名牝系の血筋継ぐナミュールが8度目の挑戦で悲願の初V! “代打騎乗”で大仕事をやってのけた藤岡康太の手綱さばきにも拍手!【マイルCS】

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AIざっくり要約

  • 名牝系のナミュールが念願の初GI勝利を8度目の挑戦で成し遂げた。
  • 藤岡騎手の代打騎乗の手腕で勝利を決めたが、1、2番人気は大敗した。
  • ナミュールは名牝系の血を受け継ぎ末脚で先頭グループに並び優勝、GI初制覇を飾った。

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名牝系の血筋継ぐナミュールが8度目の挑戦で悲願の初V! “代打騎乗”で大仕事をやってのけた藤岡康太の手綱さばきにも拍手!【マイルCS】

代打騎乗の藤岡騎手の手綱さばきが光ったナミュールが8度目の挑戦でGⅠを初めて制した。写真:産経新聞社

11月19日、秋のマイル王決定戦と位置づけられるマイルチャンピオンシップ(GⅠ、京都・芝1600m)が行なわれ、単勝5番人気のナミュール(牝4歳/栗東・高野友和厩舎)が豪快な差し切りで優勝。8度目の挑戦で念願のGⅠタイトルを手にした。

 2着には中団から伸びたソウルラッシュ(牡5歳/栗東・池江泰寿厩舎)が入り、3着も後方から追い込んだ7番人気のジャスティンカフェ(牡5歳/栗東・安田翔伍厩舎)が入着した。

 一方、1番人気に推されたシュネルマイスター(牡5歳/美浦・手塚貴久厩舎)は伸びを欠いて7着に、昨年の本レース覇者である2番人気のセリフォス(牡4歳/栗東・中内田充正厩舎)は直線で失速して8着に敗退。1、2番人気が揃って大敗したため、3連単の払戻金額は17万6490円という波乱になった。
  レース発走前、全国の競馬ファンに衝撃が走った。現役騎手として世界最高峰と言われるライアン・ムーア騎手が第2レースで落馬負傷。以後の騎乗をキャンセルとなったからだ。当然、ナミュールへの騎乗も不可能となり、陣営は代打探しを余儀なくされた。

 当日は京都のほか、東京、福島で開催されていたため、騎手は3場に分散していたので、選択肢は限られた。そのなかで白羽の矢が立ったのが藤岡康太騎手だった。

 直近10年はコンスタントに50~60勝を記録し、今年も前週までに55勝を挙げてリーディングで13位に名を連ねていた藤岡騎手。その度胸ある騎乗には定評がある実力者だ。
 
 ただ今回は乗り替わりに関しては、いささか分が悪かった。なんせ元の騎乗予定ジョッキーが世界のトップ・オブ・トップに数えられるムーア騎手である。ナミュールの単勝オッズは9倍台で推移していたのだが、藤岡騎手への乗り替わりが発表されると徐々に単勝人気が右肩下がりとなり、最終的には17.3倍まで人気を下げていた。

 他馬に目を向けると、人気上位にはNHKマイルカップ(GⅠ)の勝ち馬で、昨年の本レースと安田記念(GⅠ)で2着に入った実績を持つシュネルマイスター、ディフェンディングチャンピオンのセリフォス。3番人気は晩成の血を開花させつつあるソウルラッシュが続いた。

 しかも、シュネルマイスターにはGⅠ3連勝中のクリストフ・ルメール騎手が、セリフォスにはリバティアイランドで牝馬三冠を成し遂げ、9月のスプリンターズステークス(GⅠ)にも勝利している川田将雅騎手が騎乗。ソウルラッシュには、”マジックマン”ことジョアン・モレイラ騎手が手綱を取る強力な顔ぶれが揃っていた。 前日の午前まで降った雨の影響で「稍重」スタートとなったこの日の京都競馬場だったが、晴天に恵まれて第9レースからは「良」に回復。やや渋みは残って、いわゆる「時計がかかる馬場」のもとでの開催となった。

 ゲートが開くとシュネルマイスターがアオって出遅れ、最後方に置かれる。セリフォスは3番手を追走し、ソウルラッシュは中団の9番手付近につけ、ナミュールはシュネルマイスターの目前、14番手あたりでレースを進めた。

 1000mの通過ラップは58秒2と、雨の影響がまだ残る。時計がかかる馬場状態を考慮すると、ペースはやや速い。そうした流れのなか、第3コーナーからの坂の下りを利用しながら後方から進んでいた馬たちも前との差を詰めながら馬群は直線へ向く。

 各馬が横に広がって激しい追い比べが展開されるなか、インを突いてまずソウルラッシュが先頭に立つが、そこへ7番人気の伏兵ジャスティンカフェが迫る。この2頭で決まるかと思われた刹那、外から桁違いの脚色で猛然と襲い掛かったのが紅一点のナミュールだった。一完歩ごとに差を詰めると、インで粘るソウルラッシュをクビ差交わしてゴール。念願のビッグタイトルを手にしたのだった。

 ちなみに、レース当日での乗り替わりでGⅠを勝ったケースは今回が初めて(1994年のグレード制導入後)。一方、人気上位の2頭だったシュネルマイスターとセリフォスだが、両頭とも末脚の伸びを欠いて上位進出はならなかった。
  ナミュールの父は、ペルシアンナイト、モズカッチャン、ディアドラ、ブラストワンピースなどのGⅠホースを出しているハービンジャー。母サンブルエミューズ(父ダイワメジャー)は、昨年のアルテミスステークス(GⅢ)で、のちに三冠牝馬に輝くリバティアイランドを負かして優勝したラヴェル(牝3歳/栗東・矢作芳人厩舎)も輩出。さらにナミュールの曾祖母は1997年の桜花賞馬キョウエイマーチという名牝系の血統を受け継いでいる。

 彼女はオークス3着、秋華賞2着と善戦はするものの、なかなかGⅠには手が届かなかった。末脚の切れ味には定評があったが、追い込みというレース展開に左右されやすい脚質でもあって、歯がゆい競馬が続いていた。

 しかし、今秋はモレイラ騎手が乗った始動戦の富士ステークス(GⅡ)で、昨年のチューリップ賞(GⅡ)以来1年7か月ぶりの勝利を挙げてひと皮剥けた印象を残すと、その勢いを駆って今回の大仕事を成し遂げた。 ナミュールを管理する高野友和調教師は、「ゴールの瞬間は本当に嬉しくて、涙が出ました。2歳のGIから1番人気に推され続けていたので、なんとか勲章を、という気持ちでいたので、プレッシャーもありました」と語り、喜びもひとしおの様子を見せた。

 また、急遽の指名で大仕事を成し遂げた藤岡康太騎手は、ジョーカプチーノで勝った09年NHKマイルカップ以来、14年ぶりの嬉しいGⅠ制覇となった。同騎手は、「これだけの馬ですからナミュールのレースは見ていましたし、高野先生と打ち合わせをして、前走に乗っていたモレイラ騎手からも馬の特徴を聞いていたのでプレシャーはありましたが、いいイメージを持って乗れました」と振り返った。

 続けて、「道中の手応えはすごく良くて、あとはコース取りを間違わなければ(勝てる)という気持ちでした。本当に強かったです」と馬を称賛するとともに、騎乗を依頼してくれた関係者へ感謝の念を述べていた。
  2着のソウルラッシュと3着のジャスティンカフェは、ともにジョッキーが「一瞬は勝てるかと思った」と言うように、力を出し切っての結果。今後はGⅠの舞台での活躍が見込めるだろう。

 シュネルマイスターに関しては、以前からの課題だった出遅れ癖が響いた感がある。ただ、同じような位置取りだったナミュールに突き放されたのは事実。外見からは判断しづらい部分にウィークポイントがあったのかもしれない。

 安田記念を2着としたあと、約半年の休養に入り、本レースにはぶっつけで臨んできた前年の覇者セリフォスの背に乗った川田騎手は「力みが目立つ競馬になった」とコメントしているように、道中も鞍上で抑えながらの追走となった。その影響もあってか、直線ではいつもの粘りが見られずじまい。仮に次走で海外の香港マイル(GⅠ)へ参戦するならば、ひと叩きされての巻き返しが期待できるのではないか。

 プレビュー記事で筆者が推したダノンザキッド(牡5歳/栗東・安田隆行厩舎)だが、勝ち馬とは0秒3差の5着に終わった。直線半ば、進路を見つけてからは素晴らしい伸びを見せていただけに、最終コーナーから直線への捌きに、ややスムーズさを欠いたのが痛かった。こちらもシュネルマイスター同様、これからも狙うべき存在であるとの思いは変わらない。

取材・文●三好達彦

【動画】当日乗り替わりでのGⅠ勝利は史上初!藤岡康太が大仕事を果たしたマイルCS
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