高3でイップスを経験した淺井咲希。ライバルにも助言を求める「ゴルフへの執念」は同世代でも群を抜く【黄金世代の歩み】

高3でイップスを経験した淺井咲希。ライバルにも助言を求める「ゴルフへの執念」は同世代でも群を抜く【黄金世代の歩み】

ゴルフに対する執念と同世代の選手から受ける刺激が、淺井の成長を促している。(C)Getty Images

今やツアーには欠かせない黄金世代の面々だが、どの選手もスランプに喘いだ時期は必ずある。昨年のCAT Ladiesで同世代9人目となるツアー優勝を飾った淺井咲希も例外ではない。

 淺井がゴルフを始めたのは6歳のときだ。父親である靖宏さんの厳しい指導の下、地元である兵庫県や関西の大会では常に上位に顔を出すまでに成長した。中学時代はもちろん、高2まで一度も予選落ちがなかったというから驚く。ところが、高3になって状況が一変する。パッティングのイップスにかかり、思うように手が動かなくなったのだ。その結果、高3では一度も予選を通ることができなかった。

「団体戦でのことです。1メートルのパットを打ったら、カップをクルリと1回転して自分の足に当たりそうになったのがきっかけです」

 メンタルが原因とされるイップスに陥るとどんな名手でもスコアにならないと言われるが、18歳の女子にはシビアすぎる問題だった。

「高校を卒業したらプロになろうと考えていましたが、断念するつもりでした。ただ、父と話し合った結果、1度は受験してほしいと言われたので、最初で最後のチャレンジだと思い、プロテストを受けることにしたんです」
  受けると決めたからには、全力を尽くすのが淺井のポリシーでもある。最終テストの会場となる富山県の小杉CCに何度も足を運び、コースチェックを兼ねた練習ラウンドを行なった。その甲斐あってか、プロテストには一発合格を果たす。しかも、練習ラウンドの際、淺井の受け答えやゴルフに取り組む真摯な姿勢がコース関係者の目に留まり、合格後になんと所属契約を結ぶまでに至ったのだ。淺井にしてみれば、感謝の気持ちが強かったのだろう。CAT Ladiesでの優勝副賞であるミニ油圧ショベルを小杉CCに寄贈し、義理堅さを持つ一面も見せた。

 プロテストに合格してからも、淺井はパッティングには悩まされ続ける。昨年もグリップをクロウグリップやクロスハンドグリップなど、そのときの感覚によって変え、パターもいろいろなものを試した。それでも3パットはもちろん、4パットすることも少なくなかった。優勝したCAT Ladiesでも最後にハッとする場面があった。
  2位以下に2打差で迎え打最終18番パー5。3打目をグリーン右手前に外したが、そこからピンそば50センチに寄せる。2パットでも優勝なだけに、グリーン周りまで応援に来ていた勝みなみ、大里桃子、高橋彩華らも笑顔で見守っていた。ところが、ファーストパットがカップに蹴られ、2メートルもオーバーしたのだ。唖然とする淺井に、表情が固まる勝。返しのパットを何とか沈めて事なきを得たが、緊張したときのパットに対する不安が残ったのは言うまでもない。

 その2週後、淺井はゴルフ5レディスでも優勝争いに絡んだ。今度は最終18番で2メートルのバーディパットを沈めればプレーオフという場面だ。ゆっくりとしたストロークで放たれたボールはカップに向かって転がっていったが、カップの縁で止まってしまう。「いつものようにスーッと手が出ませんでした。大事な場面でショートしているようじゃダメですね」と、反省しきりだった。
  それでも、ホールアウト後、同組でラウンドした申ジエのところへ行き、外したパットについて質問したと言う。「クロウグリップは右手に力を入れないため、私のパットのように転がらないことがあると教えてくれました。でも、しっかりとラインに乗せたことは素晴しいとほめていただきました」と淺井。ライバルである他の選手にアドバイスをするジエも立派だが、悔しいだけで終わらせず、反省点を今後に生かそうとする淺井の積極性も素晴らしい。

「昨年は優勝者の中で最も低い賞金ランキング33位でした。今季はトップテンに入る回数を増やし、早めに2勝目を挙げられるように頑張ります」

 シード選手の中では最も低い151センチの淺井。それをカバーするのはゴルフに対する執念と同世代の選手から受ける刺激にある。自粛中は思うような練習をできなかったところもあるが、昨年得た経験と自信は必ずやプラスに働くだろう。

取材・文●山西英希

著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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