「どんな相手でも倒せると感じた」ティム・ハーダウェイが、“ランTMC”時代を回想

「どんな相手でも倒せると感じた」ティム・ハーダウェイが、“ランTMC”時代を回想

ハーダウェイは得意の“キラークロスオーバー”でディフェンダーを翻弄。キャリア3年目の92年には平均23.4点、10.0アシストの活躍を披露した。(C)Getty Images

アキーム・オラジュワンの“ドリームシェイク”、カリーム・アブドゥル・ジャバーの“スカイフック”、トニー・パーカーの“ティアドロップ”、マヌ・ジノビリの“ユーロステップ”――。NBAの長い歴史の中では、語り継がれる“シグネチャームーブ”がある。ドリブルを左右に切り返し、ディフェンスを左右に揺さぶり抜き去るドリブルを究極の必殺技に磨き上げたティム・ハーダウェイの“キラークロスオーバー”もそのひとつだ。

 1966年にイリノイ州シカゴで生まれたハーダウェイは、テキサス州大エルパソ校から89年のドラフト1巡目14位指名でゴールデンステイト・ウォリアーズに入団。1年目から先発の座を射止めた司令塔は、2年目の90−91シーズンに平均22.9点、4.0リバウンド、9.7アシスト、2.61スティールを記録してオールスターに初出場した。

 93年10月に左ヒザ前十字靱帯を断裂し、次のシーズンは全休。ケガと戦いながらのキャリアを過ごすことになるが、電光石火のクイックネスと派手なボールハンドリングで数多くの選手をアンクルブレイクの屈辱に遭わせるなど一時代を築いた。
  自分のクロスオーバーが歴代No.1だと豪語してきたハーダウェイ。『SLAM』でお気に入りのクロスオーバーを問われると、「たくさん相手を置き去りにしてきたから、そのいくつかはもう覚えていない。俺はバスケットボールをしているだけさ」と話しつつも、ある試合を挙げた。それが2年目だった90年12月7日のウォリアーズ対デトロイト・ピストンズ戦。右コーナー付近で同郷のスーパースター、アイザイア・トーマスと1対1になると、キラークロスオーバーで置き去りにし、ベースライン際を攻め込んで得点を奪ってみせたシーンだ。

「いつも俺のアイドルだったアイザイア・トーマスに対抗したい、重要なゲームで対戦したいと思っていた。本当にいい気分だった。彼が食いついた瞬間、クロスオーバーで置き去りにした。たしかオークランド(ホーム)での試合だったと思う。彼と常に対戦していたかったし、彼の前では常にベストを尽くしたかった。お気に入りを選ぶなら“対アイザイア・トーマス”のものになるだろうね」

 ウォリアーズ時代と言えば、ミッチ・リッチモンド、クリス・マリンとのハイスコアリングトリオ“ランTMC”が人気を博した。リッチモンドが91年にサクラメント・キングスへトレードされてしまい、3人の共演はわずか2シーズンだったが、司令塔のハーダウェイを中心に、リッチモンドとマリンが平均20点以上を叩き出す高速オフェンスは相手の脅威となった。ハーダウェイの中で、90−91シーズンのスパーズとのプレーオフ1回戦は“ランTMC”の最高の瞬間だったという。
  ウォリアーズは敵地サンアントニオでの第1戦、相手エースのデイビッド・ロビンソンに30得点を奪われ、さらにガードのロッド・ストリックランドに30得点、13アシスト、ウィリー・アンダーソンに38得点、7アシストを許し、121−130で逆転負けを喫した。そこで、名将ドン・ネルソンから“喝”を入れられたと振り返る。

「コーチ・ネルソンは俺とミッチをフィルムセッションに呼んだ。そこで言われたよ。『またひどいディフェンスをするつもりか?ロッド・ストリックランドとウィリー・アンダーソンをやっつけてやれ。お前たち2人はディフェンスをしないといけない。オフェンスについて話すつもりはない。お前たちが攻撃できることは分かっている。だから、ディフェンスだ。ディフェンスに誇りを持たないといけない』ってね」

 迎えた第2戦は、ハーダウェイがストリックランドを8得点(FG12本中3本成功)に抑えるとともに、“ランTMC”で63得点をマークして111-98で勝利。ホームに移った第3戦、4戦でもスパーズに競り勝ち、シリーズを制した。
 「次のゲーム、俺とミッチ、クリス・マリンはチームにディフェンスで貢献した。俺たちの最高の瞬間の一つだった。どんな相手でも倒せると感じた。プレッシャーのかかるシチュエーションで、俺たちは次のレベルに進んだんだ」

 ちなみに、数々の選手をキリキリ舞いさせてきたハーダウェイが「守るのがタフだったガード」は誰だったのか。本人の中で答えは“不動”だという。

「ケビン・ジョンソンとロッド・ストリックランドだ。大半の人は彼ら2人について話さないけど、コート上では俺にとって頭痛の種だった。ロッドにジャンプシュートはなかったけど、ゴールにアタックするとどんな時もスリーポイントプレーが可能だった。彼らとの対戦は楽しかったし、俺のプレーを別のレベルに引き上げてくれた」

 “元祖”ハーダウェイに近づき、追い越すクロスオーバーの使い手は今後現われるだろうか。

構成●ダンクシュート編集部
 

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