「スケートが自分の中で苦しい」本田真凜がジャンプで苦戦。全日本選手権で復活するためのカギとは?

「スケートが自分の中で苦しい」本田真凜がジャンプで苦戦。全日本選手権で復活するためのカギとは?

25日開幕の全日本選手権に出場を予定している本田真凜。写真:徳原隆元

16年世界ジュニア女王の本田真凜が、6年連続で25日開幕の全日本選手権(長野)に出場する。今季は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、ほとんどの国際大会が開かれず、国内の地域ブロック大会や東日本・西日本選手権、そして国内仕様のNHK杯が開催され、本田も東京選手権(総合7位)、東日本選手権(総合10位)、NHK杯(総合9位)とここまで3試合を戦ってきた。今年は、選考大会をぎりぎりで通過して、全日本出場切符を辛うじて手に入れての参戦だ。

 ジュニア時代は輝かしい成績を残す活躍が光った本田は、可憐な演技とキュートな容姿で一躍人気者になり、2018年平昌五輪代表を目指して2017−18シーズンに鳴り物入りでシニアデビューを飾った。しかし、グランプリ(GP)シリーズの初陣でいきなりシニアの洗礼を受けた。ジャンプがことごとく回転不足と判定されるなど、思い描いた演技ができずにシビアな評価に泣き、得点が伸び悩んで表彰台争いの一角にも顔を出せなかった。その後も、得点源のジャンプが弱点となって不本意な結果が続いている。
  シニア4年目を迎えた本田も19歳の大学1年生になり、今季は練習拠点を日本にも置いて、往年のジャンパーとして一時代を築いたソルトレークシティ五輪4位の本田武史コーチに指導を仰いで、最重要課題のジャンプ修正に取り組んできたはずだったが、その練習の成果はシーズン直前の練習中に負った右肩脱臼のけがで出せていないのが現状だ。

 ほとんどジャンプを跳べない状態から本格的にジャンプ練習を再開できたのは10月半ばから。11月上旬に行われた東日本選手権では何とか難易度の高い種類のジャンプを跳べるまでレベルを戻して出場した。それでも、シニアデビュー時から課題となっているジャンプの回転不足を露呈。難易度を落とした東京選手権ではなかったが、東日本選手権やNHK杯では回転不足やダウングレードの判定などがほぼ全てのジャンプで見られ、得点の伸び悩みにつながった。
  東日本ではSP8位からフリー12位となり、ボーダーライン(11位)ぎりぎりの総合10位で目標に掲げた全日本選手権出場切符を何とか手にした。悲壮感漂う中での演技となったフリー後の会見で本田は、抱えていた切実な思いを吐露した。

「ここ最近、スケートが自分の中ですごく難しいなっていう気持ちで、いろいろ考えて泣くこともありました。全日本は自分の中では特別な試合で、連続(出場)を途切れさせたくなかった。(フリー冒頭の)最初のジャンプを失敗した後に、『もう今日で最後』と思って滑ったような気がします。『引退』っていう言葉は考えていなかったけど、最近、本当にスケートが自分の中で苦しいものになっていて、全日本に今回出られなかったら、何のためにしているのか考えないといけないな、と思っていました。

『何位までが(全日本に)通れる』と考えたのは久しぶりだったし、そういうことを考えている自分が嫌で、いろんな感情がこみ上げてきました。また、(シニアデビューした)妹の望結を引っ張っていかないといけない自分が、一緒に(全日本選手権出場の)ボーダーラインを意識していることも嫌でした」
  なぜ苦戦を強いられているのか。それは本田自身が誰よりも分かっているはずだが、この大きな課題は一朝一夕では克服できない。ジャンプの修正を目指して師事したラファエル・アルトゥニアンコーチは「ジャンプ修正には3年くらい掛かる。地道な取り組みが必要だ」と、本田を指導するにあたり、こんなことを明かしていた。あれから、もう3年が経とうとしているが、果たして本田のジャンプに変化をもたらせたのだろうか。

 東日本選手権では右肩のけがによる痛みもなく、追い込んだ練習もできるようになって試合に臨んだようで、全日本選手権に向けては少しずつ調子を取り戻しつつあった。そして、11月下旬に行なわれたNHK杯では今季初めてとなる観客の前での演技でパワーをもらったこともあり、忘れていた笑顔を取り戻して演技を楽しんだことが得点増にも現れた。この大会でも回転不足の解消はできなかったが、SPで58.30点、フリーでは104.27点をマークして合計162.57点を出した。
 「今シーズンは不安な気持ちで試合に臨むことが多かったんですけど、今の時点でできることは(NHK杯では)出せたんじゃないかなと思います。今日のフリーでは、お客さんの前で最初から笑顔で滑ることを心がけていたので、楽しんでできたかな。

 今大会も回転不足のジャンプが多かったけど、回転不足を直せば、昨年以上の点数が出せると思うので、次の試合(全日本選手権)ではしっかり回りきって降りることを頑張りたいです。課題の回転不足になると跳んだジャンプでもマイナス(GOEで減点される)になってしまうので、そこを直して行きたい。

 練習から不安な気持ちがジャンプに影響してなかなか調子が上がってこなかった。だから、自分に一番大切なことは自信を取り戻すことかなと思ったので、(NHK杯では)とにかく笑顔で滑ろうと心がけました」
  表現力では全日本選手権の表彰台争いに加わるトップ選手たちに引けを取らない演技を披露しているが、ジャンプの出来栄えでは一にも二にも回転不足を克服できない本田では勝負にならないことは明白だ。練習から徹底した基本動作を繰り返し、高さと回転速度のあるジャンプを跳んで成功率を上げることで自信をつけることが、どん底から浮上する本田にとって必須であり、立ちはだかる分厚い扉を開けるカギとなるに違いない。

 近道への特効薬はない。ジャンプ修正の必要性をどこまで強く感じ、地道な取り組みを積み重ねることができるかどうかに懸かっているのではないか。そこがクリアになれば、低迷から脱却できる日がやってくるだろう。今年最後の、そして今季後半戦へとつながる機会となる大きな舞台で、回転不足と判定されないジャンプをしっかりと跳ぶことができれば、結果は自ずとついてくるはずだ。

文●辛仁夏 YINHA SYNN
1990年代に新聞記者となり、2000年代からフリーランス記者として取材活動を始め、現在に至る。フィギュアスケート、テニス、体操などのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材する。

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