【名作シューズ列伝】ピッペンモデルの“廉価版”。レジー・ミラー着用の「NIKE AIR MUCH UPTEMPO」のお話

人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり! 

 ドリームチームIII(1996年アトランタ五輪)のシグネチャーモデル第2弾、本編18箱目は、レジー・ミラーが着用したオリンピックモデル「NIKE AIR MUCH UPTEMPO」のお話です。

 レジー・ミラーは、兄のダレルがMLBプレーヤー。姉のシェリルがバスケットボールのスター選手、妹のタミーがバレーボール選手というスポーツ一家で育ちました。しかし、ミラーは生まれつき脚が曲がっていたため少年時代は満足に歩けず、ギブスによる矯正でやっと歩けるようになったといいます。

 そんなミラー少年が没頭したのがバスケットボール。2歳年上の姉シェリルに何度も勝負を挑みましたが、高校時代まで勝つことはできませんでした。

 姉の英才教育のおかげで、大学は地元の名門UCLAへ進学。2年時から主力を務め、3、4年時には平均20点超えを記録し、4年間でカリーム・アブドゥル・ジャバーに次ぐ歴代2位の2095点を稼ぎました。
  87年のドラフトでは1巡目11位でインディアナ・ペイサーズに指名。201pのシューティングガードはシュート力に定評があり、3年目の90年には平均24.6点、フィールドゴール成功率51.4%を記録するなど、順調に成長を続けていました。

 彼は単なるシューターではなく、勝負所で真価を発揮するクラッチシューターでもありました。ニューヨーク・ニックスと対戦した94年のプレーオフでは、第4クォーターだけで25得点。さらに翌年のニックス戦でも第4クォーター残り16秒から8得点を叩き出し、逆転勝利の原動力に。ゲーム終盤「ゾーン」に入ったオフェンスは、“ミラータイム”と呼ばれ、相手チームとファンに恐れられました。

 そんな活躍が認められ、94年に世界選手権(現ワールドカップ)に続き、96年のアトランタオリンピックのアメリカ代表メンバーに選出されました。
  予選ラウンドの中国戦では5本の3ポイントを成功させ、当時のオリンピック記録を樹立。8試合中5試合に先発出場したミラーは、チャールズ・バークレー、デイビッド・ロビンソンに次ぐチーム3位の平均11.4点をあげて金メダル獲得に貢献しました。

 オリンピックで彼の足元を支えた「AIR MUCH UPTEMPO」は、前回紹介したスコッティ・ピッペンの「AIR MORE UPTEMPO」の“廉価版”と言えるシューズです。ホワイトが基調のネイビー・ゴールド・レッドが最低限使用されたデザインで、ミラーの着用モデルにもかかわらず背番号も入っていません。



 さらに、機能面を「Forefoot Air Unit / Visible Air(Heel)」に変更した影響で、価格も「AIR MORE UPTEMPO」の1万8000円から1万2000円と大きくプライスダウンされていたほどです。

 デザインをシンプルし値段も下げてさらなるヒットを狙ったのかもしれませんが、「AIR MORE UPTEMPO」と比べるとやはり物足りなさは否めません。
 

 BOXは「AIR MORE UPTEMPO」同様にNIKEデフォルト。形状は若干細いですが、デザインもダンボールのままの地にブラックのスウッシュ、側面の上部はオレンジ、下はブラックで一緒の作りとなっています。

 オリンピック後、「AIR MUCH UPTEMPO」は、アッパーを大きなシュラウドつきのデザインに変更。翌シーズンは「AIR MONEY」としてミラーの足元を飾りました。



 シューズ名の「MONEY」は、直訳すると「お金」という意味ですが、スラングで「素晴らしい」や「最高」という意味でも使用される言葉です。五輪時はピッペンモデルの“廉価版”でしたが、ブランドが国際大会やNBAで結果を残してきたミラーの功績に敬意を表し、シューズをアップグレードしたのです。

 近年には「AIR MORE UPTEMPO」のソールに「AIR MONEY」のアッパーを合体させた「AIR MORE MONEY」がリリースされました。ただ、個人的にはオリジナルの再販を期待しています。

文●西塚克之

【著者プロフィール】
西塚“DUKA”克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。

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