【名作シューズ列伝】エンブレムに熱い思いが刻まれた、ウエストブルックの初代モデル「JORDAN WHY NOT ZERO.1」

人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり!

 今回は前回に続き、今季からワシントン・ウィザーズでプレーするラッセル・ウエストブルックのモデルを紹介します。

 2016−17シーズン、相棒だったケビン・デュラントがチームを去り、オクラホマシティ・サンダーの単独エースとなったウエストブルック。同年に自身はNBA史上2人目の平均トリプルダブル(TD)を達成します。しかしチームは、プレーオフ1回戦敗退に終わりました。

 それでも2017年にサンダーと2022-23シーズンまでの延長契約(5年2億500万ドル)を締結。さらにオフにチームはポール・ジョージとカーメロ・アンソニーという2人のオールスター選手を加えます。



 シーズン前半戦は、平均25.5ポイント、9.3リバウンド、10.3アシストと若干リバウンドが足りず。2年連続の平均TDに向けて勝負をかけるべく、後半戦にデビューしたのが彼の記念すべきシグネチャーモデル第一弾「JORDAN WHY NOT ZERO.1」です。

 このモデルは、ジョーダンブランドのデザイナーとサンダーのエキップメントマネージャー(用具管理者)、ウィルソン・テイラーがウエストブルックの注文を受けてデザインした一足と言われています。
  テイラーの仕事は、選手が快適に過ごせるように彼らのリクエストに応えること。そのためには選手たちとコート内外で良い関係を築き上げなくてはなりませんが、彼はウエストブルックの信頼を勝ち取りました。

「JORDAN WHY NOT ZERO.1」は“Mirror Image”と言われています。シュラウドタイプのアッパーは、ジョーダンとウエストブルックが相対する左右非対称のデザインですが、精神は鏡に映るように同じであることを訴えています。



 本人の希望で足の甲部分を「フューズメッシュカバー」でロックダウンする構造になっており、ビジュアル的にも機能的にも理にかなった作りに。かかと部分はミッドソールの延長でTPUヒールカウンターの役割を果たしており、ジャンプマンマークも入っています。

 ベルクロをめくると今ではお馴染みとなった彼の座右の銘「WHY NOT?(なぜやらない?)」が現われます。前回の「AIR JORDAN XXXII PF」では主張しまくっていましたが、今回はつま先部分とベロクロのみ。普段は見えない部分(ベロクロ)にさりげなく入れるのが、“オシャレ番長”のこだわりなのでしょう。
  アウトソールは、真ん中にファイアーレッドのジャンプマンマーク。全体がフラットでフォアフット部分が放射線状に4分割された「ラディアル・パターン」は、XDR(Extra Durable Rubber)で仕上げられ耐久性を持たせながら、ソフトで粘性もあります。

 インソールにプリントされたエンブレムには、「R・R・S」「KB3」「R・N・N」 の3つの言葉が記されています。「R・R・S(Rapid Response System」」は、多くの病気において「急変」には前兆があるという点に着目した院内対応システムの意味です。

「KB3」は、ウエストブルックの親友で、高校3年のピックアップゲーム中に、突然の心臓発作により亡くなったケルセイ・バス3世のイニシャルを表しています。

「R・N・N」=Recurrent Neural Network(回帰型ニューラルネットワーク)は、数値の時系列データなどのパターンを認識し、医療現場で患者のデータを元に容体推移を予測。医師の判断を助けるネットワークのこと。

 親友バスの死をきっかけに彼のような若者が2度と出ないようにという、ウエストブルックの熱く強いメッセージが刻まれているのです。
 

 BOXは、至ってシンプル。艶のあるコート素材のブラックに、ウエストブルックのロゴマークがパターン化されて印刷。側面にはジャンプマンマークがシンプルにあしらわれています。

 ロゴマーク入りの包装紙も奇抜さを排除。あくまでもシューズへの導線を重視したものになっています。



 新た相棒を携え、満を持して臨んだ後半戦。ウエストブルックは18年3月の試合でNBA史上4人目となる通算100回目のTDを記録。最終的には2年連続の平均TDを成し遂げました。

 しかしサンダーでは優勝できず、昨季加入したヒューストン・ロケッツでも頂点には届かなかったウエストブルック。新天地のウィザーズで悲願達成はなるのか。今季の爆発を期待しています。

文●西塚克之

【著者プロフィール】
西塚“DUKA”克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。

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