2020年NBAドラフトの注目株。フランス期待のコンボガード、テオ・マレドンは第2のトニー・パーカーになれるか

2020年NBAドラフトの注目株。フランス期待のコンボガード、テオ・マレドンは第2のトニー・パーカーになれるか

視野の広さや恵まれたサイズ、ウイングスパンなど将来性抜群のマレドン。今年のドラフト上位指名候補の1人だ。(C)Getty Images

世界中からトッププレーヤーが集まるNBAは、誰もが認める世界最高峰の舞台だ。もちろん、ドラフトにもアメリカの大学出身者のみならず、各国から若き精鋭たちがエントリーする。2020年6月25日にブルックリンのバークレイズ・センターでその名を呼ばれるであろう、ヨーロッパで活躍する3人のヤングプレーヤーを、全3回に渡って紹介する。

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 第3回の最後に紹介するのはフランス出身の18歳、テオ・マレドン。オープンな味方を瞬時に見つける視野の広さと切れのあるパスワーク、鋭いドライブや205cmと身長(193cm)を上回るウイングスパンを生かした守備など、将来性にあふれたコンボガードだ。

 両親ともに元バスケットボール選手、叔父は指導者、姉はアメリカのサザンアーカンソー大でプレーする現役選手というバスケ一家に生まれたマレドンは、フランス北部の町ルーアンの地元クラブで3歳からプレーを始めた。
  フランスでは各競技の協会主導の下、それぞれの地域で将来性のある青少年を集めて「ポール」と呼ばれる養成所で一貫したプログラムに基づいた強化を行なう育成システムが確立している。地元クラブで目立っていたマレドンにも招待が届いたが、母親が反対したため14歳まで地元でプレーを続け、その後フランスが誇る国立エリート・アスリート養成所、INSEPに入所する道を選択した。

 INSEPのバスケ部門は、これまでトニー・パーカー(元サンアントニオ・スパーズほか)やボリス・ディーオウ(元サンアントニオ・スパーズほか)、エバン・フォーニエ(オーランド・マジック)ら、多くのスター選手を輩出してきた名門だ。そのINSEPが作成したビデオの中に、あと1か月で14歳になろうというマレドンが4日間のトライアルを受けた際のドキュメンタリー映像がある。

 母親に連れられて来たときの彼は、字幕がなければ聞き取れないほど小さな声で話す、マッチ棒のようにか細い少年だった。しかしコート上では、瞬発力やアジリティのテストなどで他の選手とは別クラスのキレを見せ、ミニゲームでは鮮やかな3ポイントを決めるなど、輝きを放っていた。
  その彼が、わずか3年後にはフランスで最多のタイトル獲得数を誇るプロクラブ、アスベルでスターティングガードを務め、ユーロカップ(ユーロリーグの1つ下のカテゴリー)に出場し、国内リーグとカップ戦のダブル優勝に貢献したことを思うと、ポテンシャルに恵まれただけでなく、いかに強い意志と目標をもって取り組んできたかがわかる。

 INSEPの生徒たちで形成されるチーム、CFBBは対外試合の場として3部リーグに参戦することが通例で、通常はU18クラスの選手を送り込むのだが、マレドンは14歳だった入所初年度から3試合に出場。15歳になった翌シーズンにはスターターに昇格した。入団も他の選手より1年早い「飛び級」だったが、卒業も2年繰り上げ、17年夏にはINSEPを巣立ち、アスベルに入団した。

 元来の性格と、早くから年長者に混ざってプレーしてきたことで、彼には年齢以上の落ち着きが備わっている。以前は思い通りのプレーができないと苛立つ様子もあったと当時のコーチは話しているが、今の彼には相手からプレッシャーをかけられても動じることなく、自分のプレーを解析する冷静さが養われてきた。
  昨季のジープ・エリート(フランスの国内リーグ、旧ProA)では、ディフェンディングチャンピオンのル・マンとの対戦で、指揮官から司令塔役を任された。すると彼は、21分のプレータイムでキャリアハイの20得点をマーク。10本のフリースローをすべて成功させたほか、4アシスト、2スティールの活躍で、80−76の勝利に導いた。

「シーズンオフの間、より責任あるポジションを任されても大丈夫なようにしっかり準備してきた。司令塔の役割は好きだ」

 試合後にそう語ったマレドンは、12月には歴代最年少でオールスターに選ばれ、このシーズンのベストヤングプレーヤーにも選出された。

 そして今季は、欧州最高峰リーグであるユーロリーグでデビュー。平均16.1分のプレータイムを獲得し、6.7点、2.7アシストをマーク。第9節のアナドール・エフェス戦では、10得点、7アシストを記録している。
  そんな彼を間近で見守るのは、INSEPの先輩であり、2014年からアスベルのオーナーを務めるトニー・パーカーだ。ティーンエイジャーの頃から頭角を現わし、ポジションも同じポイントガードであることから、自身の後継者と称されることの多いマレドンについてパーカーは、「選手はそれぞれ自分の道を歩み、自分自身の歴史を作る。そもそも比較というのは、ジャーナリストたちのためにあるものだ」と、釘を刺す。

 NBAドラフトにおけるフランス人選手の歴史では、17年にニューヨーク・ニックスから8位指名を受けたフランク・ニリキナが最高位だが、パーカーは「テオは、ニリキナが彼と同じ歳だった頃よりも優れていると感じる」と話し、「ドラフト15位以内には食い込むのではないか」と期待を寄せている。
  フランス代表では、同じ2001年生まれのキリアン・ヘイズとともに、17年のU16欧州選手権で金メダルを獲得。18年のU17世界選手権ではキャプテンを務め、準優勝に導いた。さらに昨年のFIBAワールドカップ予選では、17歳にしてフル代表に招集されるなど、フランスの次代を担う存在として期待を集めている。

 昨年10月に右肩を負傷して約1か月間戦列を離れたこともあり、今季は国内リーグで平均5.9点、2.5アシストといまひとつリズムに乗れていない。とりわけフィールドゴール成功率は37.7% 、3ポイント成功率は27.0%と、シューティングに関してはさらに磨きをかける必要がある。それでも難しい体勢からのシュートを沈めるなど時折見せる天性のバランス感覚はピカイチ。抜群のタレントと可能性を秘めたフランスの星が、6月のドラフトでどんな評価を受けるのか注目だ。

文●小川由紀子
 

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