『格より調子』に敗れたクリソベル。異変の兆候は確かにあった…

『格より調子』に敗れたクリソベル。異変の兆候は確かにあった…

クリソベルは2連覇ならず。直線での伸びを欠き4着となった。写真:産経新聞社

秋のダート王決定戦と位置づけられるチャンピオンズカップ(GT、ダート1800m)が12月6日に中京競馬場で行なわれ、単勝4番人気のチュウワウィザード(牡5歳/栗東・大久保龍志厩舎)が力強く抜け出して優勝。ゴールドドリーム(牡7歳/平田修厩舎)が2年連続で2着となり、同じく前年3着のインティ(牡6歳/栗東・野中賢二厩舎)が3着に入った。単勝オッズ1.4倍という圧倒的な支持を受けて2連覇を目指したクリソベリル(牡4歳/栗東・音無秀孝厩舎)は直線で伸びを欠いて4着に、2番人気のカフェファラオ(牡3歳/堀宣行厩舎)は中団のままで6着に、それぞれ敗れた。

 いつ誰が言い出したか定かではないが、競馬には『格より調子』という格言がある(『牝馬は−』『夏競馬は−』と限定的に使われることもある)。競馬では「馬の能力(=格)よりも、そのときの調子を重視すべき」との意味合いを持つ言葉である。

 国内では8戦8勝、本レースのディフェンディングチャンピオンであるクリソベリルの4着敗退は、あらためてこの格言が思い起こされるような結果となった。
  関係者が異変を感じた兆候は先週の半ばからあった。水曜日に行なわれた坂路コースでの追い切りでは併せた同厩舎のサンライズノヴァを交わすことができず、時計も通常は4ハロン52〜53秒でまとめる馬が54秒台と、かつてない低調な数字を記録していたのである。

 調教後の共同記者会見では、音無秀孝調教師も「時計が遅かったのが気にはなるが、大きな問題はないと思っている」としたものの、発表された調教後の馬体重は前走時と比べて20s増の462sと明らかに重め。これを受けてか、土曜日にも坂路で異例の前日追いを敢行し、ラスト2ハロンは強めに追って連覇に向けての調整を施した。

 迎えたレース当日。クリソベリルの馬体重は前走のJBCクラシック優勝時と比べて+12sの554sと、前日追いでも体が絞り切れてはいなかった。

 レースでも中盤までクリソベリルの走りは、ちょっとした異変を感じさせた。外の15番枠からの発走であったため、鞍上が好位置を取るためにやや気合をつけたところ珍しく折り合いを欠いて、バックストレッチで馬群の外へ出した際には抑えきれずにするするとポジションを上げてしまった。それでも最後の直線へ向いていったんは伸びかかったものの、最後は息切れしたように脚が上がってしまい、バテたインティも捉まえきれず4着に敗れてしまったのである。
  調教後の会見でも色よい言葉をつぐんでいた川田将雅騎手はレース後、「今の調子でよくここまで来てくれた。4着に辛抱してくれたのは能力の高さ(ゆえ)でしょう」と、厳しいコメントを残している。まさに『格より調子』という、いにしえの格言がいまも生きていることが再認識されるようなクリソベリルの敗戦だった。

 一方、『調子』よりも『格』の壁に跳ね返されたのが3歳のカフェファラオ。古馬と混じってGTを走ったのは初めてのことで、その激しい流れに対応し切れなかったという印象は強いが、それでも最後はじりじりと脚を伸ばしており、さらにキャリアを積めば再ブレイクしてくるであろう逸材だと見る。
  最後になったが、初のJRA・GT勝ちを収めたチュウワウィザードは、訪れたチャンスをしっかりモノにするレース巧者ぶりが光った。ここまでの戦績はGT(JpnT)2勝を含む17戦9勝で、4着以下は一度のみという堅実さがストロングポイント。厩舎の管理の賜物でもあろうが、調子の変動が小さい馬で、どんなレースでも最後は必ず伸びてくる。今回はハイペースになるのを見込んで、いつもより後ろめのポジションでレースを進め、直線で出走馬中最速の上がり時計(3ハロン36秒4)を引き出した戸崎圭太騎手の手腕も際立っていた。

 有力馬にとっては、12月29日の東京大賞典(GT、大井・ダート2000m)が目標となる。どのようなメンバーが駒を進めるのか、勢力地図に変動が起こるのかに注目していきたい。

文●三好達彦
 

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