【名作シューズ列伝】ピッペンとマリンの「AIR FLIGHT LITE MID」は自己主張の少なさが売り?デフォルトBOXは細部にこだわりが

人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり!

 1992年、ドリームチームのシグネチャーモデル第3弾、本編8箱目は、マイケル・ジョーダンとの最強コンビで一躍トップスターに駆け上がったスコッティ・ピッペンと、ゴールデンステイト・ウォリアーズのスコアラー、クリス・マリンが着用したモデル「AIR FLIGHT LITE MID」のお話です。

 ピッペンは、12人兄弟の末っ子として決して裕福ではない家庭に育ちました。高校時代は175cm・70kgと小柄で目立った実績もなかったことから、当然NCAAの強豪校からのオファーはなく、無名校のセントル・アーカンソー大にマネージャーとして入学するという平均以下の選手でした。

 しかし、ここから彼の人生は大きく変わります。奨学金を受ける選手に欠員ができ、満額ではなかったもののピッペンが奨学金をもらうことに。それによって食生活が劇的に改善され、身長と体重、そしてスキルが急成長。周囲の働きもあり、シカゴ・ブルズのGMジェリー・クラウスの目に止まるまでの選手になります。
  87年ドラフトでは1巡目5位という高順位で指名を受け、晴れてNBAキャリアをスタートしました。ゴンザガ大出身の八村選手が1巡目9位ですから、ブルズがいかにピッペンを高く評価していたかがわかります。

 新人時代はベンチ起用でしたが、2年目にスタメンの座をゲット。同地区の強豪“バッドボーイズ”ピストンズのラフプレーにトラウマレベルになるまで苦しめられたものの、相棒ジョーダンの叱咤激励などもあり見事克服。91年に初のNBAチャンピオンに輝き、名実ともにスターの仲間入りを果たしました。

 一方のマリンは、10代の頃から名の知れた選手で、セントジョーンズ大時代の84年にはジョーダンやパトリック・ユーイングらとともにロサンゼルス五輪に出場し、金メダルを獲得。NBAでは86年のドラフト1巡目7位でウォリアーズに指名され、1年目からチームに不可欠な存在に。3年目にアルコール依存症で一時的にコートを離れるも、その後、ミッチ・リッチモンド、ティム・ハーダウェイの“ランTMC”と呼ばれるハイスコアリングトリオで一世を風靡しました。

 オールスターには89年から5年連続で選ばれるなど、ウォリアーズ不動のエースだったマリンですが、日本での知名度は低く「ハリソン・フォードに似た、海軍みたいなプレーヤーは誰?」なんて言われる始末でした。
  そんな折、ピッペンとマリンがアメリカ代表に選出されたというニュースが飛び込んできました。2人のキャリアを振り返れば、ドリームチーム入りは当然のように思えますが、当時はジョーダンやマジック・ジョンソン、ラリー・バードの“オマケ的”な受け止められ方をしていたことを思い出します。

 NIKEのバッシュにはクイックネスとスピードに長けたガード選手向けの「Flightシリーズ」と、重い体重を支えゴール下でのプレー重視するセンター/フォワード選手向けのForce系という2種類があります。

 Force系はMAX AIRの開発など製作に力を入れていましたが、Flight系はすでに看板商品の「AIR JORDAN」が存在していたため、若干の手抜きのようなものを感じました。



「AIR FLIGHT LITE MID」は、ネーミング上はミッドカットですが、ほぼローカット形をしており、軽量化と動きに特化したデザインになっています。それゆえ無駄な装飾はほとんどありません。他のオリンピックモデルと比べてみても自己主張は少なく、白と白銀のコンビのために遠目には白に紺色のスウッシュがあるだけに見えてしまいます。2人のモデルのため、市販品に背番号などが入ることはありませんでした。
  BOXは当然(?)、NIKEデフォルトの“オレンジBOX”。予想通りすぎて清々しさを覚えます。


 
 しかし、注目はネーミング部分が箱に直印刷であること。シューズ名が白抜きなので、このBOX専用の版があり、このわずかな気配りにメーカーの良心を感じさせます。蓋を開けると現われる斜めのストライプ模様。今見てもワクワクする斬新さとメッセージ性が込められており、BOXデザイナーのセンスの良さに感心してしまいます。



 そして「NIKE SPORT SHOES ARE MANUFACTURED TO THE EXACT SPECIFICATIONS OF CHAMPION ATHLETES THROUGHOUT THE WORLD.」(ナイキのシューズは、世界中のチャンピオンアスリート仕様に合わせて製造しています)の文字が。圧倒的な強さで金メダルを獲得したことで、NIKEのトップアスリートを活用したトップダウン形式の戦略(現在のSNSを活用したインフルエンサーコミュニケーションに近い手法の走り)の完成形を見せられた気がしました。

文●西塚克之

【著者プロフィール】
西塚“DUKA”克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。

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