世界での傑出度は男子アメリカ代表以上。女子バスケ界の絶対女王「チームUSA」に流れる勝者のメンタリティ

世界での傑出度は男子アメリカ代表以上。女子バスケ界の絶対女王「チームUSA」に流れる勝者のメンタリティ

女子アメリカ代表は五輪切符を手にした状態で臨んだ最終予選も3戦全勝。東京五輪でも金メダルの大本命だ。(C)Getty Images

オリンピックで女子バスケットボールが正式種目となったのは1976年大会から。最初の2大会はソビエト連邦が金メダルを獲得したが、ロサンゼルスで開催された1984年大会でアメリカ代表「チームUSA」が初優勝。その後は旧ソ連の連合チームが優勝した1992年大会をはさみ、2016年のリオ大会までアメリカが6連覇。オリンピックで目下48連勝中と、圧倒的な強さを誇っている。

 そして2018年のワールドカップで頂点に立った彼女たちは、今年の東京五輪にも、現世界チャンピオンとして登場する。今回の五輪から予選システムが変更となり、すでに出場を決めていたアメリカと開催国である日本も最終予選に参戦。アメリカ代表は2月6〜9日にセルビアのベオグラードで行なわれた大会で、セルビア、モザンビーク、ナイジェリアと対戦した。
  アリーナを埋めた地元セルビアファンの大声援の中で迎えた初戦、完全アウェーにもかかわらずセルビアを88−69で破ると、続くモザンビーク戦は124−49とダブルスコア以上の点差で圧勝。両者ともにすでに五輪行きを決めていた最後のナイジェリア戦は前半に最大16点差をつけられたが、後半だけで50点を積み上げ、76−71と逆転して全勝を守った。

 各大陸予選を勝ち抜いた強豪国と対戦するハイレベルのこの最終予選も、アメリカにとってはチーム熟成の場。指揮を執ったシェリル・リーブHCも、「予選に参加することでチームが集合する機会が増えるのは望ましい。選手たちは普段いろいろなところに散らばってプレーしているので、ベストのチームを集結させるという点では難しさもあるが、東京で金メダルに挑むまでの過程にこのようなチャンスがあることで、チームを熟成していける」と大会に参加する意義を話す。

 アメリカ代表にとって今予選は、本戦出場はおろか、何かが懸かったものではない。にもかかわらず、どの試合もモチベーションをみなぎらせてプレーしたチームUSAの戦いぶりに、会場に足を運んだバスケファンは圧倒された。
  モザンビーク戦でゲームハイの24得点、9リバウンドの活躍を見せたフォワードのネカ・オグウミケは試合後、「相手より自分たちが優れたチームなどとは誰一人として考えていなかった。どのチームも、ベストのゲームをしようと挑んでくる。モザンビークも決してあきらめることなく渾身の力でぶつかってきた。まだまだ自分たちは成長できるという手応えとともに試合を終えることができた」と謙虚に話したが、その眼差しは真剣そのものだった。

 常に追われる立場にある彼女たちは、どの試合も「勝って当然」という目で迎えられる。その中でプレーすることには難しさもあるはずだが、ガードのスカイラー・ディギンス・スミスは、「私たちが試合に向かう時には、一人ひとりが最高の試合をすることを自分に課している。どの試合も真剣勝負なんだ、ということが私たちのメンタリティには刷り込まれている。どのチームも目指しているものは同じ。だからどんな相手であっても、自分たちと同等だと思ってプレーしている」と言い切った。
  高精度の3ポイントシュートを武器とする彼女は、昨シーズンは出産のためWNBAでのシーズンを1年間休養している。「WNBAは、少ないスポットを大勢が奪い合う場所。その世界に入ることも難しいけれど、若い選手もどんどん出てくる状況の中、プレーし続けることはもっと難しい。おそらく世界で一番タフな環境だと思う」

 その中で日々戦い続けることで、競争心も精神力も鍛えられている。「1年間離れているあいだ、ゲームが恋しかった。またチームの一員となってプレーできることが最高に幸せ」。

 現在五輪6連覇中のチームUSA女子チームが東京大会で目標に掲げているのは、金メダル以外にない。世界大会で数々の金メダルを獲得し、「霊長類最強」と呼ばれたレスリングの吉田沙保里さんは、「ナンバー1になるのも大変でしたが、ナンバー1であり続けるのはもっと大変でした」と語っているが、リーブHCも、まさに同じことを口にしている。

「頂点まで登っていく過程は、そこにとどまる過程よりもずっと簡単。(頂点にい続けるのは)ただとどまるだけでなく、進化を続けることが求められる」。そのために必要なのがベストプレーヤーを集めることであるのは間違いないが、リーブHCは「加えて重要なのは、どのようなタイプの選手を集めるかということ」だと強調した。

「チームUSAが魅力的なチームになるようなメンバーであること。常に勝利を追求することが根底にあるのは大前提として、そこに伴う犠牲をいとわない精神をもっていること。数々の大会をこなすなど、頂点に到達する道程には大変なことが山ほどある。でも、それを喜びとして取り組める選手たちだけを我々は集める。そのために、選手選考のプロセスは非常に慎重に行なっている」
  チームのキャラクターを表す例として、指揮官は16点ビハインドの状態から逆転勝利を飾ったナイジェリアとの最終戦を挙げた。

「実際、チームUSAが負けるところを観たくない人なんていないでしょう? そんな険しい道の中で、一緒になって勝利を追求していこうと思える、それが(我々が求めている)キャラクター。とどのつまりは、どれだけバスケットボールに賭ける思いがあるか、ということ」

 前述のディギンズ・スミスのように、女子選手の場合は出産など、男子選手にはない状況も考慮する必要がある。セルビア代表の主将イェレナ・ブルックスは、最終戦後の会見には赤ちゃんを抱いて登壇した。それでもチームUSAの女子チームは、昨年のW杯で辞退者が続出した男子チームのような状態になることはないという。

 カレッジ時代に2000得点、500ブロックを達成している身長203cmのダンカー、ブリットニー・グライナーは、「以前は自分の人生で国を代表できるチャンスはなかったけれど、父が軍人だったから、自分も将来はそれを目指すつもりだった。でも、バスケットボールと巡り会い、バスケットボールが私の人生になった。そして今は、これが国を代表できる手段。だから自分にとって、代表に呼ばれるのは光栄なことでしかない」と話した。
 「どの試合も真剣勝負」、「試合では常に自分のベストを出し切る」、「それがチームUSAのメンタリティ」――。どの選手に話を聞いても、この3つを意味するセンテンスが必ずコメントの中に含まれていた。チームUSAの確固たるメンタリティが、チーム内でしっかりと共有されているのは見事というほかない。それはリーブHCの「慎重にセレクションを行ない、キャラクター重視で選ぶ」という発言を裏付けている。

 世界女王が世界女王たる所以を、チームUSAはこの予選大会で存分に発揮した。彼女たちは東京での金メダル獲得に向けて、一直線に突き進んでいる。

文●小川由紀子
 

関連記事(外部サイト)