「デビュー戦としては満足」注目の村元&高橋組はアイスダンスで2位発進。女子は坂本花織、男子は鍵山優真がSP首位に【NHK杯】

「デビュー戦としては満足」注目の村元&高橋組はアイスダンスで2位発進。女子は坂本花織、男子は鍵山優真がSP首位に【NHK杯】

アイスダンスデビュー戦を迎えた村元&高橋組。初の演技を64.15点で滑り終えた。(C)Getty Images

フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終第6戦、NHK杯が27日、大阪の東和楽品RACTABドームで開幕。今大会で最も注目を集めたアイスダンスに、今年1月に男子シングルからカップル競技に転向して平昌五輪代表の村元哉中とパートナーを組んだ橋大輔が初登場した。デビュー戦となったリズムダンス(RD)では映画「マスク」の主人公だったジム・キャリーばりに鮮やかな黄色いズボンを着た橋が、わずか10か月で習得したアイスダンス特有のスケート靴でスケーティングやリフト、ターンなどを披露。シングル時代から培った抜群の表現力も見せてコミカルな動きを織り交ぜながら、「(アイスダンス経験豊富で)引っ張ってくれるライバル」という村元とアイコンタクトをしながら息の合ったダンスで観客を引き込んで見せた。初陣の結果は64.15点の2位発進だった。

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 まずまずの出来にほっとした表情を見せた橋は「本番は落ち着いて、少し取りこぼしはあったが大きなミスがなかったので上出来だった。演技後に、僕がリフトで脚を持ち損ねたことを哉中ちゃんに『ごめん』と言いました(笑)。とりあえず初戦のスタートを切れて一安心という気持ちもありますし、レベルの取りこぼしがあったのでアイスダンスの難しさを痛感した。一安心とこれからに向けたやる気を感じています」と演技を回顧。
  橋をリードする村元も「少しずつレベルの取りこぼしがあったので、それを改善すると結構いい得点につながると分かったので、デビュー戦としては満足で最初から最後まで楽しく滑れました。64点は自信につながるいい点数が出たと思います。フリーダンスは得点を気にせず自分たちが練習してきたことをお客さんの前で出して、RDとはがらっと違ったクラシックバレエの『ラ・バヤデール』を素敵に滑れたらいいなと思います」と意気込んでいた。

 アイスダンスのRDで首位に立ったのは、70.76点をマークした小松原美里、ティム・コレト組。夫婦カップルの二人は、躍動感のある息の合ったダンスで映画「ドリームガールズ」を表現して好得点を引き出した。大会前にコレトは日本国籍を取得し、「日本人」になって初めての大会となった。演技を終えて小松原は「今回は久しぶりに観客の皆様に包まれながら演技ができて安心しました。二人とも落ち着いて滑っていたと思います。これから点数をどんどん出していく余白はあるかな。フリーダンスは課題を修正してよりよい演技ができるようにしたい」と話していた。
  女子シングルのショートプログラム(SP)では、平昌五輪代表の坂本花織が75.60点で首位発進。最終滑走者としてほぼ完ぺきな演技で締めくくった直後、どや顔の笑顔とともに力強い両手ガッツポーズが飛び出した。初出場のNHK杯の目標は、ずばり初優勝。そのために、SPでは約5年ぶりという3回転ルッツを跳び、基礎点が1.1倍になる演技後半には3回転フリップ+3回転トーループを成功させるなど自己最高のジャンプ構成を組んだ。

 ジャンプのGOE加点も狙い通りに引き出した坂本。「応援が曲よりも聞こえてきて、すごく気持ちが盛り上がった。試合ってこんな感じやなと改めて思いました。大きな舞台でこの構成で成功できたのは自信になります。この構成でやって良かったと思いますし、全日本選手権に向けて前向きな気持ちでできると思います」と会心の出来に満足そうだった。
  トップの坂本を追いかけるのは、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)という武器をあともう少しで習得しようとしている樋口新葉だ。今大会では、初めてSPで大技に挑戦したが、転倒して成功とはならなかった。それでも、失敗を引きずることなく、その後は昨季と同じプログラム「バード・セット・フリー」をより洗練された演技でまとめ、69.71点で2位。大技習得まであと一歩の樋口は「SPでトリプルアクセルを跳んだのは、やっぱり点数を取るため。1週間前から入れて練習してきた。今日の試合は正直、歓声も拍手も聞こえないくらい、緊張と集中していた」と気合いの演技を苦笑いで振り返っていた。

 2年前のGPスケートカナダで2位の実力を持つ山下真瑚は67.56点で3位につけ、4位には1番滑走のプレッシャーをはねのけて堂々の演技を披露した全日本ジュニア女王の松生理乃が65.74点と好スタート。2016年世界ジュニア女王の本田真凜は、シニアデビューの平昌五輪シーズンで使ったお気に入りのナンバー「The Giving」の曲に乗って紫の衣装を身に纏い、可憐な演技を披露したが58.30点の9位と出遅れた。優勝候補のユ・ヨン(韓国)は武器のトリプルアクセルと3回転ルッツで連続転倒して得点が伸びず、最下位スタートとなった。
  男子SPでは、今季シニアデビューしたユース五輪王者の鍵山優真がシニアGPシリーズ大会の初陣で87.26点をマークして首位発進。鍵山と同い年で優勝候補の一角と目されていた、昨季のジュニアGPファイナル覇者の佐藤駿はジャンプでミスを連発して72.04点の7位と出遅れた形となった。

 2022年北京五輪代表を目指す鍵山は、飛躍のデビューシーズンにすべく、今季から海外の振付師で著名なローリー・ニコル氏にプログラムを作ってもらった。この日のSP「Vocussion」では小刻みなテンポの細かい音をしっかりと捉えながら、持ち味の表現力を発揮。得点源となるジャンプでは冒頭に4回転サルコー+3回転トーループの連続ジャンプを鮮やかに跳び、続く4回転トーループも安定感抜群のキレの良さで成功させた。その勢いに乗って最後のトリプルアクセルも決めたかったが、回転が抜けて1回転のミス。アクセルは2回転以上を跳ばなければならないという規定に違反して無得点となったが、ステップと3つのスピンで全てレベル4を獲得してGOE(出来栄え)でも加点をもらってカバーした。
  演技直後に両手で頭を抱えるほど悔しそうにしていた鍵山は「(トリプルアクセルの失敗は)ノーミスを目指して練習してきたので、めちゃくちゃ悔しい」と胸中を吐露。「プログラム前半は練習よりもうまくいったのでいけると思った。そこで、ノーミスしたいと余計なことを考えて慎重になってしまい、体が動かなくて(回転が)抜けてしまった。フリーでもプログラム後半に苦手意識のあるトリプルアクセルを跳ぶので、疲れている中でも跳べるように絶対ノーミスしたいです」と巻き返しを誓っていた。

 一方、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」で戦いの場面を演じた佐藤は、冒頭の4回転トーループ+3回転トーループの連続ジャンプを予定していたが、2本目が1回転になるミス。続く4回転ルッツでも着氷でバランスを大きく崩して両手をついて大幅減点となった。得意のトリプルアクセルを最後にびしっと成功させて気を吐いた佐藤は「調子は結構良かったんですけど、力が入りすぎてしまった。フリーは思い切りやるしかない。自分のマックスの演技ができるように頑張りたいです」と、終始、悔しそうな顔で答えていた。2位は83.27点の友野一希、3位は79.22点をマークした全日本ジュニア王者の本田ルーカス剛史だった。

文●辛仁夏 YINHA SYNN
1990年代に新聞記者となり、2000年代からフリーランス記者として取材活動を始め、現在に至る。フィギュアスケート、テニス、体操などのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材する。

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