「バスケットボールが好きで、プレーしたいという気持ちさえあれば…」NBAから欧州へ渡ったグレッグ・モンローの信念

「バスケットボールが好きで、プレーしたいという気持ちさえあれば…」NBAから欧州へ渡ったグレッグ・モンローの信念

今季からドイツのバイエルンでプレーするモンロー。得点とリバウンドでチームトップに立つなど、大黒柱として輝きを放っている。(C)Getty Images

2010年のドラフトで、デトロイト・ピストンズから全体7位指名を受けてNBA入りしたグレッグ・モンロー。入団に際し、“NBAを代表するセンターになる”と将来を嘱望された彼は今季、ドイツのバイエルン・ミュンヘンで戦っている。

 NBAからヨーロッパに渡ったアメリカ人選手の中には、ルールやプレースタイル、環境の違いに慣れるまで時間を要する者も多いが、モンローは開幕間もない第2節、敵地での強豪CSKAモスクワ戦で17得点、10リバウンドのダブルダブル、3ブロックというパワフルなパフォーマンスを披露。新型コロナウイルスの影響でシーズンが中断するまで、ユーロリーグ全28試合に出場し、平均12.9点、6.8リバウンドの成績を残している。

 211cm、120kgの堂々とした体躯を誇るモンローはゴリゴリの古典的なセンターだ。持ち前のパワーでゴール下のポジションを競い、身体を張ってリバウンドを奪い取る。最近のNBAでは、昨季のMVPヤニス・アデトクンボに代表されるような、しなやかな身のこなしでボールハンドリングが巧く、アウトサイドシュートも打てるポイントフォワード的な人材が重宝されるようになっているが、モンローにとってはあくまでもインサイドが主戦場。NBAでプレーした9年間で放った3ポイントシュートはわずか17本、うち決まったのは1本だけだ。
 「できないわけじゃない。でも選手にはそれぞれ、求められるものがある。自分の場合、それはアウトサイドシュートではなかったということだ。バイエルンでも自分が求められる仕事にしっかりフォーカスして、このチームにとってベストな選手になれるよう努めている」

 その言葉通り自身に求められる仕事に精一杯取り組んだ結果、ここまで得点とリバウンドはともにチームベスト、特にリバウンドはユーロリーグ全体でも5位につけている。

 ルーキーイヤーから5シーズン在籍したピストンズでは、初年度にオールルーキー2ndチームに選出され、2年目からは毎年平均15点超えを記録。3シーズン連続で1000得点+600リバウンド以上をマークしたのは、ピストンズでは90年代に活躍したグラント・ヒル以来で、最後のシーズンには15.9点、10.2リバウンドと、平均ダブルダブルの数字をあげた。
  2015年に移籍したミルウォーキー・バックスでは2年目にベンチ要員となったものの、ジェイソン・キッドHCの下、平均22.5分の出場で11.7点、 6.6リバウンドと、シックスマン的な役割を果たした。しかし3年目にフェニックス・サンズにトレードされると、その後はジャーニーマン化。ボストン・セルティックス、トロント・ラプターズ、フィラデルフィア・セブンティシクサーズを転々とし、昨季はラプターズで38試合に出場したにもかかわらず、2月に放出されてチャピオンリングを逃すという苦渋も味わった(皮肉にも同年のプレーオフで古巣のラプターズと対戦し敗退している)。

 シクサーズ退団後はNBAに残る道を探っていたが、キャリア平均13.2点、 8.3リバウンドという数字をもってしても、状況は厳しかった。隠れたパスセンスは評価された一方で、外からのシューティングに難があることに加え、平均0.6本というセンターにしては少なすぎるブロック数も不安視された。

 そんな時、彼の選択肢として浮上したのが欧州移籍だった。
「他の場所を見つけた方が良さそうだということが明らかになってきた時、自分がどうしても行きたかったのがユーロリーグだった」と、ドイツに渡ってからのインタビューで語っている。
  昨今はセカンドキャリアに中国リーグを選ぶ選手も多いが、NBAに次ぐ世界最高峰リーグと言われるユーロリーグでプレーしたい、というのがモンローの意志だった。

「NBAには450人以上の選手がいるけれど、世界にも、さらに450人以上の素晴らしい選手がいる。これまで一度も戦ったことがなかったすごい選手たちがね。期待していた通りのコンペティションだった。楽しんでいるよ」

 新天地での充実ぶりを語るモンローだが、彼の加入は欧州バスケにとっても底上げにつながると歓迎されている。NBAからヨーロッパに渡る選手はガードやフォワードが大多数で、ビッグマンは希少なのだ。

 今後NBAからヨーロッパ行きを考える選手たちには、「オープンマインドになるといいよ、とアドバイスしたい」とモンローは語る。

「たしかに、NBAとは違うことも多い。だけどバスケットボールが好きで、プレーしたい、という気持ちさえあれば、そういったことはどうだってよくなるんだ。バスケットボールができることに変わりはないし、しかもものすごくハイレベルな闘いだ。実際に来てみると、あまり違いは感じないよ」
  ちなみに、バックス時代にチームメイトだったアデトクンボとは、いまだに交流を続けているという。

「彼(アデトクンボ)の練習熱心さと、闘争心は飛び抜けていたよ。どんなにトレーニングがハードだった日でも、シーズンの佳境であっても関係なく、日課の夜のジム通いは欠かさない。父親が亡くなった翌朝でさえ、彼は練習を休まなかった。その時、彼のバスケットボールに賭ける気持ちを思い知った。今の状況を当たり前などとは一切思っていない。だから緊張感も失わないし、いつでも真剣なんだ。彼が飛躍した理由はそこにあると思う」

 今年1月にパリで初開催されたNBAゲームの時も、写真撮影や来賓へのお披露目が目的だった公開練習の間、チームでただ1人、リングに向かって黙々とシュート練習を続けていたのがアデトクンボだった。
 「彼は、俺がこれまでのキャリアで一緒になった中で最高のチームメイトの1人だ。本当に素晴らしい、謙虚な男だよ」

 そう褒めちぎるめちぎるモンロー自身も、謙虚で、仲間のために身体を張る利他的なプレーヤーだ。ピストンズ時代から、チームメイトはバカンスに出かける夏の期間も「いろいろな選手を知るいい機会になるから」と、サマーリーグに積極的に参加していた努力家でもある。

 たとえ舞台がどこであろうと、コート上でプレーする姿を見ていて思わず応援したくなるのは、そんな彼の人間性がパフォーマンスに現われているからなのだろう。

文●小川由紀子

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