「パトリックがチームを傷つけた…」ニックスの用心棒オークリーが、ブルズとの93年カンファレンス決勝の敗因を分析

「パトリックがチームを傷つけた…」ニックスの用心棒オークリーが、ブルズとの93年カンファレンス決勝の敗因を分析

オークリーは最初の2試合で平均15リバウンドを奪い、チームは2連勝。しかしそこから4連敗を喫し3年連続でブルズの前に散った。(C)Getty Images

マイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズのラストシーズンを追った『ザ・ラストダンス』。5月3日(日本時間4日、日付は以下同)に公開された第6話では、ブルズが1990年代前期に3連覇をかけて臨んだ93年のプレーオフが描かれていた。

 最終的にブルズはファイナルに勝ち進み、チャールズ・バークレー擁するフェニックス・サンズを6戦の末に下し、3連覇を達成したのだが、イースタン・カンファレンス決勝で苦戦を強いられたことも見逃せない。

 この年、イーストの頂上決戦を争ったのはニューヨーク・ニックス。前年のプレーオフではカンファレンス準決勝で第7戦までもつれる大混戦となるなか、ジョーダンが42得点、スコッティ・ピッペンがトリプルダブル(17得点、11リバウンド、11アシスト)、ホーレス・グラントが14得点、4スティール、4ブロックと活躍し、ニックスに引導を渡していた。

 あと一歩のところで敗れたニックスは、打倒ブルズを果たすべく、シーズン終了後にロースターにメスを入れた。先発シューティングガード(SG)のジェラルド・ウィルキンズと司令塔マーク・ジャクソンを放出し、4度のオールスター出場歴を誇る点取り屋のローランド・ブラックマン、ベテランガードのドック・リバース(現クリッパーズHC)、大柄で身体能力が高いチャールズ・スミスという3人を獲得する。
  パトリック・ユーイング、チャールズ・オークリー、アンソニー・メイソンといった屈強なフロントコート陣を擁するニックスは、シックスマンとしてブルズとのシリーズで活躍したジョン・スタークスを先発SGに昇格。ここに新加入のリバースを加えた豪華布陣で92−93シーズンに挑み、名将パット・ライリーHC(ヘッドコーチ)の下、チームはイーストベストの60勝22敗を記録する。

 プレーオフに入ってもファーストラウンドでインディアナ・ペイサーズを3勝1敗、カンファレンス準決勝ではシャーロット・ホーネッツを4勝1敗で下し、ブルズとのリマッチを迎えた。

 ホームのマディソンスクエア・ガーデンで行なわれた最初の2戦は、ユーイングとスタークスの活躍でニックスが連勝。第2戦残り約1分、ニックス3点リードの場面ではスタークスがグラント、ジョーダン越しに左腕1本の強烈なダンク(通称ザ・ダンク)をお見舞いし、ニックスがシリーズの主導権を握ったかに思われた。

 だがホームに戻ったブルズは、第3戦でピッペンが29得点、第4戦ではジョーダンが54得点と大爆発し、2勝2敗のタイに戻した。

 勝利したチームがファイナル進出へ王手をかける重要な第5戦は、終盤までもつれる展開となるなか、1点を追う終盤にスミスがリング下でボールを手にする。ところが、ピッペンやグラントなど4本連続でブロックを浴びてしまい勝負あり。続く第6戦もニックスは敗れ、再びブルズの前に散った。
  4連続でブロックを食らい、不名誉な形で記憶に残る選手となってしまったスミスだが、こぼれ球を何度ももぎ取り、フェイクでタイミングをずらしてショットを放つ抵抗を見せていた。だが残念なことに、彼をA級戦犯としたメディアやファンがいたことは否定できない。

 しかし、チームの用心棒としてペイントエリアで睨みを利かせていたオークリーは違った。5月3日に『The New York Post』へ掲載された記事の中で、オークリーはスミスを責めるのではなく、ユーイングを敗因に挙げた。

「パトリックは試合終盤にダブルチームされた。彼はダブルチームされた状況でも、フェイダウェイショットを放とうとした。それがあのチームを傷つけたんだ」。

ブルズとのシリーズについて「俺たちは互いに嫌っていた。ものすごくフィジカルだったね。誰かが血を流すまで、ファウルコールがされないくらいだった」と話していたユーイングは、シリーズ平均25.8点、11.2リバウンド、2.5アシスト、1.7スティール。1.8ブロックにフィールドゴール53.0%(61/115)と、大車輪の活躍を見せていた。だがオークリーはこう振り返る。

「俺たちはショットを決められず、相手の思うつぼだった。ブルズはゾーンディフェンスを敷き、壁を作り上げた。ブルズの奴らはパトリックがダブルチームされてもパスしないと分かっていたんだろう」
  第5戦終盤。スタークスからボールを受けたユーイングは、ペリメーター右側から左側へとドリブルするも、ダブルチームされた途端にボールを失いそうになり、辛うじてスミスへボールをつないでいた。ブルズ側からすれば、作戦勝ちと言ってもいいプレーだった。

 オークリーはジョーダンとユーイングが持つそれぞれのスターパワーの違いを指摘しつつ、ライリーHCについても「彼はあの状況でまったくと言っていいほどアジャストしなかった。ハーフタイムでも、俺たちは同じことをしただけ。彼らはフルコートでトラップを仕掛けてきたが、俺たちはまったくそんなことをしなかったし、相手にそう考えさせることもなかった」と非難。そしてこのシリーズをこう総括した。

「俺たちは彼らを倒すべきだったが、できなかった。ブルズは多くのファウルコールをもらっていた。マイケルに言ったんだ。『リーグのベストプレーヤーというのは、必要な時に笛を吹いてもらえるのさ』とね。だがマイケルはショットをしっかりと決め切っていたよ」

 オークリーはデビューから3年間ブルズでジョーダンとプレーし、ニックスへ移籍した。ライバルチームの一員として、オークリーはジョーダンがベストプレーヤーへと上りつめる瞬間を見てきたからこそ、歯がゆい思いをしていたのかもしれない。

文●秋山裕之(フリーライター)

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