大物はハワード1人も、スミス、ブヤチッチなどコート外で話題を振りまいた脇役を輩出した2004年【NBAドラフト史】

大物はハワード1人も、スミス、ブヤチッチなどコート外で話題を振りまいた脇役を輩出した2004年【NBAドラフト史】

ハワード(1位/中央)、オカフォー(2位/左)、リビングストン(4位/右)のうち、オールスター選手に成長したのはハワードのみだった。(C)Getty Images

■外国人選手の指名数は過去最多個性的な選手も多かった04年組

 史上最も多くの外国人選手が指名されたのが、2016年のNBAドラフトである。フランスから選ばれた5人は、1度のドラフトにおける国別の外国人選手数として歴代最多。全60人の半数近くを占める28人の外国人選手が指名され、その割合46.7%はちょっと衝撃的な数字だ。

 元祖ドリームチームが世界を席巻し、NBA国際化元年とされる1992年のドラフト(1位シャキール・オニール)で指名された外国人選手の数が、わずか2人だったことを考えると、まったくもって隔世の感を禁じ得ない。

 2016年のドラフトに記録を塗り替えられるまで、最も多くの外国人選手を輩出した年が、意外にもその10年以上も前の2004年だった。38人の外国人選手がアーリーエントリーを申請し、最終的に25人が指名。全59人中25人が外国籍で、全体の42.4%を占めている。

 今その選手たちのリストを見てみると、バラエティの豊富さに改めて驚きを覚える。そして、それら外国人選手に負けず劣らず、母国アメリカ人選手も多種多彩だった。スター選手の数こそ乏しいものの、なかなか香ばしいメンツが顔を揃えている。

 この年のドラフト・ロッタリーで、最も高い1位指名権獲得率を手にしていたのは、レギュラーシーズン最下位だったマジック(25%)。2番目がブルズ(20%)、3番目がウィザーズ(15.7%)、それにクリッパーズ(10.5%)とホークス(10.4%)が続いた。
  5月26日に行なわれたロッタリーの結果、1位指名権は珍しく順当に最高確率を持っていたマジックの手に渡り、2位にはクリッパーズがジャンプアップ、ブルズはなんとか3位を確保した。4位は、翌シーズンからリーグに加わるボブキャッツ(現ホーネッツ)に与えられることが事前に決まっており、5位はウィザーズに確定する。

■2人の1位指名候補のなかから選ばれたのは高校生のハワード

 ドラフト本番の5日前、4位のボブキャッツが動いた。持っていた4位と33位の指名権を、クリッパーズの2位指名権とトレード。ビッグマンを必要としていたボブキャッツが、ガードの補強を検討していたクリッパーズに話を持ちかけ、上手くまとめあげたのだった。

 クリッパーズが狙いを定めていたのは、ピオリア・セントラル高の長身PG、ショーン・リビングストン。この年の1位と2位の選手は、2人のビッグマンに絞られていた。3位のブルズは過去2年連続でPGを指名しており(前年にカーク・ハインリック、前々年にジェイ・ウィリアムズ)、3年連続でのPG上位指名はないと踏んだうえで、リビングストンが4位まで間違いなく残ると判断したのだった。

 1位指名候補の1人は、リビングストンと並び当時全米屈指の高校生と目されていた、ジョージア州アトランタにあるサウスウエスト・アトランタ・クリスチャン・アカデミー高のドワイト・ハワード。
  母のシェリルは、ハワードを産むまで7人連続で流産の憂き目に遭っていたこともあり、ようやく生まれた我が子の体調を懸念していたが、そんな心配をよそにハワードはすくすくと育った。中学1年の頃、紙に人生における7つのゴール?というリストを書き、その中のひとつが、「NBAドラフトで1位指名される」というものだった。

 父のドワイトSr.は、州の警察官を務める傍ら、高校の体育教師も兼務しており、父が教えていた学校にハワードは入学する。そこには全米でも指折りのバスケットボール・プログラムがあり、恵まれた環境のなか、ハワードは稀有な才能を順調に伸ばしていった。最初はPGでプレーしていたが、身長が伸びるにつれSF、PF、Cとポジションも変遷した。

 高校最終学年の成績は、平均25点、18リバウンド、8ブロック、3.5アシストという驚異的なもの。数々の全米最優秀選手賞を受賞し、その名を全米に轟かせた。最終学年になる前から、高校の体育館には有名大学やプロのスカウトが大挙して詰めかけていたという。当時はまだ高校から直接プロ入りすることが可能であり、ケビン・ガーネットの影響を強く受けていたハワードは、高校から直接プロ入りすることを決意。
  もう1人の1位指名候補は、コネティカット大3年のPF/C、エメカ・オカフォー。ナイジェリア人の両親がアメリカに渡り最初に生んだ子で、本名はチュクエメカ・ンドゥブイシ・オカフォー。テキサス州ヒューストンに生まれ、子どもの頃にオクラホマ州バートレスビルに引っ越し、ベルエア高でジョン・ルーカス三世(元ウルブズほか)と一緒にプレーした。コネティカット大に進学すると、持ち前のディフェンス力を武器にひときわ堅実なプレーを披露。

 とりわけブロックショットの能力は傑出しており、他を寄せ付けなかった。2年連続でNCAAのブロック王に輝き、3年時には腰の故障に悩まされながらもチームをNCAAトーナメント優勝へと導く。トーナメントの最優秀選手に選ばれ、さらにはカレッジのコーチたちが選ぶ年間最優秀守備選手賞も受賞した。コネティカット大のチームメイトからは、ベン・ゴードン(ブルズほか)をはじめ5人がNBA入りしている

 オカフォーが持つもうひとつの際立った特徴が、その真面目さや勤勉さだった。スポーツだけでなく、学業でも一切手を抜かず、ファイナンスの学位を大学3年間で取得し、卒業資格を得たというのだから驚きだ。一般的に、トップアスリートの多くが勉強を苦手とするなか、これだけ高いレベルで文武両道を体現したオカフォーのような例は稀だろう。その勤勉さと真面目さは、彼のプレースタイルにも如実に反映されている。
  キャラクターもプレースタイルも対照的な2人のドラ1候補。調べてみると、下馬評ではオカフォーの1位指名を予想する声が多かったようだ。例えば、全米で指折りのカレッジバスケットボール・アナリスト、ジェイ・ベイルは当時nba.comのコラムのなかで、「1位指名は明らかにオカフォーだろう。その理由は、彼から何を得ることができるか、すでにはっきりとわかっているからだ」と述べている。

 6月24日、マディソンスクエア・ガーデンで開催されたNBAドラフトで、1位の栄冠を手にしたのは、大方の予想に反しハワードだった。デイビッド・スターンNBAコミッショナーがハワードの名前を読み上げると、会場には喝采よりもブーイングの声が大きく鳴り響いた。コネティカット大からマンハッタンまでは車で数時間、ハスキーズ(コネティカット大の愛称)の熱狂的ファンが大挙して押しかけたのかもしれないが、それだけではなく多くのNBAファンはオカフォーの1位指名を期待していたのだろう。

 前年のレブロン・ジェームズに続き、2年連続でのプレップ・トゥ・プロ(高校から直接NBA入りすること)1位選手の誕生である。その2年前はクワミ・ブラウンが1位指名されており、今はなきプレップ・トゥ・プロのムーブメントが隆盛を極めていた時代でもあった。
  2位のボブキャッツはオカフォーを、続いて3位のブルズはゴードン(コネティカット大3年)、4位のクリッパーズはリビングストン、5位のウィザーズはデビン・ハリス(ウィスコンシン大3年)をそれぞれ指名。

 ハワード獲得の決断を下したマジック首脳陣の1人、上級副社長のパット・ウィリアムズは、1992年のシャキール・オニール、93年のクリス・ウェバー、そして2004年のハワードと、わずか12年の間に3度も1位指名権を引き当てた強運の持ち主だ。ラッキーアイテムはラビットフット(ウサギの足のお守り)と四葉のクローバー。ミスター・ロッタリー?というニックネームを持つ彼が、ハワードの1位指名に関し、次のように述べている。

「オカフォーは2位で指名され、カレッジにおける勝者であることを証明した。ハワードは将来有望な若者だ。ヤングスターをスルーしちゃいけない、そう私は過去から学んだよ。後々苦い思いをするかもしれないからね。コビー(ブライアント)を12チームがパスした。ジャーメイン・オニールを16チームが、(ケビン)ガーネットを4チームがパスしている。(パスしたチームは)後味が良くないだろう。だから、気をつけなくちゃいけない。(若い選手の選別については)よくよく注意を払うんだ」
 ■コート外で話題を振りまいた下位指名の脇役選手たち

 NBAドラフト関連の調べ物をしていると、「〇年のドラフトを今やり直すとすれば」といった内容の企画ページに出くわすことがままある。ドラフト前の評価とプロ入り後の働きを比較し、指名順の妥当性についての検証や解説を真面目に行なっているものから、ジョークや嫌味でネタにしているものまで、方向性は様々だ。もちろん、選手がプロ入り後に負ったケガなど仕方のない部分もあるゆえ、新たな順位はそれほど大きな意味を持たないが、ひとつの目安として見る分には興味深い。

 大手ドラフトサイトやバスケ専門サイトのなかに、2004年の再ドラフトを掲載しているところがいくつかある。執筆した時期によって順位は違ってくるだろうが、トップ10はこんな感じだ(括弧内の数字は実際の指名順位)。

 1位ハワード(1)、2位アンドレ・イグダーラ(9)、3位アル・ジェファーソン(15)、4位ルオル・デン(7)、5位ジョシュ・スミス(17)、6位ケビン・マーティン(26)、7位エメカ・オカフォー(2)、8位アンダーソン・ヴァレジャオ(30)、9位トニー・アレン(25)、10位ジャミーア・ネルソン(20)。

 このリストを見る限り、1巡目後半に指名された選手の活躍が目立つ。2004年のドラフト組は、少々期待外れに終わった上位指名選手と、期待以上の活躍を見せた下位選手のコントラストが目についた、そんな年だったようだ。
  また、この年のドラフト組からは、コート外で話題を振りまいた選手も何人か出現している。それも大物選手ではなく、コートでは脇役的な選手が主役を演じているところが味わい深い。

 女子プロテニス界一の美女、マリア・シャラポワと婚約するも、2年で破局を迎えたサーシャ・ブヤチッチ(27位)。お騒がせセレブのキム・カーダシアンと1000万ドルもの費用をかけて結婚式を挙げながら、72日間というスピード離婚を決め、マヌケっぷりを世に晒したクリス・ハンフリーズ(14位)。レブロン・ジェームズの母親との性的関係が取り沙汰された、痛すぎるデロンテ・ウエスト(24位)。最低なのが、無謀運転による交通事故で同乗者を死に至らしめたJR・スミス(18位)。

 そして極めつけは、差し押さえられた自宅が新たな買い主の手に渡ったというのに、立ち退きを拒否して籠城を続け、最後には訴えられたロバート・スウィフト(12位)。その後も違法ショットガンの所持や、武装しての押し込み強盗、麻薬所持などで繰り返し逮捕されている。純朴そうな坊主頭の白人青年が、タトゥーだらけのワイルドな風貌へと変わっていき、ヘビーな犯罪を重ねていく様に「いったいどうしちゃったんだ?」と思っていたが、まさかここまでおかしくなるとは思ってもいなかった。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2017年2月号掲載原稿に加筆・修正。

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