サッカーだけじゃない!バスケでも強豪の地位を築くバイエルン、補強戦略はNBAの“Gリーグ化”?

サッカーだけじゃない!バスケでも強豪の地位を築くバイエルン、補強戦略はNBAの“Gリーグ化”?

欧州最高峰のユーロリーグで現在2位につけるバイエルン。NBAに定着できなかったボールドウィンらアメリカ人選手を重用し、好結果を収めている。(C)Getty Images

コロナ陽性者が多発したチームの試合が延期になるなど、混沌としている今季のユーロリーグで、一際勢いに乗っているのがドイツのバイエルン・ミュンヘンだ。第2節からクラブ史上初のユーロリーグ4連勝、10節を終えた時点で7勝3敗とバルセロナに次ぐ2位につけている。

 オフにヘッドコーチからロースターの主力まで刷新し、今季のバイエルンはフレッシュに新装開店といった感じで、選手の陣容はさながらNBAのGリーグのようでもある。

 チームの司令塔は、2016年のNBAドラフトでメンフィス・グリズリーズから17位で指名されたウェイド・ボールドウィン四世。16〜19年までグリズリーズとポートランド・トレイルブレイザーズでプレーしたものの、なかなかNBAに定着できず欧州に活躍の場を求めた24歳だ。
  ほかにもビッグマンのジュワン・ジョンソンは2011年のドラフトでニュージャージー(現ブルックリン)・ネッツから27位指名され、ボストン・セルティックスでデビューしたあとは複数のGリーグチームを渡り歩いた。センターのジェイレン・レイノルズも昨季は一時Gリーグのストックトン・キングスでプレーし、パワーフォワードのマルコム・トーマスはサンアントニオ・スパーズを含むNBA5球団とGリーグ4球団を経て、今季バイエルンに加わっている。

 第9節のアナドール・エフェス戦では、昨季の首位チーム相手に残り2分からの大逆転勝利。最終クォーターに一時は10点差をつけられたが、ボールドウィンのゲームメイクから猛攻を仕掛け、最後は3点差で白星を奪っている。

 彼らのように、NBAにはもう少し手が届かない、あるいは再起を志す準NBAクラスのアメリカ人選手を採用するのは、バイエルンの補強戦略でもある。

 サッカーでは泣く子も黙る欧州の超名門だが、バイエルンのバスケットボール部門がユーロリーグ常連となったのはここ最近のこと。1946年にクラブ設立後、50年代には国内強豪の一角をなし、54年と55年にブンデスリーガ(ドイツのトップリーグ)で2連覇したが、70年代に入ると2部リーグに降格するなど後退し、一時は表舞台からも消えていた。
  しかし2000年代の後半からバスケットボール部門を強化する方針を打ち出し、2011−12シーズン、ついに国内のトップリーグに復帰。当時首位を独占していたブローゼに追いつけ追い越せと強化に励み、復帰から3年目の13−14シーズン、59年ぶりにドイツの頂点に返り咲いた。そこからは欧州最高峰の舞台であるユーロリーグやユーロカップに毎年参戦し、ヨーロッパのエリート集団の一角を担っている。

 バイエルンが復活するにあたって強化の柱のひとつとなったのが、アメリカ人選手の重用だったわけだが、そもそもドイツリーグはイスラエルに次いでアメリカ人選手の数が多いことで知られる。外国人枠は、登録枠が12人の場合、6人がドイツパスポートを保持している選手、6人が外国籍選手、という『6+6ルール』を採用している。面白いのは、ロースターの人数が11人、10人、と減った場合に少なくなるのはドイツ人選手の数で、いずれの場合も外国籍選手の数は6人に据え置かれることだ。

 おのずと出場機会が得やすいことから、一昨季のデリック・ウィリアムズ(現バレンシア/スペイン)や昨季のグレッグ・モンロー(現ヒムキ/ロシア)のように、ドイツをヨーロッパでのキャリアの出発地点にする元NBA選手も近年増えている。
  出場機会とともに、もうひとつの大きな魅力は、責任ある役割を担えるチャンスがあること。スペインのレアル・マドリーやバルセロナ、ロシアのCSKAモスクワ、ギリシャの2強パナシナイコスやオリンピアコスといった欧州きっての強豪では、主要ポストは母国のトッププレーヤーたちが占め、アメリカから来た若手のチャンスは限られる。しかしバイエルンのようなクラブでは逆に、彼らはエース級として迎えられるのだ。

 現チームの司令塔であるボールドウィンがまさにその好例。彼はブレイザーズに所属していた昨年2月にクリーブランド・キャバリアーズへトレードされると、その後もヒューストン・ロケッツ、インディアナ・ペイサーズと数日間のうちに3度トレードされ、最終的にペイサーズから解雇されるという経験を味わった。
  夏にギリシャに渡ってオリンピアコスに入団したが、タイミングの悪いことに、このシーズンはリーグ内で揉め事があり、トップチームはユーロリーグのみ、国内リーグはBチームが2部リーグに参戦という混沌とした時期で、ヘッドコーチも2度交代。欧州というまったく新しい場所での挑戦を始めたボールドウィンにとって、理想とは対照的な環境だった。

 しかし今季、バイエルンに移籍してからはフロアリーダーとして重責を託され、ユーロリーグでもここまで全10試合に先発出場。平均13.9点、4.1アシストとチームトップクラスの数字をあげ、上位に導く立役者として注目度も高まっている。

 彼のように、伸び盛りの若手選手が責任あるポストを与えられて成長するチャンスを得られる点でも、バイエルンのようなクラブは適している。それに伴い、ゲームの質が上がり、強豪相手に競った試合経験を重ねることで、自国選手のパフォーマンスも向上していくというWin-Winの効果も望めるのだ。
  現在24歳のボールドウィンは、NBAへの再挑戦を見据えている。ただ「その前に、僕は欧州で尊敬を勝ち得る選手になりたい」とも語る。

 欧州に渡ってくるアメリカ人選手はみな同じように、「自分の力を証明したい」という思いでチャレンジしているはずだ。そしてそういったハングリー精神は、そのまま今季のバイエルンのキャラクターを象徴している。前述のエフェス戦での逆転勝利や、敵地で同じように逆転した第4節のフェネルバフチェ戦など、強豪相手の試合ではいっそう闘志みなぎるプレーで勝利を重ねている。

 レギュラーシーズン、先はまだ長いが、彼らの闘魂が行き着く先がどこになるのか楽しみに見守りたい。

文●小川由紀子
 

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