「俺は誤解されていた」正当な評価を得られなかった“選ばれし即興パフォーマー”ジェイソン・ウィリアムズ

「俺は誤解されていた」正当な評価を得られなかった“選ばれし即興パフォーマー”ジェイソン・ウィリアムズ

1年目から派手なパスやドリブルを次々と繰り出し人気を博したウィリアムズ。99年にはジャパンゲームで来日し魅せるプレーで、日本のファンを魅了した。(C)Getty Images

NBA史上最高のポイントガード(PG)と言えば、誰を思い浮かべるだろう。オスカー・ロバートソン、マジック・ジョンソン、アイザイア・トーマス、ジョン・ストックトン、ジェイソン・キッド、スティーブ・ナッシュ、クリス・ポール、ステフィン・カリー……、その候補は多岐にわたる。その括りを「最もクリエイティブな〜」に変えた場合、新たに浮上するのがジェイソン・ウィリアムズだ。

 ヴィンス・カーター(現アトランタ・ホークス)、ダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス)、ポール・ピアース(元ボストン・セルティックスほか)らのちのスーパースターが揃った“当たり年”の1998年ドラフトでサクラメント・キングスに1巡目7位で入団したウィリアムズ。プロ12年間でオールスター選出歴はなく、通算成績は1万得点、5000アシストにも満たない。それでも、彼が記録以上に“記憶に残る選手”だった所以は、ストリートバスケを彷彿とさせるトリッキーなプレーだった。

 ウエストバージニア州の人口1500人未満の田舎町ベルで生まれたウィリアムズは、デュポン高校でのちにNFLのスターとなるランディ・モスとチームメイトだったため、いくつかの大学からオファーはあったものの、決して有名選手ではなかった。それだけに、7位という高順位指名には本人も「そんなに高くなるとは思わなかった」と振り返ったほどだが、ニューヨークにあるストリートバスケの聖地ラッカーパークで腕を磨いたかのようなボールハンドリングとテクニックはすぐさまNBAで注目を集めた。
  華麗なノールックはもちろん、ビハインド・ザ・バックや股抜きもお手の物。ルーキーイヤーの1998−99シーズンには、守備の名手ゲイリー・ペイトンを切れ味鋭いクロスオーバーで置き去りにしてみせた。

 2000年のオールスターウィークエンドに行なわれたルーキーチャレンジ(現ライジングスターズ・チャレンジ)で見せた、ビハインド・ザ・バックと見せかけて右肘にボールを当て、リーフ・ラフレンツにパスした伝説のエルボーパスは今でも語り草だ。白人でありながら黒人カルチャーのストリートスタイルだったことからウィリアムズには“ホワイト・チョコレート”というニックネームがつけられた。

『The Athletic』のジェームズ・L・エドワーズ三世記者は、ウィリアムズを「私のお気に入りのプレーヤー」と称し、彼がいかに“異色の存在”だったかを訴えている。

「ウィリアムズはマジシャンだった。彼ほどクリエイティブな選手はまずいない。彼は“選ばれし即興パフォーマー”で、普通ならばベンチに下げられるような失敗を恐れなかった。誰もが彼と一緒にプレーしたがっているように感じた。ウィリアムズはキャリアを通じて多くの選手に恥をかかせ、それを同時にチームメイトのプレーレベルを上げた。彼は最も型破りな昔ながらのポイントガードだ」
 “一緒にプレーしたい”という点では、2006年にマイアミ・ヒートでリーグ優勝の喜びを分かち合った怪物センターのシャキール・オニールがこのような言葉を残している。

「プレーしていて常に楽しかった選手は“ホワイト・チョコレート”だった。俺はただ手を挙げるだけで、ボールはいつもそこに来た。偉大な選手だが、正当な評価を受けていなかった」

 2020年のバスケットボール殿堂入りが決まったケビン・ガーネットは「間違いなくあの世代で最高のポイントガードの1人だ」と評価。2002−03シーズンから2年半、メンフィス・グリズリーズでコンビを組んだシューターのマイク・ミラーも、「今まで見た中で最高のボールハンドラー」と最大限の賛辞を送った。
  派手なプレーばかりが目を引いたが、ウィリアムズ本人はあくまでそれはベストの選択をした結果だったという。引退から9年が経過した2019年のインタビューで、「自分が最も過小評価されていると思う部分は?」という問いに対し、こう答えている。

「俺は誤解されていた。俺が欲しかったのは勝利だけ。ビハインド・ザ・バック・パスを3本決めようが、0本だろうが、5得点だろうが、30得点だろうが、俺は勝ちたかっただけだ」

 ウィリアムズが殿堂入り選手や同時代に活躍したオールスターPGたちと対等に語られることはないのかもしれない。それでも、華麗なプレーで子どもたちを魅了し、バスケットへの関心を高めた功績はもっと評価されてもいいだろう。

構成●ダンクシュート編集部

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