前評判を一蹴し、ブルズの“ラストピース”となったロッドマン。実は気弱で繊細な男の激動の人生【NBAレジェンド列伝・後編】

前評判を一蹴し、ブルズの“ラストピース”となったロッドマン。実は気弱で繊細な男の激動の人生【NBAレジェンド列伝・後編】

かつての仇敵ブルズへの入団時は不安視されたが、コート上では献身的なプレーで3連覇に貢献した。(C)Getty Images

シカゴ・ブルズが最後に優勝した1997−98シーズンの密着ドキュメンタリーシリーズ『ザ・ラストダンス』(全10話)の放映が始まり、マイケル・ジョーダンをはじめとした当時の優勝メンバーが改めて脚光を浴びている。黄金期を支えた輝かしい選手たちの中にあって、とりわけ異彩を放っていたのがデニス・ロッドマンだ。けばけばしく染めた髪、タトゥー、ピアス、暴言、女装、アバンチュール……彼は危険人物であり、セックスシンボルであり、尊敬すべきリバウンダーだった。NBA史上、他に類を見ない異端のヒーローのキャリアを前後編で振り返る。

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 当時、ブルズはホーレス・グラントの退団でパワーフォワードの補強が急務となっていた。それでも、選手やファンから蛇蝎のごとく嫌われていたロッドマンを加えるなどあり得ない考えに思えた。ある記者は「ジェフリー・ダーマー(90年代にアメリカを震撼させた連続殺人犯。犠牲者の遺体を食べたことでも有名)を料理長に迎えるようなものだ」と表現したほどだ。
  それでもフィル・ジャクソンHCは、この猛獣を手なずけられると確信していた。「チームのルールさえ守れるなら、コートの外で何をしてもかまわない」とジャクソンは言い渡し、ロッドマンも「フィルは(チャック)デイリーのように、俺を人間として扱ってくれる」と従った。ジョーダンの存在も大きかった。バスケットボール界最高の選手の言葉に耳を傾けない選手なら、誰の言うことも聞けないはずだからだ。

 目論見通り、ロッドマンはブルズの救世主となった。気まぐれな言動や行動は相変わらずでも、ジャクソンが手綱をしっかり握っていたので、チームの規範は乱れなかった。何より、ジョーダンとスコッティ・ピッペンの二大スターが攻撃の大半を担うブルズのプレースタイルに、リバウンドとディフェンスだけに集中するロッドマンはピタリとはまった。この年ブルズは年間72勝という当時のリーグ新記録を樹立。NBAファイナルでもシアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)を下して3年ぶりに王座に返り咲いた。
 ■破天荒そのもののロッドマンは前例のないスーパースターに

 ブルズを最強チームとして甦らせたことで、ロッドマン人気は爆発した。これは時代の違いも要素のひとつだった。80年代には全身をタトゥーで彩り、髪を真っ赤に染めているような選手が全国区の人気を集めるなど考えられないことだった。しかしヒップホップ・カルチャーが市民権を得た90年代半ばには、ロッドマンやアレン・アイバーソンらの異端児も受け入れられるようになっていた。「好きなように生きていても、やる時はやる」というロッドマンのイメージは、既存の価値観から大きくはみ出さないジョーダン以上に、若者の目にはクールに映った。

 その後もコートサイドのカメラマンを蹴飛ばして出場停止になったり、敵地のファンを愚弄して非難されたりといくつもトラブルを引き起こしたが、コート上の活躍は続く。97−98シーズンまで7年連続でリバウンド王。この年にユタ・ジャズを下してブルズが3連覇を達成したのも、カール・マローンに対するロッドマンのディフェンスを抜きにしては考えられなかった。
  だが、3連覇を置き土産にブルズを去ってからは、ロッドマンの輝きは急速に褪せていった。一時的な引退を経てレイカーズで復帰したが、わずか23試合で解雇。その後ダラス・マーベリックスでプレーした時も短期間しかもたなかった。デイリーやジャクソンのような度量の広いコーチでなければ、ロッドマンを適切に扱えなかったのだ。

 かつては熱狂的に受け入れられた彼のパフォーマンスも、この頃には底の浅さが透けて見えるようになっていた。その後も突然北朝鮮を訪問するなど、スキャンダラスな行動がときおり新聞種にはなったが、メディアに取り上げられる機会も減っていった。時代の先端を行っていたはずのロッドマンは、いつの間にか時代に追い越されてしまっていた。

 “破天荒”という言葉が、ロッドマンの人生にはぴったりだった。その生き方は時には眉をひそめられ、時には歓声で迎えられた。彼の素顔を知る者はみな、実は気弱で繊細な男なのだと口を揃える。ただの不良ではなく、そうした内面を秘めていたことが、ロッドマンがジョーダンとまったく違ったベクトルで不世出の選手となれた理由かもしれない。

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2008年8月号掲載原稿に加筆・修正。

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