eスポーツってそもそも何だ?市場の始まりとデジタル時代を生きるアスリートの姿を解説

eスポーツってそもそも何だ?市場の始まりとデジタル時代を生きるアスリートの姿を解説

「レインボーシックス シージ プロリーグ シーズン10ファイナル」で優勝に輝いた「Natus Vincere」

2018年にゲーム業界の内外から”元年”と称されて以降、Webメディアに雑誌、テレビ番組といった各種メディアで取り上げられる機会も増えてきた「eスポーツ」。オランダに拠点を置く調査会社Newzooの発表によると、試合の視聴者人口だけでも約4億5000万人以上いるとされており(2019年時点)、その規模感は今やリアルスポーツに勝るとも劣らない勢いと言っていいだろう。

 しかし、ゲームに馴染みの無い方々にとってみれば、「ゲームの競技大会がどうしてそこまで盛り上がるのか?」「eスポーツで活動する選手は普段どのような生活を送っているのか?」等々、いくつか疑問が生じているかもしれない。そこで今回は大まかにeスポーツにおける競技シーンの成り立ちを踏まえ、開催される大会の実態やプロ選手の活動について解説する。

 本題へ入る前に、まずはeスポーツの語義を明らかにしたい。経済産業省と連携してeスポーツの振興をはかる「一般社団法人日本eスポーツ連合」(以下、JeSU)の公式サイトによると、「電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使ったスポーツ競技」と書かれている。ここでは”対人戦を前提としてゲームに取り組む競技”と考えてもらえると幸いだ。
  eスポーツの世界市場における収益規模は成長途中にある。前出のNewzooは自社レポート「Global Esports Market Report 2020」にて、2020年度の収益規模は約9.74億USドルと予想。このまま着実に市場が広がれば、2023年度には約16億USドルまで上るとしている。

 一方の国内市場は世界と比較して少なめながらも、2020年度に至るまで増収傾向にある模様。KADOKAWA Game Linkageの「日本国内におけるeスポーツ市場の動向」によれば、2019年度の国内eスポーツ市場規模は約61億円。また、ゲーミングチームやプレイヤーと契約を結んでスポンサードする、もしくは実績のあるプレイヤーを迎え入れて直接プロゲーミングチームを立ち上げる一般企業が増えたことで、企業グループ間の繋がりを越えた成長性を見せているのも特筆すべきポイントだ。
  ここからはeスポーツの黎明期をざっくりと振り返りつつ、昨今のeスポーツ人気に至った経緯を見てみよう。まずは1997年頃、欧米にて「Professional Gamers League」(以下、PGL)、「Cyberathlete Professional League」(以下、CPL)という2つのゲーム大会が始動。この開催に伴う形でゲーム関連企業がプレイヤーのスポンサーとなり、資金提供を受けながら企業の広告塔として役割を果たす”プロゲーマー”が誕生した。

 21世紀に突入すると、eスポーツという単語がコンピューターゲームの競技シーンにて流行。2000年に始まった「World Cyber Games Challenge」(韓国)、2003年開催の「Electronic Sports World Cup」(フランス)など、2000年代初頭は海外においてeスポーツの普及が進んでいった。
  実を言うと、日本の場合は”eスポーツ元年”と呼ばれる変化の兆しが何度か訪れている。その嚆矢となったのは2005年。eスポーツの世界大会「CPL2005」に出場する「SIGUMA」氏を、PC機器メーカーの株式会社アスクがスポンサーとしてバックアップ。まさに日本初プロゲーマーが産声を上げた瞬間だ。

 続いて2010年、『ストリートファイター』シリーズのプレイヤーとして多数の実績を誇っていた「梅原大吾」氏が、アメリカの周辺機器メーカーであるMad Catzとスポンサー契約を締結。対戦格闘ゲーマーとして名を馳せたプロゲーマーの夢に続けと言わんばかりに、日本の競技シーンもより一層の盛り上がりを見せた。

 その後は国内で競技シーンを支える委員会や連盟が次々と発足。そして2018年、「日本eスポーツ協会」、「日本eスポーツ連盟」、「e-sports促進機構」の3団体が統合して「JeSU」が設立された。以降は公共団体やアマチュアコミュニティ、ゲームメーカー主導のもと、国内大会の拡充やプレイヤーのスポンサー企業が相次ぎ、メディアで取り上げられたように本格的なeスポーツ元年が訪れる。

 では、具体的にeスポーツ大会はどのように行われているのか。『Dota2』の世界大会「The International」を筆頭に、eスポーツ大会と言えば高額な賞金ばかりがセンセーショナルに語られがちだが、ここで抑えておきたいのはリアルスポーツと共通している部分。どんなジャンルのゲームであれ、最初は何らかの予選を勝ち抜いて本戦に出場し、トーナメント形式か総当りのリーグ戦で優勝を目指す。
  日本の場合だと、CyberZとエイベックス・エンタテインメントの共催による「RAGE」がメジャーだ。そのほか、2019年より毎日新聞社とサードウェーブが共同で企画中の「全国高校eスポーツ選手権」。全国規模を対象とした「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」など、様々なフォーマットに基づいて大規模なイベントが執り行われている。

 より具体例を示すなら、リアルスポーツのテニスと対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV』(以下、ストV)のプロシーンを並べて見ると共通項が分かりやすい。どちらの選手も年間を通して各地の大会に赴き、成績に応じたポイントが与えられる。テニスなら「ATPワールドツアー」、『ストV』なら「CAPCOM Pro Tour」に参加し、上位大会への布石としてポイントを稼ぐ。リアルスポーツとeスポーツは一見違うように見えて、競技シーンの構造、そして選手がかける労力は似通っている。
  モニターを一心に見つめ、手汗を物ともせずコントローラー(もしくはマウス)を握りこむ。己の指さばきに魂を注ぎ込むプロゲーマーは、まさにデジタル時代の先端を走るアスリートだ。彼らはeスポーツ大会で名声と賞金を勝ち取るため、一般的なプロスポーツ選手と同様、普段の生活スケジュールに練習が組み込まれている。加えて企業から公式に資金提供を受ける以上、プロゲーマーは勝利を渇望するだけでなく、競技シーンを生きる選手として誠意ある振る舞いを常に心がけて日々を過ごしている。

 対戦格闘ゲームを主戦場とするプロゲーマーは、同好の士を集めた上で、ゲーム機やゲーミングPCが置かれているeスポーツ施設やコミュニティスペースを貸し切り、情報収集や意見交換を兼ねて対戦会を開いているようだ。「一人で部屋に籠もり、誰とも離さずゲームに没頭する」というのはステレオタイプな考え方。もちろん実態はまちまちだが、実際のところは「強者で賑わうコミュニティへ加わり、そこで集めた情報を自らのプレースタイルの糧とする」傾向にある。
  別のゲームタイトルにおいても、基本的には個人練習と対戦会(練習試合)をセットでこなすプロゲーマーが多い。FPS(ファーストパーソンシューター)と呼ばれるジャンルでは、オンライン対戦の環境が賑わう深夜帯がゴールデンタイムとなっており、「日中を個人練習(人間が操作しないNPCを相手にひたすらトレーニング)に充てる」という人物も少なくない。
  FPSはチーム戦(3〜5人)が多いので、深夜帯になるとメンバーを揃えて本格的なチーム練習となる。他のプロゲーミングチームに呼びかけ、実戦と同じ環境で練習試合を行ったり、戦術を立案するアナリストによる指揮のもとで競合相手の戦い方を研究したりと、チーム全体の足並みを合わせた練習スタイルへと切り替わる。

 またチームの所属メンバーがシェアハウスで共同生活をおくっているケース(俗に言うゲーミングハウス)だと、肩を並べて一緒にプレイする機会が必然的に多くなる。寝食を共にしてトレーニングに励むプロゲーマーたちの姿は、寮に住んで夜遅くまで部活動に勤しむスポーツ強豪校の学生、もしくはオフシーズンに開かれるキャンプで実力を高め合うプロ野球選手に近いかもしれない。

 数十億〜数百億という巨大な規模感で発展を遂げるeスポーツシーン。長い夜が明けたばかりの国内市場も含め、今後どのような隆盛を見せてくれるのか注目だ。

文●龍田優貴

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