「八村選手の第一印象は……」ウィザーズの専属ビデオグラファーが語る、八村の素顔や仕事の舞台裏とは?

「八村選手の第一印象は……」ウィザーズの専属ビデオグラファーが語る、八村の素顔や仕事の舞台裏とは?

ウィザーズの専属ビデオグラファーであるウールフォーク氏が、仕事内容や八村の素顔について語ってくれた。(C)Getty Images

4月21日(日本時間22日)、ワシントン・ウィザーズの日本語版公式サイトに、チーム専属ビデオグラファーを務めるアリエル・ウールフォーク氏のインタビューが掲載された。

「私は大学の最終学年時にプロダクションの仕事を始めました。最初はスポーツニュースのアンカーになりたいと思っていたのですが、地元テレビ局のインターンシップを終えてみて、これではないと気づいたんです。続いてワシントン・ウィザーズのインターンシッププログラムに応募し、採用されました」

 インタビュアーにそう話したウールフォーク氏は、続けて「研修中にチームの立場から、スポーツメディアのあらゆる面を見ることができました。出演者、プロデューサー、エディター、そしてビデオグラファー、いろいろな方がいます。ここで自分のなかにシネマトグラフィーとストーリーテリングへの情熱を発見したのです」と語り、キャリアを築いてきたという。
  ウィザーズの選手たちを撮影するにあたり、「コート外での様子を撮影する際に、最も重視し、大切にしていることは?」と聞かれると、次のように答えていた。

「私はコート上よりも、コート外の選手たちを撮る方が好きなんです。試合は楽しいですし、そこで生まれる感情や情熱を捉えるのも大好きですが、コート外では彼らの本当の姿を見ることができます。彼らの世界に深く関わり、バスケットボール選手である以前に人間である彼らの姿をファンに伝えられるというのは、なかなか珍しい特権だと感じています。彼らには家族がいて、異なる趣味を持ち、楽しい個性を持っています。私は物語性のあるドキュメンタリースタイルの作品作りが好きで、NBAのソーシャルコンテンツは今そうした方向を重視しています。ファンはクールなダンクや3ポイントシュート以上のものを見たがっているのです」

 NBAにはカメラ撮影や取材を極端に嫌うプレーヤーもいるなかで、SNSを通じて各チームが選手の様々な表情や動き、言葉を発信している。「なかなか素を見せてくれない選手がいた場合に、緊張を和らげ、関係を築く方法は?」という質問にも、ウールフォーク氏は丁寧に答えていた。
 「ほとんどの選手たちは、初めてプロダクションチームに会った時は礼儀正しいものの、どこか大人しいです。極稀に、自然と心を開いてカメラを受け入れてくれる機会が訪れることもあります。幸いなことに、私は選手たちのいるところにどこへでもついていくことができるとても有利な立場にいます。シーズン中はすべての練習、イベント、試合に同行します。ですから選手たちは毎日私と会うことになり、だんだん顔馴染みとして打ち解けてくれるようになるのです。気が進まないことを無理強いしたりは決してしません。彼らの本当の姿を捉えて、できる限り格好良く見せることが私の願いなのですから。選手たちが居心地悪く感じたなら、それは映像に現われてしまいます。そんなことは望みません。チームとずっと一緒にいることは、選手たちと良い関係を築けるだけでなく、コーチたちやフロントオフィス、さらにはメディカルチームとも親しくなることにつながります」

 通常、NBAのレギュラーシーズンは約半年かけて82試合をこなし、そのうち半分にあたる41試合をアウェーで戦うことになる。それだけに、チームで働くスタッフもハードなスケジュールをこなしているのは間違いない。

 それでも、チームに密着して魅力的なコンテンツを発信し続けるビデオグラファーの話は面白く、舞台裏を知ることができるのは貴重だ。
  そしてウィザーズといえば、日本のファンにとっては昨年のドラフト1巡目9位で指名された、八村塁とのエピソードが気になるところ。ウールフォーク氏は八村との最初の仕事についてこう話している。

「八村選手との初対面はドラフトの日。第一印象は、礼儀正しく物静かな人だなと思いました。その日は丸一日密着させてもらい、一緒に電車に乗って歓迎セレモニーの行なわれるキャピタル・ワン・アリーナに戻ってきました。電車に乗っている間、彼の口数は多くありませんでしたが、私に日本のキャンディを勧めてくれて、とても親切な人だと思いました。選手が打ち解けてくれるまでにはしばらく時間がかかります。特に、会った初日から撮影を始める時はそうですね。八村選手の場合はNBA入りする前からメディアから注目されていたので、カメラに動揺する様子はありませんでした」
  もっとも、ウィザーズ入りしてから約10か月が経過した今、八村に対する印象は変わったという。

「初めて会った時と今とで、八村選手の印象は変わっています。気分によっては静かなこともありますが、普段はとても面白い人ですよ。チームメイトやコーチ陣とジョークを言い合うのが好きなんです。コート外ではとても人懐っこく、私に好きなテレビ番組を勧めてくれました。自分が出演した回の『テラスハウス』を見てほしいそうです(笑)」

 NBA入り後も、八村の屈託のない笑顔や人懐っこさは変わりがないようだ。移動中の飛行機のなかでも観ているという『テラスハウス』をお勧めしているということは、ウールフォーク氏が八村と打ち解けていることを端的に表していると言えるだろう。

 また、「現役も含めて、自分が観たなかで最も記憶に残っているウィザーズの選手は?」という質問には、2014−15シーズンのみ在籍したレジェンド、ポール・ピアースを挙げていた。
 「飛び抜けて印象深いのはポール・ピアース選手ですね。私がもっと若かった頃、父と一緒に彼のプレーを観ていたのを覚えています。なんて激しい選手なんだろうと思いました。彼はとてもアグレッシブで、試合中ずっと相手と睨み合っていました。彼がウィザーズに来た年は、チームとプロダクション部門にとって驚きに満ちた1年になりました。私もプレーオフまで本当に楽しく撮影できて、個人的にあんな体験ができるなんて思いもしませんでした。ポール・ピアースという人は本当に楽しい人物なんです。チームと選手たちに献身的で、カメラに写ることが大好きでした。私たちはあらゆる状況で撮影し、彼も喜んでそれに応じて、ありのままの姿を見せてくれました。ウィザーズを去った後も、アリーナでプレーする時はいつも私を見つけてくれて近況を報告し合いました」

 ウィザーズ在籍時、ピアースは全盛期こそ過ぎていたものの、勝負所ではビッグプレーを連発。残した個人成績以上の大きなインパクトを放っていた。

 チーム専属ビデオグラファーという仕事に対するプライドの高さ、そしてどれだけ選手たちと真剣に向き合い、熱を入れて撮影しているか。普段はあまり表舞台に立たないウールフォーク氏のインタビューから、その仕事への情熱を垣間見ることができたのではないだろうか。

文●秋山裕之(フリーライター)

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