“相思相愛”のピストンズから7位指名を受けたキリアン・ヘイズ。レジェンドOBトーマスも入団を歓迎

“相思相愛”のピストンズから7位指名を受けたキリアン・ヘイズ。レジェンドOBトーマスも入団を歓迎

フランス人史上最高位指名を受けたヘイズ。はたして鮮烈デビューを飾れるか?(C)Getty Images

11月18日に行なわれた2020年のNBAドラフトで、デトロイト・ピストンズから1巡目7位指名を受けたキリアン・ヘイズ。これは今ドラフトのヨーロッパ人選手最高位、そして2017年にニューヨーク・ニックスから1巡目8位で指名されたフランク・ニリキナを上回る、フランス人選手の歴代最高位となった。

 アダム・シルバー・コミッショナーから名前を呼ばれるのを、ヘイズは生まれ故郷であるフロリダのホテルの一室で、両親とともに聞いていた。「名前を呼ばれた時は、一生忘れられない瞬間になった。周りの人たちも、みんなが喜んで興奮していたよ。なんだかもの凄くユニークな感覚だった」というのが、喜びの第一声だ。
  ドラフトの真っ最中には、サンアントニオ・スパーズのレジェンドOB、マヌ・ジノビリから電話がかかってくる嬉しいサプライズもあった。これはNBAのスポンサー企画だったが、ジノビリは同じ左利きなこともあって、ヘイズにとっては憧れの存在。「チームメイトに同胞の選手がいるのは、絶対にプラスになる。いろいろなことを乗り越える上でも助けになってくれるはずだ。お互いに助け合える、いい関係になるだろう」といったことを、ジノビリは若き後輩にアドバイスしたという。

 “同胞の選手”とは、ヘイズの1歳上であり、昨ドラフトで1巡目15位指名でピストンズに入団したセコウ・ドゥンブヤ。2人は2018−19シーズンにフランスリーグで敵として戦っただけでなく、フランス代表でもともに過ごした友人同士でもある。ドゥンブヤからは歓迎の絵文字が届いたそうで、ヘイズは「すぐ行くよ!」とフランス語で返事を返したそうだ。

 ちなみに、ジノビリの盟友で、ヘイズにとっては母国の大先輩であるトニー・パーカーからも、ドラフトの前にインスタグラムのDMで突然メッセージが届いたという。「今度話そう。いろいろアドバイスもしたい」と書かれていたそうで、嬉しい驚きだったとヘイズは『The Players' Tribune』へ寄稿したコラムで綴っている。
  ヘイズにとって、デトロイトは第一希望だった。彼のエージェントが、出身クラブであるショレ・バスケットの地元紙『ウエスト・フランス』紙に語ったところでは、その理由の第一に、いくつかのフランチャイズのなかでもっともプレータイムを確約してくれたことを挙げている。

 ヘイズ陣営が描くキャリアプランは、ルーキーイヤーからしっかりプレーできる状況を実現することだった。そのため、今年のドラフトエントリーを目標に3年計画を立て、2017−18シーズンにプロデビュー。そしてアメリカに渡る直前の3年目には、欧州カップ戦でレギュラーとしてプレーすることをプランの最終段階に設定していた。“NBAで成功しているヨーロッパ出身のプロスペクトは、アメリカに渡る前に欧州のクラブですでに責任ある役割を担っていた”という前例に基づいたプランニングだ。
  ただ、プロデビューしたショレ・バスケットで3年間をまっとうするのが理想だったが、欧州のカップ戦出場が叶わなかったため、ドイツのウルム・ラティオファームへ移籍。そこで計画どおり、ユーロカップ10試合にすべてスターティングガードとして出場する。チームは1勝9敗に終わりレギュラーシーズンで敗退したものの、平均12.8点、アシスト数はチームハイの6.2と最年少ながら司令塔役を果たし、プロとしての自覚も養われた。

 しかし、ヘイズの心がデトロイトに大きく傾いたのは、プレータイムの確約だけでなく、フロントやコーチ陣と対面したときのフィーリングだったと代理人のヤン・バリクズーは語っている。

「バスケットボールの世界では、とりわけガードとHC(ヘッドコーチ)の関係性は重要だ。デトロイトが彼を選んだのは理由があってのこと。彼らと会談した際の雰囲気もとても自然だった。いつもは寡黙なキリアンもよく話していて、コーチとの間にも絆が芽生えていたんだ。彼らが帰ったあとキリアンは言っていた。『確信したよ。僕はデトロイトに行く。彼(ケイシーHC)が僕をハグしたときの感触でわかったんだ!』とね」
  それでもデトロイト側は事前に指名を確約することはせず、さらにドラフトの数日前には“指名権がトレードされてデトロイトより先にヘイズの指名をするフランチャイズがあるかもしれない”という情報も入ったことから、当日はヒヤヒヤしながら名前が呼ばれるのを待っていたという。ゆえに、指名を受けた瞬間の表情は、安堵と嬉しさが入り混じった素の思いが表われたものだった。

 ピストンズのレジェンドOB、アイザイア・トーマスは『NBA TV』で「(ヘイズのプレーは)ビデオで観ただけだが、彼はピストンズが求めているタイプの選手だ。ボールハンドリングやパスの供給が上手く、サイズもある。それにポテシャルも感じるね。デトロイトの街はヴァーサタイルなプレーヤーを歓迎する。デリック・ローズのような、素晴らしいワーク・エシックをもつベテランの指導を受けられるというのは、ヘイズにとってパーフェクトな状況だ」とコメント。

 ヘイズも「子どもの頃、よく彼(ローズ)のビデオを観ていた」と語り「このリーグで長く一線で活躍している彼から、NBAでのプレーについて多くのものを学ぶことができる。彼のようなチームメイト、そしてメンターを持てるのはとてつもなく光栄だ」と期待を膨らませている。
  ローズの方も、19歳の新人ガードとの対面を楽しみにしているらしく、オフの間ヘイズの練習パートナーを務めたピストンズOBのウィル・バイナムに電話して、ヘイズについて情報収集していたらしい。

 ルーキーにとって、来季は厳しいシーズンとなるだろう。通常であれば、夏にサマーリーグでNBAの水に慣れ、その後2、3か月の自主トレ期間を経てフランチャイズのトレーニングキャンプを迎える、という流れだが、イレギュラーな来季は、12月1日からトレーニングキャンプがスタートする。ヘイズも来週にはデトロイト入りして、キャンプに備える予定だ。

 新型コロナウイルスの影響で試合が中断になった3月中旬から、ヘイズは家族の住まいがあるオーランドを拠点に自主トレを開始した。
  特に重点を置いたのは、欧州では通用するが、NBAでは凡庸レベルのフィジカルの強化。6月からは徹底して追い込み、午前中はフィジカルトレーニング、午後からは、オーランド拠点のNBA選手たちと、1オン1や3オン3などのピックアップゲームに励んだ。さらにはLAにも遠征して、ロサンゼルス・クリッパーズのパトリック・ベバリーからもポイントガードの特訓を受けるなど、自主トレ期間中からNBAへ対応するための練習を重ねてきた。
 「8か月もコートから離れているから、早く試合がしたくてウズウズしている。まずはチームメイトやコーチたちに、自分は頼りにできる選手だということを証明したい」

 フロリダ生まれフランス育ちの“ハイブリッド・ルーキー”の、鮮烈なNBAデビューに期待したい。

文●小川由紀子

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