コビー、ウェバー、ダントーニが語る“コート内外のナッシュの素顔”。稀代の名司令塔はなぜネッツのHCを引き受けたのか

コビー、ウェバー、ダントーニが語る“コート内外のナッシュの素顔”。稀代の名司令塔はなぜネッツのHCを引き受けたのか

クールに見えるナッシュだが、実際は相当に熱い男だったという。(C)Getty Images

9月3日、スティーブ・ナッシュがブルックリン・ネッツの新ヘッドコーチ(HC)に就任した。HC未経験で未知数のナッシュを登用したことに賛否両論あるようだが、本人はこのチャレンジを楽しみたいという。

「あれだけのバスケットボールIQを備えるスティーブだから、その役回りに不足はない。そして何よりも、HCは24時間365日チームのことを考えていなければならないほどタフな仕事だ。常に頭をフル回転させて試行錯誤を繰り返し、シーズンを乗り切る体力を持ち、リーダーシップを発揮しなければならない。スーパーマンのような任務だ」

 こう語るのは、ナッシュと同じ時代を戦ったクリス・ウェバー(元サクラメント・キングスほか)。そして、自分のような怠け癖のある人間にはHCは務まらないと冗談交じりに話した。

 ウェバーが言いたいのは、“HCの責務を全うするのと、選手として勝利のためにプレーするのは大きな違いがある”ということだ。ウェバーは自分の性格と比べて、ナッシュをこう分析する。
 「僕は現役時代、試合までに自分のコンディションを精神的にも肉体的にも最高なところまで高めていくことに集中していた。その反面、試合が終われば一気に解放された気持ちになり、試合に勝とうが負けようが、一度すべてをリセットしたかったし、実際にそうしていた。試合がすべてで、それ以外の部分ではフルに自分の能力を出さなくてもいいかな、という気持ちが多々あったのは事実だ。だけど、スティーブのようなタイプは僕と同じようなスタンスで試合に望んでいなかっただろうし、ポイントガードというポジション柄、練習でも試合と同じ熱量で望んでいた。それがスティーブだ」

 またコビー・ブライアントは、短い間だがロサンゼルス・レイカーズでともにプレーした時のナッシュについてこう話していた。

「彼の長いキャリアで、試合中クールにプレーしているところを一度も見たことがない。ハードワーカーで熱い男だ。感情を剥き出しにした振る舞いこそしていないように見えるだろうけど、実際にプレーしてみればわかる。相当な激しさだよ」
  ナッシュがフェニックス・サンズ時代に指揮官を務めたマイク・ダントーニは「スティーブがボールをコントロールしていれば、試合が大きく崩れることはないと確信して指揮ができた。HCとして指示を出さなくても、スティーブがその代わりを担っていたんだ。ターンオーバーを恐れずにラン&ガンを仕掛けられたのも、スティーブあっての戦術だった」と語る。

 ウェバー、コビー、ダントーニの話を聞いただけで、ナッシュにコートサイドでの経験がなくとも十分にその役目を果たしてくれそうな期待感が高まってくる。

 ナッシュは就任発表後、ネッツの二枚看板であるケビン・デュラントとカイリ・アービングについて、自分との関係などを交えたコメントを出した。すでにそれぞれとも話をしているようだが、ウェバーによればナッシュがネッツに決めた理由は、この2人が在籍していたことが大きな理由だったという。
 「NBAの場合、コーチは短期間で結果を出さなければすぐに解雇だ。それは例え優秀な指揮官でも普通にある。結果を導き出すには選手が重要で、彼らが輝くためのお膳立てをするのがコーチの仕事。選手あっての結果であり、コーチが結果を出すわけではない。そして、責任はコーチが負うものだという現実をスティーブは理解している。だから、自分と相性のいいデュラント、そして同じポイントガードでありこれからの関係性が築いていけるであろうアービングの揃っているネッツに勝機を感じたはずだ」

 新型コロナウィルスの影響により変則的なスケジュールで進行するなか、ナッシュは脇を固めるアシスタントコーチ陣を選定し、その後に選手の補強をしながら、さらにチーム戦略の基礎も設計し、どうやって浸透させていくかまでの準備を進めていかねばならない。

 マジック・ジョンソン(元レイカーズ)はかつて「選手としてチームにいる時と、コーチとしている時では、まったく別の生き物にならねばならない」と言ったことがあった。また、ラリー・バード(元ボストン・セルティックス)は「選手の方が自分には向いていたね。現役時代は試合前にナーバスになることはなかったが、コーチになってからは別だった」と話している。

 名選手が名コーチになれるのか。ましてナッシュはシーズンMVPに2度も輝いたスーパースターだけに、コーチとしての力量がどれだけのものか、その注目度はかなりのものになるだろう。

文●北舘洋一郎

【PHOTO】NBA最強の選手は誰だ?識者8人が選んだ21世紀の「ベストプレーヤートップ10」を厳選ショットで紹介!

関連記事(外部サイト)