スモールラインナップの限界?ロケッツを強豪に押し上げたダントーニHCがチームを去った理由

スモールラインナップの限界?ロケッツを強豪に押し上げたダントーニHCがチームを去った理由

ダントーニは2016年にロケッツのHCに就任。ハーデンを中心にチームを強豪に押し上げたが、今年のプレーオフ敗退後に退団を発表した。(C)Getty Images

ウエスタン・カンファレンス準決勝でヒューストン・ロケッツがロサンゼルス・レイカーズに1勝4敗で敗れ、シーズンを終えた。

 プレーオフ終了後、ロケッツはマイク・ダントーニ・ヘッドコーチの退団を発表。来季に向け、新たな指揮官を探すことになった。

「マイクはそういう男なんだ。今までも同じようにチームを移ってきた」と語るのはゴールデンステイト・ウォリアーズでアシスタントコーチを務めるロン・アダムズだ。

 2016年にHCに就任したダントーニは、ジェームズ・ハーデンという最強スコアラーを中心に、ロケッツをリーグ最高級のオフェンシブチームに作り上げた。しかし、プレーオフでの最高成績はカンファレンス決勝進出(2018年)。過去にフェニックス・サンズやニューヨーク・ニックスでも指揮を執った経験のあるダントーニが、16年間の監督キャリアで積み上げた勝利数は672。これは現役では4位で、NBAのHCとして十分に優秀な部類に入るが、それを良しとしないのがダントーニという男だとアダムズは言う。

 主力のハーデンとラッセル・ウエストブルックは来季以降もダントーニに指揮を執って欲しかったとコメントしているが、ロケッツオーナーのティルマン・フィルティータはダントーニとボタンの掛け違えをしてしまっていたようだ。
  ダントーニ自身は辞任の理由を明らかにしていないが、フィルティータは来季も彼がチームに残留してくれると思い込み、再契約の話や契約延長などの場を設けようとしなかったという。

「マイクに限らず、決断の時は本人にしか分からないものだし、真相が明かされることはほとんどない。私自身、コーチ人生でHCから進退についての相談を受けたことがないからね。今回のマイクの辞任の理由も分からないけど、ハーデンやウエストブルックにとって自由にプレーさせてもらえるダントーニは最高のコーチだったに違いない。ただそれとは裏腹にマイクはそういった環境下で勝利する解決策を見つけるのに疲れていたようにも感じた」(アダムズ)

 推測するに、ダントーニは今季限りでロケッツを去るつもりだったのではないだろうか。チームは今年2月にセンターのクリント・カペラを放出し、シュート力と守備力に秀でたロバート・コビントンを獲得したが、ハーデンとウエストブルックの高額かつ長期の契約状況を鑑みれば、さらにロースターに手を加えるのは難しかった。ダントーニには現状を踏まえてHCとしての戦略、作戦、戦術を今までと同じように来季も展開していけるのか疑問を持っていたのかもしれない。
  ファーストラウンドでロケッツと対戦したオクラホマシティー・サンダーのクリス・ポールは、「多くの場面でスカウティングができていたからハーデンのオフェンスのパターンと、そうでない時のパターンを守ることに自信はあった」と語っていた。

 ロケッツのオフェンスはハーデンがドリブルで攻め込み、ディフェンスの状況を見てシュート、もしくはパスを出す。このシステムは1人の選手が長くボールを保持するため、残りの4人の選手の動きが重要になる。しかし、オフボール時のウエストブルックはその場に止まって傍観するか、パスを待つことがほとんどだった。

 ウエストブルックが動かないことで、残る3人も有効にポジションチェンジができず悪循環を生んでいた。それはハーデンも同様で、2人がボールを保持しないシチュエーションでは彼らがまったく動かず、オフェンスのリズムはどんどん悪化。レイカーズとのシリーズ後半では自ら“1対5”の状況を作り出してしまっていた。
  ダントーニは4年間ハーデンと共闘して今回の結論に至った。60歳の指揮官はすべての年でチームを上位に導き、優勝候補に挙げられる強豪に育てあげた。それでも何かを変えてまた前進しなければならない時は来る。

 アダムズは語る。

「NBAで変化の時というのは、人を入れ替える時という意味だ。人が変わらなければチームは変わらない。同じ人たちで変えようとしても、本質は変わらない」

 スモールラインナップと3ポイントを多用するダントーニの退団により、来季のロケッツは大きく変わることになるだろう。

 ただ、ハーデンとウエストブルックという個性的な2人を掌握しマネージメントできるほどの力量を持つコーチが簡単に見つかるとは思えない。“適任”だったダントーニの後を継ぐHC選びは、チームにとってオフの補強以上に極めて重要になる。

文●北舘洋一郎

【PHOTO】NBA最強の選手は誰だ?識者8人が選んだ21世紀の「ベストプレーヤートップ10」を厳選ショットで紹介!

関連記事(外部サイト)