高校からGリーグを経てNBAドラフトへ。新たなトレンドとなりそうなこのシステムのメリット・デメリットとは?

高校からGリーグを経てNBAドラフトへ。新たなトレンドとなりそうなこのシステムのメリット・デメリットとは?

話題を呼んだグリーン(写真)のGリーグ入り。これがNBAの新たなトレンドとなるのか?(C)Getty Images

4月16日(日本時間17日、日付は以下同)、カリフォルニア州のプロリフィック・プレップに在学する高校生のジェイレン・グリーンが、来季のGリーグ(NBA入りを目指す選手たちが所属する下部組織)入りを表明したことは、アメリカでも大きなニュースになった。

 18歳のグリーンは196cm・79kgのサイズに、身体能力とボディバランス、クイックネスを高次元で備えたシューティングガード。来季はカレッジでプレーし、2021年のドラフトで上位指名の有力候補になると目されていた。ところが、メンフィス大に進学すると思われていた逸材は、突如プロ入りを宣言したのだ。

 これを受けGリーグのシャリーフ・アブドゥル・ラヒーム会長は、「ジェイレンは次世代のNBAを代表する選手。Gリーグでプロの旅路を始め、NBAレベルの指導や選手育成から多くを学んでいくだろう」と喜びの言葉を発表している。

 この後、4月17日にはノースカロライナ州のトップ高校生として鳴らしたアイザイア・トッド、28日にはUCLA進学と報道されていたダイシェン・ニックスもGリーグ入りを発表。高校からGリーグへ行くことがひとつのトレンドとなっている感すらある。
  これらの動きは、NBAとGリーグが提携して制定された「プロフェッショナル・パス・イニシアチブ」という新たな育成プログラムに関係している。このプログラムに参加する選手は、高校卒業後にGリーグで給料をもらいながら1年間プレーし、ドラフトへと備える。Gリーグとはいっても、NBA球団の傘下チーム入るわけではない。新たに創設されるセレクトチームの一員として10〜12試合(Gリーグは通常50試合)程度Gリーグのチームと対戦し、プロとしての経験を積むことになる。

 受け取るサラリーは1シーズン12万5000ドルと伝えられているが、実際にはもっと多額になる模様。グリーンは50万ドル、ニックスは30万ドル、トッドは25万ドルとも推測されている。

 近年は大学で1年間プレーし、アーリーエントリーでNBA入りする“ワン&ダン”が主流となっているが、ここに新たな選択肢が加わった。なるべく早くプロに行って稼ぎたいが、まだ身体ができていない選手には適した制度と言える。近年はラメロ・ボール、RJ・ハンプトンなど、高校卒業後に海外のプロリーグと契約して次のドラフトに備える選手が増えているなか、リーグ側には人材の海外流出を避けるという意図があるのだろう。しかし、この新制度に批判的な声もないわけではない。
 「私が問題視しているのは、Gリーグが大金をチラつかせて高校生を誘惑していることだ。何千人もの中学生や高校生が『自分たちもその大金を得たい』と夢を見るだろうが、実際にそれを得られる選手は全体の2%に過ぎない」

 ケンタッキー大のジョン・カリパリ・ヘッドコーチはそう語り、中高生の目標がプロ入りだけになることを危惧している。今後、学業を疎かにし、しかもGリーグに行けるだけの力がつかなかった高校生が、カレッジ進学の道を絶たれるという例が出てくるかもしれない。

 それでも、プロを目指す学生たちにとって、選択肢が増えるのは良いことではないだろうか。2022年にはドラフトの年齢制限が撤廃され、高卒でNBA入りすることが再び可能になるという見方もある。
  だとすれば、プロを目指す選手たちは高校卒業後に (1)カレッジ進学 (2)Gリーグ入り (3)NBA入り (4)海外リーグでの修行 といった複数のオプションのなかから、最善の道を選ぶことができる。プロ至上主義、カレッジの衰退につながるといった側面は確かにあるものの、若者の成長速度には違いがあることを考えれば、このように選択の余地があることは、やはりポジティブな変化に思える。

 付け加えれば、来季、グリーンをはじめとするセレクトチームのゲームはファン、関係者から大きな話題を呼ぶだろう。対戦相手のチームにも露出の面でメリットはある。これまで厳しい環境だったGリーグの注目度アップ、選手たちの待遇改善にもつながれば、それもまたプラス材料になるはずだ。

文●杉浦大介

※『ダンクシュート』2020年7月号より転載。

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