「俺たちの方が優れたチームだと信じていた」ペイサーズの司令塔マーク・ジャクソンがブルズとの激闘を振り返る

「俺たちの方が優れたチームだと信じていた」ペイサーズの司令塔マーク・ジャクソンがブルズとの激闘を振り返る

98年のブルズを最終戦まで追い詰めたペイサーズ。その主軸を担ったジャクソン(右)が当時の激闘を振り返った。(C)Getty Images

4月19日(日本時間20日、日付は以下同)から配信が開始されたシカゴ・ブルズのドキュメンタリーシリーズ『ザ・ラストダンス』の最新話(第5、6話)が5月3日に公開された。ブルズが最後に優勝した1997−98シーズンに『ESPN』が密着して制作された珠玉のドキュメンタリーは、世界中で大きな話題となっている。

 1990年代に2度の3連覇を達成したブルズは、6度のNBAファイナルのうち、初優勝を飾った91年のみ4勝1敗で、その後の5回はすべて4勝2敗と、シリーズ最終戦となる第7戦を迎えるまでに決着をつけてきた。

 そしてマイケル・ジョーダンは史上最多となる6度のファイナルMVPを手にしているが、そのジョーダンがキャリアを通じてプレーオフの第7戦を戦ったのはわずか3回。90年のイースタン・カンファレンス決勝(対デトロイト・ピストンズ)、92年のカンファレンス準決勝(対ニューヨーク・ニックス)、98年のカンファレンス決勝(対インディアナ・ペイサーズ)で、90年は敗れたもののあとの2回は勝利を収めている。
  そのうちの2回、ジョーダン率いるブルズとの第7戦を経験しているのがマーク・ジャクソンだ。ニックスとペイサーズを含む7球団、計17シーズンのキャリアでNBA歴代4位の通算1万334アシストを記録したポイントガードは、身体能力には恵まれていなかったものの、持ち前のプレーメイクとリーダーシップ、巧みなポストプレーや勝負どころで繰り出す3ポイントなどで数多くの勝利を演出してきた。

 好プレー後に見せるシミー(両肩を小刻みに揺らす動き)やクラッチショットを決めたあとの“ビッグクロス”(両腕を十字架にして自らのプレーを誇らしげに見せるポーズ/もともとはラリー・ジョンソンがニックス時代に披露したビッグLが原型)など、個性的なジェスチャーでもファンを盛り上げ、“アクション・ジャクソン”と言われたキャラクターの持ち主でもあった。

 そのジャクソンの所属するペイサーズが、ブルズの『ザ・ラストダンス』において、王者を土俵際まで追い詰めたチームとなった。現在、『NBA on ABC』のリードアナリストを務めるジャクソンは、5月3日に『Sports Illustrated』へ掲載された記事の中で、「彼ら(ブルズ)について言うことは何もない。だが俺たちの方が優れたバスケットボールチームだと信じていた」と語り、こう続けた。
 「俺たちは相手が提示してきた問題に対処する解決策を持ち合わせていた。彼らのことを冷遇したり、軽視しているんじゃない。俺たちはマイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペン、デニス・ロッドマンだけでなく、チームとしての偉大さ、フィル・ジャクソン(ヘッドコーチ)に対しても、究極のリスペクトをしていた。だがあのシリーズは、俺たちの時がやって来たんだと思っていたんだ。俺たちのベストプレーヤー、レジー・ミラーは殿堂入りしたスーパースターであり、マイケルに対しても極めていい勝負をしていた。俺はレジーがマイケルよりも上と言ってるんじゃない。だがマイケルを行き詰まらせることができると信じていたし、ほかの選手たちについてもコントロールできると信じていた」

 このシーズンのペイサーズは、80年代にリーグの顔であったレジェンド、ラリー・バードがヘッドコーチに就任。ミラー、ジャクソンに加えてリック・スミッツ、デイル・デイビス、クリス・マリンがスターターを形成し、ベンチにもジェイレン・ローズやトラビス・ベスト、デリック・マッキー、アントニオ・デイビスといった実力者が控えていた。
  レギュラーシーズンではブルズ(62勝20敗)に次ぐ58勝24敗をあげ、ミラーとスミッツの2人をオールスターに送り込んだ。ミラーはジャクソンに全幅の信頼を置いており、「マークは俺が欲しいタイミングで、欲しいところに完璧なパスをくれる」と語るほど、絶妙なコンビネーションを誇っていた。

 シリーズはブルズがホームで先に2勝をあげるが、ペイサーズもホームでお返し。第3戦は終盤にブルズの追い上げを振り切って2点差の辛勝。第4戦は残り2.9秒で1点ビハインドの場面から、ミラーが鮮やかな逆転3ポイントを沈めてまたもや2点差の劇的勝利を収めた。

 2勝2敗のタイで迎えた第5戦。ペイサーズは19点差の大敗を喫して王手をかけられるも、再びホームに戻った第6戦でスミッツが25得点、デイル・デイビスが19得点、8リバウンド、3ブロック、ジャクソンも13得点をマークして、8得点に終わったミラーの穴を埋め、運命の最終戦へと希望をつないだ。
  第7戦は互いの意地がぶつかり合うロースコアの展開となった。ペイサーズはチーム全体でフィールドゴール成功率48.2%(27/56)をマーク。対するブルズは38.2%(29/76)に終わるも、オフェンシブ・リバウンド(22−4)で圧倒するなどペイントエリアを制圧し、88−83でペイサーズを下して3年連続の頂上決戦へと駒を進めた。

 ジャクソンは92年のニックス時代に続き、またしてもジョーダン率いるブルズにシリーズ突破を阻まれた。ブルズはペイサーズにおけるジャクソンの重要性を十分に理解しており、リーグ最高級のディフェンダーであるピッペンあるいはジョーダンをぶつけ、高さと長さ、身体能力でシャットダウンした。
  そんな厳しい状況下で、ジャクソンはシリーズ平均10.0点、4.1リバウンド、5.9アシスト、1.57スティールにフィールドゴール成功率42.9%(27/63)、3ポイント成功率47.4%(9/19)をマークしたのだから、王者相手に奮闘したと言っていいだろう。ジャクソンはこう振り返る。

「俺たちはシカゴをリスペクトしていた。だが恐れたりはしていなかった。彼らに対して、俺たちは成功を収めていたんだ。72勝したシーズン(1995−96)、ブルズはシーズン全体で10敗しかしなかったが、俺たちは2度も倒した。だから俺たちは、あのチームを倒せるんだということに、ものすごい自信を持っていたんだ」

 90年代に4度のカンファレンス決勝進出、2000年にはフランチャイズ史上初のファイナル進出を果たしたペイサーズ。なかでも98年のプレーオフで王者ブルズと最終戦まで競り合った決戦は、歴史に名を残す珠玉の名シリーズとして、今後も語り継がれていくことだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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