ロケッツを連覇に導いたオラジュワンが味わった挫折とキャリアのターニングポイント

ロケッツを連覇に導いたオラジュワンが味わった挫折とキャリアのターニングポイント

1年目からチームの主軸として好成績を残していたオラジュワンだが、20代の頃は「リーダーとして勝ちにこだわる姿勢を見せられた訳じゃなかった」という(C)Getty Images

かつてNBAのヘッドコーチ経験者に「チームが優勝するために欲しいタイプの選手は?」という質問をしたことがある。

 カレッジとNBAの両方で優勝経験のあるラリー・ブラウンは「アレン・アイバーソンのような才能の塊は優勝のために必要な選手であることは間違いないが、それだけでは勝てないことをNBAで経験を積んだコーチであれば身にしみて知っているものだ」と答えた。

 オールスターゲームに何度も出場している超人気者と、チャンピオンリングを勝ち取る選手は、必ずしも“イコール”にはならないのがバスケットボールという競技だ。

  ブラウンは言う。

「カレッジではbPチーム=ベストチームではないのが定説だ。一方NBAでbPチームはベストチームにしか成し得ないとなるのもまたバスケットボールだ。競技の特性に順応した才能を発揮できる選手がNBAでは生まれるもので、そこには色々な要素が含まれてくる。そんな中でも私が一番優勝に必要な選手に挙げるのはアキーム・オラジュワンだね」

 オラジュワンはマイケル・ジョーダンと同じ1984年のドラフトで1位指名を受けたセンター。1980年代のNBAでは、多くのチームがビッグマンを中心にロースターを構成しており、オラジュワンのような7フッター(213p)はどのチームも喉から手が出るほど欲しい選手だった。80年代のドラフト1位は10人中7人がセンターで、他の3人は81年のマーク・アグワイアと82年のジェームズ・ウォージー、そして88年のダニー・マニング。この中で身長が2m以下だったのはアグワイア1人だけで、センターの重要性が高い時代だったことがわかる。
  85年のドラフト1位パトリック・ユーイングはオラジュワンについて 「高さと幅も十分にあるのにフィジカルではなくテクニックで勝負を仕掛けてくるのがオラジュワンのスタイルだった」と評し、87年ドラ1のデイビッド・ロビンソンは「決して走力はなかったが、フェイクの俊敏さや相手を騙すスタイルはまるでガード選手のようだった」と回想する。

 のちに“ドリームシェイク”と呼ばれたシグネチャームーブをはじめ、多彩な武器を持ったオラジュワンは、当時の一流のセンターたちからも一目置かれていたのだ。

 93年ドラフト1位のクリス・ウェバーは「自分がデビューした当時、オラジュワンはキャリアの全盛期を迎えていた。彼が得意とする左ローポストでは得点されるか、ファウルするかの2択だった。コーチからはダブルチームでもいいからボールをオラジュワンから他の選手にパスさせるんだと怒鳴られていたよ」と笑う。
  オラジュワン率いるロケッツは94、95年と連覇を達成することになるのだが、20代の頃の彼は「チームリーダーとして徹底して勝ちにこだわる姿勢を見せられた訳じゃなかった」という。

「自分はオフェンシブなプレーが得意だったが、チームが求めるものはリバウンドやディフェンスでコーチと意思疎通がうまくいかないこともあった。その中でもラルフ・サンプソンと形成したツインタワーはあまり乗り気ではなかった。86年にレイカーズを破ってファイナルに進出したところまでは良かったが、だんだんと相手チームからスカウティングされ、上手くいかなくなったんだ」(オラジュワン)

 87年のサンプソン退団後、ロケッツはオラジュワン中心のチーム作りにシフトしたものの、プレーオフでは4年連続でファーストラウンド敗退。キャリア8年目の91−92シーズンには42勝に終わり、プレーオフを逃すことになる。

「この時期にチームが私のトレード先を探していたのは事実だ。私自身もバスケットボール人生の中で初めての大きな挫折を味わった時だった」とオラジュワンは語った。

 ところが、翌92−93シーズンのロケッツはウエスタン・カンファレンス2位の55勝をマーク。オラジュワンはMVP投票で2位に入るなど株が急上昇し、復活の狼煙をあげることになる。
  オラジュワンは「優勝した前のシーズンから、どうやって自分がオフェンスのハブ(中心)になれるのかを研究した。自分の得意なことで、相手ディフェンスがどうやったら嫌がるのかを研究してチームメイトともそれを共有した。そこからロケッツの勝利のパターンが作られて成績が安定しはじめた」と、自身とチームにとって92−93シーズンが大きなターニングポイントになったという。

 指揮官のルディ・トムジャノビッチは「私がヘッドコーチに就任した時(91年)から、オラジュワンは精神面で飛躍的な成長を遂げた。それがチームを大きく前に進めた」と大黒柱のメンタルの変化がチームの躍進につながったと分析する。

 現役時代にオラジュワンの人間性が語られることは多くなかったが、元々は自分から積極的に周囲とコミュニケーションを取るタイプではなかったそうだ。しかし、勝利することに目覚めたオラジュワンは「ペイントエリアは自分に任せろ。それ以外は君たちに任せた」とチームメイトを鼓舞することが多くなった。

「昔から気難しいところも持っていたが、内に秘める情熱は人一倍だ。キャリア終盤に2人で勝ち取ったチャンピオンリングは今でも最高の思い出だよ」と盟友のクライド・ドレクスラーは言う。

 今ではNBAのトッププレーヤーにスキルを教えているオラジュワンはこう話す。

「自分のスキルはローポストに限らずにどのポジションの選手でも使える汎用性の高いプレーばかりだ。そしてそのスキルの延長線上には単に得点を取るだけではなく、勝利のためにプレーするという大前提がある。そこまでを選手たちに伝えきることが私の使命だと思ってコーチングをしているんだ」

文●北舘洋一郎

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