【欧州バスケ界の“仁義なき戦い”・前編】FIBAヨーロッパの暗躍により、ユーロリーグとBCL、欧州にふたつのコンペティションが誕生

【欧州バスケ界の“仁義なき戦い”・前編】FIBAヨーロッパの暗躍により、ユーロリーグとBCL、欧州にふたつのコンペティションが誕生

欧州にあるもうひとつのコンペティション、BCL。ユーロリーグに比べ知名度は今ひとつだが、そもそもなぜユーロリーグがあるにもかかわらず創設と相成ったのか。(C)Getty Images

“バスケットボール・チャンピオンズリーグのファイナル8、9月30日からアテネで開催!”

 これを聞いて、「お!いよいよか!」「今年はどうなる?」などと胸を躍らせる人は、それほど多くないだろう。

 そもそも、バスケットボール・チャンピオンズリーグの存在自体、知らない人が大半のはずだ。そしてそういった現状は、開催地から遠く離れた日本だけでなく、その舞台となるヨーロッパでもあまり変わらない。

 バスケットボール・チャンピオンズリーグ、通称BCLは、2016−17シーズンから始まった新しいコンペティションだ。主催しているのは、国際バスケットボール連盟FIBAのヨーロッパ部門であるFIBAヨーロッパ。名前から想像できるように、サッカーのチャンピオンズリーグをモデルとした、“クラブ間のハイレベルなコンペティション”というのが、この大会の構想だ。
  と、そこで沸くのが「それならユーロリーグがあるのに、なんでいまさら?」という疑問。ユーロリーグはもはや、バスケットボール界ではNBAに次ぐレベルとして世界中で定着している。

 しかしそのユーロリーグこそが、かつてはFIBAヨーロッパが主催する大会だった。創立は1958年。当時はFIBAヨーロピアン・チャンピオンズカップと呼ばれ、1991年からはFIBAヨーロピアンリーグと名称を変更。その後はFIBAユーロリーグとも呼ばれていた。

 そんななか、2000年に改革が起きる。オリンピアコス、レアル・マドリー、バルセロナ、タウ・セラミカといった欧州を代表するビッグクラブが中心となって“ユーロリーグ・バスケットボール”というプライベートカンパニーを立ち上げ、独自のコンペティションをスタートさせたのだ。

 新会社は、2000−01シーズンからスタートさせたその新たなコンペティションに、“ユーロリーグ”という名称を使った。FIBAがこの名前を商標登録していなかったため、法的な問題がなかったからだ。よって表向きは、こちらの新生ユーロリーグが、あたかもそれまでのコンペティションを継続している大会のように見えた。
  一方、パナシナイコスやマッカビ・テルアビブ、CSKAモスクワなど、旧体制側に残ることを主張したクラブもあった。よってFIBAヨーロッパは、“スープロリーグ(SuproLeague)”と名称を変えてコンペティションを続行。2000−01シーズンはふたつの大会が存在することになり、スープロリーグはマッカビ、新ユーロリーグはボローニャと、欧州チャンピオンが2チーム誕生した。

 ちなみに新生ユーロリーグの初代チャンピオン、ボローニャを率いていたのはエットーレ・メッシーナ。初代MVPは、サンアントニオ・スパーズに羽ばたく前のマヌ・ジノビリだった。

 欧州最高峰を掲げるコンペティションがふたつ存在するのは誰にとっても得策でないことは明らかであり、話し合いの末、スープロリーグは消滅。ユーロリーグの存続が決定すると同時に、それまでの歴史も受け継ぐことになった。現在、ユーロリーグで最多優勝を誇るのはレアル・マドリー(10回)だが、これはFIBAヨーロッパ時代の成績も含めたもので、その他のオールタイムレコードも同様である。
  しかしFIBAヨーロッパは、おとなしく指を咥えてユーロリーグの隆盛を見守っていたわけではなかった。彼らは着々と、欧州最高峰リーグの運営権を奪い返そうと計画を練っていたのだ。そうして浮上したのが“バスケットボール・チャンピオンズリーグ構想”である。

 2015年、FIBAヨーロッパは、ユーロリーグを主催するユーロリーグ・バスケットボールカンパニーの株主であり、ライセンスを持つ11クラブ(レアル・マドリー、バルセロナ、バスコニア、CSKAモスクワ、アルマーニ・ミラノ、ジャルギリス・カウナス、オリンピアコス、パナシナイコス、マッカビ・テルアビブ、フェネルバフチェ、アナドルー・エフェス)のうちの8クラブに「BCLに乗り換えないか」と持ちかけた。

 しかし誘いに応じるクラブはなく、それどころかちょうど同じ時期、ユーロリーグ側はプロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手も所属する世界最大級のスポーツマネジメント会社、IMGとパートナー契約を結び、さらなるパワーアップを図っていた。
  そこでFIBAヨーロッパが打った手は、各国のバスケットボール連盟に圧力をかけることだった。「ユーロリーグ側をサポートするのであれば、2017年のユーロバスケットへの出場資格を剥奪する可能性がある」と、スペイン、ギリシャ、ロシア、リトアニア、トルコ、セルビア、スロベニアなど、14の強豪国に通達したのだ。

 自国の代表チームが国際トーナメントに出場できないとなれば一大事である。ロシアバスケ連盟会長のアンドレイ・キリレンコ(元ユタ・ジャズほか)をはじめ、各国の連盟はやむなく「ユーロリーグに参戦するクラブは、国内リーグから除籍する」という決断を下したが、スペインのように、自国クラブのユーロリーグ参戦を後押ししたいリーグと、代表にとって不利な状況を避けたい連盟との間に軋轢が生まれた国も少なくなかった。

 このやり方だけを見れば、FIBA側はあこぎだと思うかもしれないが、そもそもユーロリーグは彼らが主催していたイベントだ。それを一部のビッグチームが、自分たちにとって理想的なコンペティションを作るべく独立したのが現在の形である。
  ただ、絶対的な成功の要素となったのは、このイベントがクラブ側だけに恩恵をもたらしたのではなく、ハイレベルでエキサイティングなゲームが観られるという面で、ファンたちをおおいに魅了した、という点だろう。だから独立後の新生ユーロリーグは、わずか20年でここまでグラマラスなコンペティションに成長できたのだ。

 結局、その後の話し合いで落としどころを見つけ、代表チームの国際トーナメント出場資格の剥奪といった事態は免れた。そしてその“落としどころ”のひとつが、ユーロリーグに次ぐカテゴリーという位置付けでの、BCLの設立だった。

 ユーロリーグのアンダーカテゴリーにはユーロカップ(旧ULEBカップ)があるが、FIBAヨーロッパはユーロカップ常連クラブに(またまた連盟に圧力をかけて)BCLへの参戦を促した。そのため、一時はレギュラーシーズンに48チームが参加するまで拡大していたユーロカップの規模は、2016−17シーズンには半数以下の20チーム(現在は24チーム)に縮小されることになった。(後編に続く)

文●小川由紀子

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