「たいていは“何か”があってからその重要さに気づく」“鉄人”ルイス・スコラが長くプレーするために心がけていること

「たいていは“何か”があってからその重要さに気づく」“鉄人”ルイス・スコラが長くプレーするために心がけていること

NBAでは最初の7シーズン中6シーズンで全試合に出場。40歳となった今も欧州でプレーを続けており、鉄人ぶりは健在だ。(C)Getty Images

世界一の競技人口を誇るバスケットボール。その最高峰リーグであるNBAには世界中から優れたプレーヤーが集結し、特に2000年代以降は外国籍選手の数も飛躍的に増加した。では、NBAで活躍した欧州プレーヤーたちはその後、どのようなキャリアをたどっているのか。第一線を退いた彼らの今をシリーズで紹介しよう。

 4月30日、かつてヒューストン・ロケッツなどで活躍したルイス・スコラは40歳の誕生日を迎えた。故郷アルゼンチンのブエノスアイレスで15歳でプロデビューして以来25年間、エネルギッシュなパワーフォワードは、今でも第一線で活躍を続けている。

 スコラは、中国のヤオ・ミンが1位指名された2002年のNBAドラフトで、サンアントニオ・スパーズから全体56位で指名を受けた。しかし契約の問題もあり、所属していたスペインのタウ・セラミカでその後もプレーを続けると、スパーズはスコラの交渉権をロケッツに譲渡。そして2007−08シーズン、欧州ベストプレーヤーの看板を引っさげ、27歳で晴れてNBAデビューを飾ることとなった。
  初年度から平均10.3点と実力を発揮してオールルーキー1stチームに選ばれると、2年目からは先発に定着。ドラフト同期のヤオとともに主軸を担い、ロケッツに所属した5シーズンすべてで平均2桁以上の得点をマークし、プレーオフにも2度出場している。

 2012年からはフェニックス・サンズ、インディアナ・ペイサーズ、トロント・ラプターズと拠点を変え、2017年2月にブルックリン・ネッツから解雇されたあとは中国へ。2017−18シーズンは山西ドラゴンズ、翌シーズンは上海シャークスでプレーした。

 そして2019年9月、2年間を過ごした中国で開催されたワールドカップ(W杯)で、スコラはアルゼンチン代表の大黒柱として奮闘。チームトップの平均17.9点、8.1リバウンドの活躍で準優勝に導くと、キャリアの原点とも言える欧州への復帰を果たした。現在は2014〜19年にスパーズでアシスタントコーチを務めたエットーレ・メッシーナが率いる、イタリアのオリンピア・ミラノに所属している。
  アルゼンチン代表では、マヌ・ジノビリやファブリシオ・オベルトらと黄金時代を築き、2004年のアテネ五輪では準決勝でアメリカを撃破。続く決勝でもイタリアを破って金メダルを獲得した。この試合でスコラは、チームハイの25得点、11リバウンドのダブルダブルをマークし、同国初となる五輪制覇の立役者となった。

 NBAでは新シーズンを最高のコンディションで迎えるために、夏の国際大会を辞退する選手が少なくないが、スコラは逆に「夏にプレーすることは、最高の調整になる」と、ほぼ休みなく国際トーナメントに参戦してきた。

 39歳で参戦した昨年のW杯でも、大会ベスト5に輝くなどチームの屋台骨と呼ぶにふさわしい活躍を披露したが、数字以上に観る者のハートを熱くしたのは、インサイドで身体を張り、常に先頭を切ってディフェンスに戻るなど、年齢を微塵も感じさせない魂のこもったプレーだった。

 スペインとの決勝は惜しくも敗れたが、試合後に「この大会でのプレーはキャリアでベストだったのではないか?」と聞かれると、彼自身も「そうだと思う」と答えた。メダルの色はゴールドではなかったが、すべてを出し切った充足感のようなものが、その表情からうかがえた。
  ただその一方で、「今日が代表最後の試合か?」という質問に対しては、「そんなことは一度も言っていないよ」と即座に否定した。「先のことはわからない。明日の朝、『もうやめよう』と思って引退することだってあるかもしれない。ただ現時点で私は、『引退する』とはまだ一度も言っていない」。

 盟友のジノビリとアンドレス・ノシオーニは、2016年のリオ五輪を最後にアルゼンチン代表のユニフォームを脱いだが、スコラは東京五輪出場を視野に入れている。W杯のあとヨーロッパに戻ったのも、再びユーロリーグのようなハイレベルの環境に身を置いて、5大会目の五輪出場に備えるためだ。

 昨年のW杯の際も、大会に向けて厳しい特訓を積んだことが話題になったが、自身もかつてプロバスケットボール選手だった父親のマリオは、息子ルイスのトレーニングの模様をこう評する。

「朝の7時からコーチたちと走りに出かけ、そのあともトレーニングが延々と続く。何時間もひたすら同じエクササイズを繰り返すんだ。まるで『ロッキー』のようだよ」
  しかし当の本人は、「何も特別な訓練をしたわけじゃない。キャリアを通じてずっとやってきたことをしたまでさ」と、平然と語っていた。

「それぞれの大会に応じて、違った練習内容、アプローチの仕方をすることはある。年齢も含めて、その時の状況に対応する必要があるからね。だけど根本的な部分はこれまでとまったく変わっていない。ケガをしないよう体調管理に気をつけて、よく眠り、きちんとした食事をとり、しっかりトレーニングをするだけだ」。そして「まぁ39歳ということで、ことさら取り上げられるんだろうけどね(笑)」と自虐気味に語って笑いをとった。

「若い頃は、外出が続いたり、睡眠不足で食生活が乱れたり、トレーニングが不十分だったりしても、それほど影響はない。身体はいつも通りに反応してくれる。しかし年を重ねれば重ねるほど、そういった不摂生が顕著に体調に現われるようになる。そこで大切なのは、日頃から正しい習慣を身につけておくことだ。

 たいていは、ケガをしたり、不調なシーズンがあったりといった“何か”があってからその重要さに気づく。でもそれから始めたのでは遅いんだ。だから、そうなる前に、正しい体調管理を習慣化しておくことがとても大切だ。そうすれば、キャリアは5年、6年、7年と伸ばすことができる。なにも私だけじゃない。ヴィンス・カーター(43歳/NBA現役最高齢)のような選手だってきっと同じことをしているはずだよ」
  13年ぶりに復帰したユーロリーグでは、新型コロナウイルスの影響で中断するまで、28試合中4試合を除く全試合で先発出場。チーム3位の平均9.2点、4.4リバウンドと、衰えを感じさせない数字をマークしている。シーズンが再開されるかは5月24日までに最終決定されることになっているが、ミラノはプレーオフの残り3枠を争う団子状態の中におり、再開後も気が抜けない戦いが続くだろう。

 そして1年延期となった東京五輪が開催される来年の7月、スコラは41歳になっている。

「40歳の選手にとって、1年の重みは大きい。プレーできる可能性は減るだろう。しかしもし可能なら、私は出場する。実現できたら素晴らしいね」

 2006年、日本で開催された世界選手権(現W杯)の準決勝で、アルゼンチンはわずか1点差でスペインに敗れてメダルを逃した。スコラはきっと、可能な限り最高のコンディションを整えて、同じ舞台に舞い戻る気でいるはずだ。

文●小川由紀子

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