世界のバスケリーグの数字は平等ではない?NBA、ユーロリーグ、中国リーグを経験した選手たちが語る「違い」と「レベルの差」

世界のバスケリーグの数字は平等ではない?NBA、ユーロリーグ、中国リーグを経験した選手たちが語る「違い」と「レベルの差」

ユーロリーグで経験を積み、若くしてNBAに挑戦したルカ・ドンチッチ。今では彼のような若手選手に加え、逆に海外へ居場所を求めるベテラン選手も増えている。(C)Getty Images

新型コロナウイルスの影響で各国バスケットボールリーグのスケジュールがイレギュラーになったことは、今季の移籍マーケットにも大きな影響を及ぼしている。

 近年は、欧州からNBAに挑戦する選手だけでなく、NBAからユーロリーグや中国リーグ(CBA)に移籍する選手、またそこでの経験を経て再びNBAに挑む選手も増えているが、NBAは昨年12月22日に開幕したばかり。ヨーロッパやCBAは10月から始動と足並みが揃っていないため、国を越えての移籍は例年以上に困難だ。

 とはいえ、NBAでの所属先が決まっていない選手のなかには、試合勘をキープするためにも、CBAを選択肢に考える選手もいるだろう。元NBA選手が激増しているCBAは現在、NBA、ユーロリーグに次ぎ、世界で3番目にレベルの高いリーグとも言われている。
  しかし実際のところ、選手たちはNBA、ユーロリーグ、CBAの違いをどのように感じているのだろうか。ヨーロッパのバスケ専門サイト『Eurohoops』が、この3リーグすべてを経験したアメリカ人選手たちに話を聞いている。

 サクラメント・キングスやミネソタ・ティンバーウルブスなど2年間でNBA4球団を渡り歩いたボビー・ブラウンは、2013〜16年に中国でプレー。イタリアのモンテパスキ・シエナに所属した2012−13シーズンにユーロリーグ得点王にも輝いているポイントガードは、「NBAはスピーディーなゲーム展開でエネルギッシュ。ユーロリーグはよりフィジカルでコンタクトが激しい。CBAはハイスピード、ハイスコアリングなゲームという点でNBAと似ている。レベルについてはNBAが断然ベスト、次にユーロリーグで、CBAはおよそ匹敵しないが、中国人選手はものすごく勤勉で向上心も旺盛。ジョウ・チー(元ヒューストン・ロケッツ)やディン・ヤニュハン(山東ゴールデンスターズ)のような選手も出てきているのが良い例だ」と三者の特徴を挙げている。
  2004年のドラフト19位でマイアミ・ヒートに入団し06年には優勝を経験、海外移籍後はCBAの北京フライドラゴンズ(現ロイヤルファイターズ)、ドイツのブローゼなどでプレーしたドレル・ライトは、「NBAは世界のベストプレーヤーが集まるトップリーグで、レベルに関しては比較の余地はない」と明言。

「ユーロリーグは世界で2番目のリーグだ。ここでの最大の利点は、若いうちから国際マッチの経験を積んだり、ハイレベルな環境でプレーできること。ルカ・ドンチッチのようにね。ユーロリーグではチームプレーが基本で、特定の選手が毎試合20点以上あげるのは稀。全員が8〜12点くらい取るという戦い方をする。だからここでの平均12〜14点は、NBAでの22点くらいに相当する。ただ、なかなかそれは理解されにくくて、ヨーロッパの若手有望株はスタッツで過小評価される傾向にある」

 CBAについては「アメリカ人選手は、『ここで自分のスキルを見せつけよう』という気概で臨んでいる。NBA復帰のためには良い場所だ。レベル的にはユーロリーグとは比較にならないが、給料もいい」と持論を述べている。
  2011年のドラフトでワシントン・ウィザーズから18位指名を受けて3年間プレー後、中国を経て現在はトルコのアナドール・エフェスに所属するクリス・シングルトンも「個々の才能、能力が一番高いのがNBA、チームプレーの質の高さではユーロリーグ、CBAではとにかく数字」だと指摘する。

「NBAのプレースタイルが変わってきているとはいえ、バスケ少年がいつの日がプレーしたいと憧れるのはNBA。ユーロリーグは飛び抜けたスタッツをあげるのが難しく、チーム内のポジション争いも激しい。コーチはまず守備ありきのコンセプトを持っている場合が多い。CBAではとにかく数字。大量得点にリバウンドだ」

 3つのリーグを比較した際、多くの選手が指摘したのがバスケットボールのスタイルの違いについてだ。比較的ロースコアで、最も点を取りにくいのがユーロリーグという部分で意見が共通しているが、その理由はどのチームも組織的なディフェンスを敷き、守備に重きを置いていること。シュートチャンス自体が少なく、「ひとつのシュートに毎回決勝点並みの重さがある」とコメントしていた選手もいた。
  一方、その対極にあるのがCBAで、こちらはディフェンスよりもまずオフェンス。そこにはエンターテインメント性を重視しているリーグのキャラクターもある。

 Bリーグのアルバルク東京で活躍するセンター、アレックス・カークも、NBA(クリーブランド・キャバリアーズ)、ユーロリーグ(アナドール・エフェス)、CBA(広州ロングライオンズ)を経験しているが、「NBAはアイソレーションを多用するし、ディフェンスの3秒ルールも特徴的。アメリカ人ガードをアイソレーションする点で、CBAはNBAと似ている」と印象を語っている。

 また、「NBAは自分の弱点があぶり出されやすい」と話すのは、ロサンゼルス・クリッパーズやレイカーズなどNBA7球団を渡り歩いたジョシュ・パウエルだ。

「NBAでは、ディフェンスができないとものすごく目立つ。ヨーロッパ、それからCBAでもゾーンやダブルチームが主流だからチームメイトにカバーしてもらえる」
  CBAとユーロリーグ以外にも、スイスやプエルトリコ、ギリシャ、フィリピン、アルゼンチン、オーストラリア、韓国などでプレーした筋金入りのジャーニーマンである彼は、NBAが世界最強リーグであるとしつつも、試合の雰囲気はやや緩めだと語る。

「なぜなら試合数がめちゃくちゃ多いから。ユーロリーグは毎試合がプレーオフ並みのプレッシャーで戦う。NBAの選手でも、シーズンを通して毎試合これほどのプレッシャーに対応するのは難しいだろう」

 2011年のドラフト全体2位でNBA入りし、CBAを経て現在はスペインのバレンシアで活躍中のデリック・ウィリアムズは、そのプレッシャーこそがユーロリーグの醍醐味だという。

「(ユーロリーグの)レギュラーシーズンは30試合ほどだから、1試合の結果によるアップダウンが大きい。おのずと真剣味も増す。プレーオフになればなおさらだ。NBAではオールスターゲームが終わった後から本腰を入れる選手が多いのが実情だろう」
  では、どうしたら三者のレベルの差は縮まるか、という質問に対しては、マルコム・デラニー(元アトランタ・ホークス)のように「NBAに追いつくリーグはありえない。近づくことさえない」と言い切る選手もいれば、ウィリアムズのように「最近はNBAに所属する4分の1近くの選手がヨーロッパから来ている。それらの選手がヨーロッパに戻ってプレーすると考えたら、両リーグのレベルの差はぐっと縮まるのではないか」と唱える選手もいる。

 そもそも、ビジネスとしての熟成度や規模がそれぞれのリーグでまったく違うのだから、比較自体がナンセンスではある。ユーロリーグは各国のクラブの集合リーグであり、選手やコーチのサラリー、設備やマーケティングにかけられる予算もNBAとは桁違いだ。このコロナ禍で、ヨーロッパでは選手のサラリーをカットしたクラブが多いが、NBAでは過去最高を更新する額で契約更改が行なわれていることを、欧州のバスケメディアは畏怖の念とともに報じていた。金銭面だけでなく、施設や身体のケアの面でもNBAの圧倒的優位を強調していた選手が多かった。
  このような各リーグの違いを体験することで、選手はより幅のあるプレーヤーに成長でき、セカンドキャリアに生かされる部分も多大にあるだろう。今季中の海外移籍は難しい部分もあるだろうが、今後もよりグローバルなキャリアの選択肢が広がることを期待したい。

文●小川由紀子
 

関連記事(外部サイト)