日本代表合宿が再開。五輪初の卓球ミックスダブルス、水谷隼&伊藤美誠「じゅんみま」メダルの可能性

日本代表合宿が再開。五輪初の卓球ミックスダブルス、水谷隼&伊藤美誠「じゅんみま」メダルの可能性

東京五輪に初採用される卓球のミックスダブルス。水谷の父が代表を務める卓球スポーツ少年団の先輩後輩という間柄であり、プレースタイルとしてもバランスのいいペアだ。(C)Getty Images

5月下旬に新型コロナウイルスにおける緊急事態宣言が解除されたことを受けて、少しずつではあるが、日本社会もスポーツ界も動き始めた中で、6月22日から日本卓球協会は日本代表合宿を約1か月間行なうと発表した。しかし、新型コロナウイルス感染防止の観点から、合宿開始から一定期間(10日間)、ダブルス練習は禁止する措置が取られるという。

 そんな情勢の中で、来年7月開幕となる東京五輪に向けた仕切り直しの日本卓球界で一番の注目は、同五輪で初採用されるミックスダブルス代表に選出された伊藤美誠と水谷隼のペアだ。

 伊藤は世界ランキング2位(2020年4月現在)にまで上り詰めてシングルス代表切符を獲得するなど成長著しい19歳で勢いに乗っている。晴れ舞台の1年延期も、伊藤にとってはさらに強くなれる絶好の機会となり、2歳で始めた幼少時から掲げる「世界チャンピオン」になるという大きな目標の実現により近づけるはずだ。初出場だった2016年リオデジャネイロ五輪では団体銅メダルに貢献して、15歳300日での五輪メダル獲得は卓球史上最年少記録という快挙だった。

 リオ五輪後は燃え尽き症候群になって、練習に身が入らない時期もあったが、翌17年の全日本選手権で5回戦敗退を喫して目が覚めた。気合を入れなおして練習に取り組み、とかく卓球では相性の良し悪しで勝敗が決まる競技性と言われる中で、誰にでも勝てるベースとなる実力の底上げを図るようになったという。
  そして、着実にレベルアップを遂げてきた中で、18年の全日本選手権ではシングルスで初優勝すると女子ダブルスと混合ダブルスも制して、女子選手として史上3人目となる3冠を17歳の最年少で達成し。翌19年大会では女子として初となる2年連続3冠の偉業を成し遂げ、日本女子エースの座をつかんだ。

 この2年間は国内外の大会でタイトル獲得や決勝進出を果たすなど単複ともに目覚ましい活躍を見せて、一気にスターダムに上った。武器は、スイングが速くて対戦相手が回転を見極められない独特で多彩なサーブと、フォアハンドのスマッシュ「みまパンチ」と呼ばれるカウンターアタックなどのスピード攻撃だ。

 伊藤の卓球スタイルは、研究熱心な頭脳派で、動じないメンタリティを持っている。2年前に開幕したプロリーグのTリーグにも参加しないなど、我が道を行くタイプで、しっかりと自分の考えを言葉にでき、若くして才能を開花させた天才肌の選手と言えるだろう。

 2018年3月11日のツイッターに伊藤はこんなことをつぶやいた。
「誰に何を言われようと私は私。自分は自分。私らしく正々堂々と戦うだけ。本気で何かと闘っている人はそんなに簡単に自分に負けたりしない。何を言われても、何をされても実力がある人が勝つ。私はその実力を求めて毎日頑張る。と改めて思えた今日」
 この言葉からも、信念の人であることがうかがえる。
  一方の水谷は日本卓球界をけん引するエースで、北京、ロンドン、リオデジャネイロの五輪3大会に出場して前回のリオではシングルスで日本人初となる五輪メダリスト(銅)になった。東京五輪でもシングルス代表入りを狙っていたが、ポイント獲得を目指していた大会が急遽中止となる不運も重なって逃し、団体戦とミックスダブルスの要員として代表入りを果たした。

 東京五輪を最後に現役引退を公言している水谷は、今年1月6日に卓球の東京五輪代表に選出された後、自身のツイッターにこう決意を語った。
 「自分を選んだことを後悔させません。ロンドン、リオと団体戦無敗なので、そのまま東京でも全勝して自らの引退の花道を飾ります」(抜粋)

 また、4月7日の緊急事態宣言から1か月半が過ぎた5月26日に、プレミアム音声サービス「Now Voice」を通じて、「日本の子供たちへ」という音声投稿では、こんなことも話していた。

「『ピンチはチャンス』という言葉を聞いたことがあると思いますが、どのような状況下でも自分のやるべきことをやることが自分自身を成長させてくれると信じています。私は中2から5年間ドイツに留学しました。みんなが中学校で勉強しているとき、私は卓球をしていました。みんなが高校で恋愛をしているとき、私は卓球をしていました。みんなが大学で飲み会をしているとき、私は卓球をしていました。そして、みんなが大人になって仕事をしているとき、私はプロの卓球選手として活動しています。(中略)自分の歩んできた道は間違っていなかったと、これまで私が残してきた功績がそれを物語っています」(抜粋)
  5歳から始めた卓球に情熱を注ぎ、全日本選手権の男子シングルス史上最多の優勝10回を誇る水谷も6月9日で31歳になった。2年前からは目の不調に悩まされ、試合でボールが見えにくいと口にすることが増えた。全盛期のような力は出しにくくなったようだが、万能型のプレースタイルの持ち主が結果を残しているのはキャリアと経験を通じて発揮される戦術と総合力、そして類まれなる卓球センスと自信に裏打ちされているからに違いない。
  日本卓球の頂点に君臨した伊藤と水谷という男女エースがタッグを組み、東京五輪の新種目となるミックスダブルスで金メダル獲得に挑むことは、それほど夢物語ではないだろう。

 昨年の2019年にペアを結成した2人は、同じ静岡県磐田市出身で、水谷の父が代表を務める豊田町卓球スポーツ少年団の先輩後輩という間柄でもあり、旧知の仲でもある。性格的には伊藤が「動の人」なら、水谷は「静の人」で、磁石で言えばプラスとマイナスか。右ききの伊藤に対し、左ききの水谷と、お互いの長所と短所をピッタリ埋めることができ、スキのないコンビネーションプレーが生まれるようだ。

 昨年のワールドツアー大会ミックスダブルスでは、ペア結成後の初戦となった7月の韓国オープンで3位となり、3戦目のブルガリアオープン(8月)で初優勝を飾ると、その後4大会で準優勝が続き、今年3月のカタールオープンを制覇して2勝目を挙げるなど、強敵中国ペア勢と好勝負を繰り広げている。
 「じゅんみま」のコンビプレーは、まだ改善の余地はあるが、穴は見られない。2人とも勝負強さがあり、意外性のあるプレーを繰り出す伊藤の強さを引き出せる水谷には懐の深さと対応力が備わっている。ペアとしての経験がまだ浅い課題を今後どう克服していくのか。コンビプレーの質をより高める必要があるが、シングルスでも金メダルを目指す伊藤と共有できる時間は限られてくるだけに、水谷が伊藤にどう合わせることができるかが勝負のカギを握りそうだ。

 一歩引いたポジションを取る「兄」役の水谷が、思い通りに躍動する「妹分」の伊藤を輝かせることができれば、金メダル獲得の可能性も高まるはずだ。

文●辛仁夏 YINHA SYNN
1990年代に新聞記者となり、2000年代からフリーランス記者として取材活動を始め、現在に至る。フィギュアスケート、テニス、体操などのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材する。

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