トライアングル・オフェンスではジョーダンの得点力がネックに?システムの創始者が語る、ブルズ戦術の舞台裏

トライアングル・オフェンスではジョーダンの得点力がネックに?システムの創始者が語る、ブルズ戦術の舞台裏

ウィンター曰く、トライアングル・オフェンスではジョーダン(中央)よりもピッペン(左)とクーコッチ(右)が中心だったと話す。(C)Getty Images

1990年代に到来した、シカゴ・ブルズの黄金期。2度の3連覇を成し遂げたわけだが、そのカギを握っていたのは、トライアングル・オフェンスとリバウンドだった。

 トライアングル・オフェンスとは、常に3選手で“三角形”を作りながら展開していく攻撃システムのこと。しかし、これを3人のスター選手――後期スリーピートを達成した1995〜98年で言えば、マイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペン、デニス・ロッドマンの“ビッグ3”――を中心に形成される戦術と考えるのは正しくない。

 確かに、この3人は歴代最高のトリオとも言えるだろう。しかし、トライアングル・オフェンスは彼らが主役ではないのだ。

 このシステムは、選手たちが自己判断と互いの連携により、常に三角形の3つの頂点を作るように動き続け、パスを回しながら絶えず状況を変化させていくオフェンス方法だ。“トライアングル”という言葉から、あたかもビッグ3が中心になっているかのように思われることがあるが、実はジョーダンとロッドマンが参加せずにオフェンスが開始されることも多くあった。
  この戦術の生みの親であるテックス・ウィンターによれば、トライアングル・オフェンスはピッペンやトニー・クーコッチのようなタイプの選手にこそ最適とのこと。長身でありながらボールを器用に操り、シュートもパスも一級品。身体能力任せのプレーをせず、広い視野で状況を見渡すことができる。だから、1996−97シーズンのトライアングル・オフェンスは、ピッペンとクーコッチが中心だったとウィンターは話す。

「ジョーダンはスコアラー、ロッドマンはリバウンダー。2人はトライアングルをコントロールするポジションではなく、それぞれ抜群に特化した能力をフルに発揮するマシンとして徹してくれればいい。ジョーダンはトライアングルをコントロールするには得点能力がありすぎた。それが唯一のネックだったのかもしれない(笑)」

 またウィンターは、72勝をあげた1996年、69勝をマークした1997年と、2シーズン連続で8割以上の勝率を残せたのは、ふたつの約束事を守ったことで得られた結果だと評している。“ジョーダンとロッドマンがトライアングルから外れ、オフェンスがセットされて3プレーが終わるまではボールに絡まず、バランスのいいポジションをキープし相手を守りにくくさせたこと”、“ボールを持った選手は3秒以上同じ場所にとどまらず、シュート、パス、ドリブルのいずれかのプレーを開始すること”。このふたつのルールが、好成績へとつながったという。
  そもそもトライアングル・オフェンスは、ジョーダンのように突出したスコアラーにボールが集中し、コートにいる5人のバランスを崩さないために採用されたシステムだ。“ジョーダンが史上最強のフィニッシャーであり、ポイントゲッターである”というのがウィンターの考えの根底にある。そしてこの最強の男をどう生かすかが、ウィンターのコーチとしての醍醐味でもあった。

 また、リバウンドの出来不出来は、ブルズの勝敗を大きく左右する要素だった。強力なビッグセンターを擁していないブルズは、パワーフォワードの選手がリバウンダーの役割を担う必要があった。ホーレス・グラントを失い、ロッドマン加入前だった1994−95シーズン、ジョーダンが現役復帰しても本調子のブルズに戻らなかったのはそのためだ。

 当時ブルズを指揮していたフィル・ジャクソン・ヘッドコーチは、ディフェンスを何よりも重要視していた。選手たちに対し「リバウンドで勝てない試合は苦戦する」と、しつこいまでに口にしていたとロッドマンは回顧する。

「フィルには『失点を少なくするために君はここにいる。相手にタフショットを打たせるディフェンスをするようほかの選手には徹底させるから、君はリムからこぼれたボールをとにかく拾ってくれ』とリクエストを出されたんだ」
  相手がシュートを外したにもかかわらず、ディフェンシブ・リバウンドを奪えずセカンドチャンスで得点されることを、ジャクソンはとにかく嫌っていた。「オフェンシブ・リバウンドでやり込められることは、自分たちが弱いチームであるという何よりも明らかな証拠だ」とも話している。

「トライアングルにしてもリバウンドにしても、自己犠牲の上に成り立っている。コートに5人しか味方のいないこのスポーツにおいて、自分を犠牲にしてまでもチームで得点し、そしてディフェンスするという意識が選手全員になければ、肝心なところでチームは空中分解する。素晴らしい才能を持ちながらも、自己犠牲の上に勝利があるということを知らないままキャリアを終えていく選手がリーグには意外と多い」

 ジャクソンのこの言葉の正当性は、彼が持つ11個のチャンピオンリングが何よりの証拠となっている。“ジョーダン、ピッペン、ロッドマンと、一流の花形選手がいたからブルズは強かった”。そんな一言では片づけることができない、いくつもの重要な要素がブルズ王朝形成の裏にはあったのだ。

文●北舘洋一郎

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