シャック、ヒル、コビーらを筆頭とする「ジェネレーションX」が生きた“アメリカンドリーム”の時代

シャック、ヒル、コビーらを筆頭とする「ジェネレーションX」が生きた“アメリカンドリーム”の時代

90年代後半、シャック、ヒル、コビーらを筆頭とする「ジェネレーションX」が台頭し、NBAを大きく盛り上げた。(C)Getty Images

NBAの歴史を語る上で「ジェネレーションX」という世代は重要な意味を持っていた。1990年代後半のNBAではオールドスクールと呼ばれる選手とジェネレーションXと呼ばれる選手で区分けするトレンドがあった。

 わかりやすく世代分けすると、「オールドスクール」はマイケル・ジョーダン、チャールズ・バークレーが筆頭。ジェネレーションXはシャキール・オニール(シャック)、コビー・ブライアント、グラント・ヒル、アンファニー“ペニー”ハーダウェイ。また、この間の世代だったスコッティ・ピッペン、レジー・ミラー、ゲイリー・ペイトンは「ニュースクール」と呼ばれていた。

 90年代後半にかけてNBAに限らずアメリカのプロスポーツ界ではジェネレーションXと呼ばれる選手たちが次々と台頭し始め、どんどん面白みを増していった時代だった。

 当時ジョーダン、バークレー、パトリック・ユーイングなどの典型的なオールドスクールのスーパースターはすでに30歳を超えていたが、いまだリーグ屈指の存在だった。そこに25歳からティーンエイジャーまでを含むシャック、ヒル、コビー、クリス・ウェバー、アレン・アイバーソンなど個性派で実力のある若手が力をつけたことで、注目チームが増加した。リーグの選手層自体に厚みが生まれ、各チームにスーパースターが分散したことで総体的にNBAは面白いリーグとなっていったのだ。
  オールドスクール、ニュースクール、そしてジェネレーションXとこの3世代は20年ほどの幅の中に収まっているが、15歳以上(ジョーダンとコビーはちょうど15歳差だった)も歳の離れた選手が同じコートで、それも同じクオリティで試合ができるという環境はまさにアメリカが成せる技だったと感じる。

 ジョーダンを筆頭としたオールドスクール世代はNBAの頂点を極めながら、なかなかトップの座を譲らなかった。その結果、ひとつ下のニュースクール世代は良い意味でも悪い意味でも落ち着いてしまった。ピッペン、ペイトン、ミラーは確かに素晴らしい選手ではあったが、オールドスクール世代と比較すると、カリスマ性がコートの上に限らず、オフコートでも作ることができなかったのではないか。

 それならジェネレーションX世代はどうなのか。

 今年ニューヨーク・ニックスの球団副社長に就任したウィリアム・ウェスリーに言わせれば、「彼らは多くの意味でルーキー時代からカリスマ性を期待される才能を持っていた。ジョーダンがルーキーだった時も同じような印象だった」と振り返る。
  ジョーダン、アイバーソン、レブロン・ジェームズを筆頭にアメリカのバスケットボール界にコネクションを持つウェスリーはそんな匂いを感じたのだそうだ。結果論になってしまうが、オールドスクールとジェネレーションXは天才肌のスーパースターが多く、ニュースクールは秀才タイプで努力が全面に見えるタイプのスーパースターだったのだろう。

 経済的にもジェネレーションX世代の選手は若くしてアメリカンドリームを手にすることになった。97年のヒルはデトロイト・ピストンズで約6億円の年俸をもらっていた。加えてスポーツブランドの「フィラ」をはじめ、10数社とスポンサー契約を結んでおり、1年に約30億円の副収入があったという。

 同じ頃のジョーダンは1年で約63億円を稼ぎ、ダントツでリーグ1位。2位がシャック(約38億円)、そして3位がヒルだった。スポーツビジネスでの経済効果として約20年前にこれを震源として動き出していなければ、現在のNBAトップ選手たちのこの2倍、3倍の報酬というのは生まれていなかっただろうという論説を唱える学者もいる。
  その反面、アイバーソンは学生時代に乱闘騒ぎで逮捕され、懲役15年の禁固刑(州知事の特赦により4か月後に釈放)を受けたり、マリファナ所持疑惑(最終的には所持していなかったことで終結)の濡れ衣をかけられたウェバーは、フィラとの契約を一方的に解消されたりもした。一概にジェネレーションXの生きる時代はすべてが順風満帆ではなく、天使と悪魔が隣合わせのような時代で、だからリアルを感じたのかもしれない。

 音楽界にも1曲でアメリカンドリームを掴んだミュージシャンがいるが、その性質はNBA選手とは異なる。ミュージシャンは曲のセールスがそのままキャッシュに化けるシンプルな構造だが、NBAはその選手の全盛期に各球団が多大な先行投資をして有望選手候補生を獲得する。しかしレコード会社がミュージシャンの将来の夢に数億円の契約金を払うことはないシビアな世界だ。

 オールドスクール世代には「一発当てたいなら、ミュージシャンかバスケットボール選手になるのがいい。それがダメでもドラックディーラーがある」というブラックジョークがあった。

 しかし、ミュージシャンはほんの一握りしか大化けしないし、ドラッグディーラーはすぐに刑務所にぶち込まれてブラックジョークにもならないと、カニエ・ウエストは言っていた。

 アメリカでも世の中が大きく変動した時代にあって、NBAのスーパースターたちの生き様はある意味アメリカそのものを象徴していたのだろう。

文●北舘洋一郎

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