NBAに参戦するファクンド・カンパッソとは何者か。世界最高峰のトリッキーなプレーは一見の価値あり

NBAに参戦するファクンド・カンパッソとは何者か。世界最高峰のトリッキーなプレーは一見の価値あり

NBA参戦のカンパッソに注目

NBAに参戦するファクンド・カンパッソとは何者か。世界最高峰のトリッキーなプレーは一見の価値あり

昨年のW杯でアルゼンチンを準優勝に導き、スペインのレアルでも数々のタイトルを獲得したカンパッソが今季からNBAでプレーする。(C)Getty Images

アルゼンチン代表、そしてスペインの名門レアル・マドリーの司令塔、ファクンド・カンパッソが、今季からNBAに参戦する。

 入団するのはデンバー・ナゲッツ。11月30日に2年契約を結び、晴れてチームの仲間入りとなった。なお、レアルとの解約金は600万ドル、そのうちナゲッツがレアルに支払えるのはNBAの規定により72万5000ドルまでで、残りはカンパッソ自身が払うことになる。ただし報道によれば、ナゲッツとの契約ではこの解約金の支払いをまかなえる額のサラリーが約束されているという。

 22歳でエントリーした2013年のドラフトで指名を得られなかったカンパッソは翌年、活路を求めてレアルに入団した。しかしそれからもNBAへの挑戦は、彼にとってどうしても実現したい目標だった。

 念願叶ってナゲッツ入りが決定したあと、カンパッソは自身のインスタグラムで、家族写真とともに「この嬉しさをどう表現したらいいのか。今は緊張と興奮が入り混じった気持ちだ。ベストを尽くすよ。この機会を与えてくれたナゲッツに感謝している」と喜びのメッセージを投稿している。
  もっとも、2度のユーロリーグ優勝に加え、国内のACBリーグ3冠、2019年はファイナルMVPにも選ばれるなど、充実したキャリアを送っていたレアルを離れることは難しい決断でもあった。眠れない夜を過ごすなど何か月間も真剣に悩んだという。しかし最終的には、「自分の夢を実現したかった。そのためにできることはすべてやってみようと思った。引退したあとで、『あれをやっておけばよかった』と後悔するのだけは嫌だったから」と、新たな挑戦を決意した。

 退団の挨拶代わりにクラブの公式サイトに寄せたロングインタビューでは、会長はじめチームメイトやスタッフ、ファンへの感謝があふれんばかりに語られているが、実際、6年間在籍した彼のレアルでのキャリアは恵まれていた。入団2年目からの2シーズンはより小規模のムルシアにレンタル移籍して実戦経験を積み、ユーロカップにも出場。この2年間は、彼がスターティングガードとして成長する上で貴重なステップであり、素質を見込んで根気よく育てるレアルの哲学の恩恵でもあった。
  また、レアル復帰後はルディ・フェルナンデスやセルヒオ・ユール、フェリペ・レジェスらスペイン代表の中核メンバーと主軸を担い、18年にユーロリーグと国内リーグを制覇。翌年もACB連覇、ユーロリーグではファイナル4進出という、チームの黄金期を共有できた。

「レアルは自分にあらゆるものを与えてくれた。人としても選手としても、このクラブが、今の自分に育ててくれた。ここで俺は、多くの友人や仲間、経験、そしてトロフィーを手に入れることができた。そしてそれこそがレアルが偉大なクラブたるゆえんだ。入団した頃と今の自分を比べると、その成長具合に自分でも驚いている。本当に感謝しているよ」

 レアルでのユーロリーグ最終戦となった11月20日の第10節フェネルバフチェ戦では、12アシストと持ち味を存分に発揮し勝利に導いた。フェネルバフチェは18年のファイナルでタイトルを競い合ったライバルチーム。その相手に20点差をつけての勝利は、アメリカへ旅立つカンパッソにとって格好の花道となったことだろう。
  カンパッソの持ち味は、クリエイティビティあふれるプレーと、それを支えるスタミナ、そして献身性だ。180cmの身長はNBAでのコートでは彼を一層小柄に見せるかもしれないが、フリーの仲間を瞬時に見つける視野の広さとスピーディーに展開する彼のプレーメイクは、必ずやアメリカのファンを虜にするだろう。ナゲッツにはリーグ最高のポイント・センター、ニコラ・ヨキッチがいるだけに、ぜひとも2人の絶妙なコンビプレーを期待したい。

 NBAでは2018年にマヌ・ジノビリが引退して以来のアルゼンチン人選手が誕生することになるが、ひょっとすると、今後すぐに同胞の後輩も後を追うかもしれない。

 同じくレアルに所属する25歳のフォワード、ガブリエル・デックだ。現在デックはレアルと契約延長交渉中で、その結果次第では、今オフのNBA行きもあり得るとスペインメディアは報じている。2018年のレアル入団時の契約は3年だが、契約内容には、今オフにNBAに移籍できる条項が盛り込まれているというのだ。
  レアルからより好条件を引き出すためのメディア操作の可能性もあるが、アルゼンチンにいた10代の頃から「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ」に参加するなど、デックのNBA行きは時間の問題であると言われていた。

 昨年のFIBAワールドカップでも存在感を発揮し、その様子を間近で見ていたコビー・ブライアントも彼をすっかり気に入って、ジノビリに「レイカーズに引き抜きたい」と熱心に情報を仕入れていたと、ジノビリ本人がポッドキャストで明かしている。とりわけ決勝のスペイン戦でのパフォーマンスは目覚ましく、試合には敗れるもゲームハイの24得点をマークするなど奮闘した。好不調の波が激しく、今季のユーロリーグでも平均5.8点、3.0リバウンドと突出しているわけではないが、まだまだ伸び盛りでポテンシャルは十分ある。
  レアルは過去、ニコラ・ミロティッチ(2014年/シカゴ・ブルズ)、サラ・メジリ(2015年ダラス・マーベリックス)、ヴィリー・ヘルナンゴメス(2016年/ニューヨーク・ニックス)、そして2018年のルカ・ドンチッチ(マーベリックス)など、欧州でも断トツでNBAに選手を送り出してきた。まずはカンパッソの活躍を見守りつつ、デックら後続にも注目していきたい。

文●小川由紀子

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