝でシリーズ突破を果たした例は皆無。3連勝で第7戦まで持ち込んだチームもわずか3つだけというなか、セルティックスが史上4チーム目となった。
ロサンゼルス・レイカーズと並んでNBA史上最多タイとなる17回の優勝回数を誇るセルティックスは、これまでプレーオフの第7戦で27勝9敗。現在は4連勝中で、昨年のカンファレンス・セミファイナル(対ミルウォーキー・バックス)とカンファレンス・ファイナル(対マイアミ・ヒート)、今年のカンファレンス・セミファイナル(対フィラデルフィア・76ers)ですべて勝利を飾っているだけに、29日にホームのTDガーデンで開催される第7戦も最高のムードで戦えそうだ。 ちなみにMLB(メジャーリーグ)では、0勝3敗から奇跡の4連勝でシリーズを制したチームが存在する。その達成チームは奇しくも、セルティックスと同じボストンに本拠を置くレッドソックスだ。2004年のアメリカンリーグ・チャンピオンシップのシリーズで、ボストン・レッドソックスは0勝3敗からニューヨーク・ヤンキース相手に4連勝して、見事にワールドシリーズ進出を果たしたのである(その後、86年ぶりの優勝も達成)。
当時レッドソックスの一員だったケビン・ミラーは、運命の第4戦を迎える前に、地元メディア『The Boston Globe』の記者に対して「今日俺たちを勝たせるなよ」(Don't let us win today)という有名なフレーズを発していた。
そして今回、セルティックスが0勝3敗から2連勝を飾って迎えたカンファレンス決勝第6戦前にも、ミラーが当時の名フレーズをSNSで発し、同じボストンの姉妹チームを鼓舞していた。
するとこの試合前のシュートアラウンドでブラウンは、「コーチたちがそのことをロッカールームで話したんだ。そこで『可能だ』『このチームならやれるぞ』と言ってくれた。それで俺たちも信じるようになったんだ」と話していた。
「俺たちは信じている。このシリーズでは俺たちの方がいいチームなんだとね。これは俺たちが次のレベルへ達するために課せられた宿命なんだ。歴史は俺たち側についている。やり返さなきゃいけない」
敵地での第6戦はタフなゲームとなったものの、セルティックスはなんとか勝利してファイナル進出へ首の皮一枚つなげることに成功した。29日の第7戦では、大観衆がTDガーデンを埋め尽くし、割れんばかりの大歓声で選手たちをサポートしてくれることだろう。
“記録は破られるためにある”という言葉があるように、どんな記録もいつか誰かが塗り替える日が訪れる。セルティックスが0勝3敗からNBA史上初の大逆転劇を実現することができるか、ぜひともその行方を見届けていただきたい。
文●秋山裕之(フリーライター)
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