【名作シューズ列伝】マジックの最後の雄姿を支えたモデルはシュータンの代表ロゴに加え、シューズ名に粋な計らいが

人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり! 

 初代ドリームチームのシグネチャー第6弾、本編11箱目は、マジック・ジョンソンが五輪で着用した「MAGIC OLYMPIC MID」のお話です。

 アービン“マジック”ジョンソンは、バスケットボールに革命をもたらしたプレーヤーとして知られています。206cmとセンター並みのサイズを持ちながら、本職はポイントガード。その長身を生かした視野の広さを武器に、圧巻のスピードで繰り出される変幻自在のパスは、観客や相手チームだけでなく、味方さえも魔法にかけてしまったほどです。

 ミシガン州大2年時にチームをNCAAトーナメント優勝に導き、1979年のドラフト1位でロサンゼルス・レイカーズへ入団したマジック。ちなみに、ドラフト前にレイカーズと1位指名権をかけてコイントスを行なったのがシカゴ・ブルズでした。

 晴れてレイカーズの一員となったマジックですが、デビュー当初はそのトリッキーなパスをチームメイトがキャッチできず、険悪なムードになったこともありました。しかし大黒柱のカリーム・アブドゥル・ジャバーは「マジックが悪いのではなく、自分たちが未熟なのだ」と同僚を説得。猛練習の末に先輩たちがマジックにアジャストし、強豪チームを作り上げたという逸話が残っています。
  マジックはNBA優勝5回、シーズン&ファイナルMVPを3回、アシスト王4回など、キャリアで獲得したアウォードは枚挙に暇がありません。それだけに、91年にHIV感染により突然引退を発表した時は、ショックで言葉になりませんでした。

 当時の日本はテレビでようやくNBAの放送がスタートした時代。動くマジックを生で見られるチャンスがなくなってしまったのです。

 投票用紙に自身の名前が残っていたことで、92年のオールスターゲームに出場したマジックでしたが、もっと彼のプレーを見たいファンは多かったでしょう。

 そんな夢を叶えてくれたのが92年のドリームチームでした。代表には過去のパートで紹介したマイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペン、チャールズ・バークレー、パトリック・ユーイングらが選出。さらに大学時代からマジックのライバルだったラリー・バード(ボストン・セルティックス)もメンバー入りしました。
  結果アメリカは、圧倒的な強さで金メダルを獲得。ドリームチームでの戦いが、マジックの事実上の引退試合となりました(96年に短期間だけレイカーズで復帰)。最後の大舞台で彼の相棒を務めたモデルが「MAGIC OLYMPIC MID(ACCELERATOR MID)」です。

 今でこそ、バッシュと言えばNIKEというイメージが強いと思いますが、当時はCONVERSがbPブランドでした。86年に発売された「WEAPON」はバッシュ史に残る名作として知られ、マジック以外にもバードやチームメイトのケビン・マクヘイル、デトロイト・ピストンズの司令塔で、80年代に後半にマジックとファイナルで2度対戦したアイザイア・トーマスなど、スーパースターがこぞって着用。あのジョーダンもNBA入り前にCONVERSとの契約を希望していたほどブランド力があったのです。

 マジックが大舞台で着用した1足は、CONVERSの伝家の宝刀である「Energy Wave」を搭載。シュータンにはラバー製のアメリカ代表オフィシャルロゴ、くるぶしには代表での背番号「15」、色はUSAカラーに彩られ、オフィシャル感を演出しています。
 

 BOXはひねりなしのCONVERSのデフォルトです。上面には真っ赤なCONVERSロゴ、そして75年に誕生したブランドを代表するアイコン「CHEVRON&STAR」の「CHEVRON」が横に流れるスピード線と一緒に加速するように描かれています。「CHEVRON」は記号で方向「》」を示す意味もあるので、これはブランド全体の行き先も指し示していたのでしょう。

 側面には説明不要の「STAR」。紺色のBOXに白い星、そして赤いブランドロゴ、デフォルトなのにアメリカ代表カラー……。もはや手を加える必要はありませんでした。



 そんななかで、最大の注目はシールで貼られたシューズ名。本来の「ACCELERATOR MID」ではなく、「MAGIC OLYMPIC MID」と表記されているのです。

 ブランドが功労者であるマジックへ最大限の感謝とリスペクトを示したのでしょう。本当に粋です。粋過ぎます。これを見て“エモい”気持ちになった方は、恐らく私と同世代だと思います(笑)。

文●西塚克之

【著者プロフィール】
西塚“DUKA”克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。

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