男子バレー『NEXT4』の現在地。アイドルプレーヤーから本格派への着実な進化

男子バレー『NEXT4』の現在地。アイドルプレーヤーから本格派への着実な進化

2015年春『NEXT4』としてバレボール界を盛り上げた石川(左上)、柳田(右上)、山内(左下)、高橋(右下)の4人は現在どのような立ち位置にあるのだろうか。写真:(C)Getty Images、北野正樹

低迷する男子バレーボールをイケメン選手で人気回復につなげようと、2015年4月に日本バレーボール協会(JVA)が大々的に売り出したのが「NEXT(ネクスト)4」。あれから5年9か月。2020年東京五輪は1年延期になり成長ぶりは披露できなかったが、当時、19歳から22歳までの石川祐希(25)、柳田将洋(28)、山内晶大(27)、高橋健太郎の(25)4人は世界に通用するプレーヤーとして、着実に進化を続けている。

 15年4月20日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで行なわれた男子バレー日本代表の記者会見。16年リオデジャネイロ五輪出場権獲得と2020年東京五輪で日本代表の主力選手になることを目指して結成されたのが「NEXT4」だった。

メンバーは、
石川祐希(中央大、191センチ、74キロ、19歳=現イタリアセリエA・ミラノ)
柳田将洋(サントリー、186センチ、80キロ、22歳=現サントリー)
山内晶大(愛知学院大、204センチ、72キロ、21歳=現パナソニック)
高橋健太郎(筑波大、201センチ、93キロ、20歳=現東レ)
の4人だ。
  4人の平均身長は195センチを超え、甘いマスクも相まって、南部正司監督は「人気と実力が兼ね備わった選手になってほしい」と期待を込めた。効果はその年の秋、早くも現れた。広島で開幕したワールドカップ。当初、観客はまばらだったが、石川、柳田らのフレッシュなプレーがテレビ画面を通して注目を集め、途中から人気に火がつきチケットは完売。次の大阪、東京両会場でも入場券が完売するほど一気に大ブームを巻き起こした。しかも、チームも20年ぶりに5勝を挙げ、男子バレー復活の手がかりもつかんだ。

 しかし、16年のリオデジャネイロ五輪世界最終予選は石川が膝の故障、柳田もベストの状態でなく、五輪出場権を逃し、再び低迷期を迎える。中垣内祐一監督が指揮を執った17年のワールドグランドチャンピオンズカップでは、世界の強豪5チームに対し0勝5敗。3試合でストレート負けを喫し、大会を通して2セットしか奪えぬ惨敗だった。
  その後、石川は大学時代に短期留学したイタリアセリエAでプレーし、柳田もサントリーに就職したものの、2シーズンでプロ宣言しドイツに旅立った。

 ようやく人気と実力を兼ね備えたのが、一昨秋のワールドカップ。常に世界のレベルでプレーしてきた2人の活躍もあり、メダルは逃したものの4位に入り、2020年東京五輪に希望をつないだ。

 大学生だった3人のうち、石川はセリエA6年目の今季、日本人選手として初めて通算1000得点を挙げるなど、着実に地歩を進めている。山内はパナソニック、高橋は東レとV1リーグの強豪チームに入団し、こちらもチームの主力メンバーとしていなくてはならない存在だ。

 そんな中で、この5年間で最も環境を変えているのが柳田だ。サントリー・サンバーズ入団2年目の2017年にプロ宣言し、海外挑戦を発表。ドイツ、ポーランドを経て再びドイツでプレー。コロナ禍で昨年3月に帰国し、6月に古巣・サントリーに復帰。4年ぶりにVリーグに活躍の舞台を移した。年内の12試合で10勝2敗、28ポイントで3位につけているチームを、プレーだけでなく言葉と態度で引っ張っている。
  柳田をサントリー入団当時から知る関係者が声をそろえるのが、高いプロ意識だ。練習に妥協はなく、オーバーワークを心配した山村宏太監督が「もう止めておいた方がいいんじゃないか」とセーブするほど。「もっと練習をしたいから、付き合ってくれ」とチームメートにかけた言葉に触発され、練習量を増やす選手が自然と多くなってきたという。

「マサ(柳田)がまだ練習が必要だと思っているのに、試合に出ない控え選手がそれでいいのか、と考えるきっかけを作ってくれている」と山村監督。

 サントリーに復帰した理由も、彼なりのプロ意識。「在籍中はチームに貢献できず、海外に行っても常に声をかけてもらっていた。日本で戻るならサントリーしか考えなかった。それが僕のプロとしての矜持」と言い切った。

 言葉にも妥協はない。「コート上で、白黒をつけなくてはいけない時がある。そんな時には、はっきり言う」と柳田。一見きつく聞こえる表現は、言語も考え方も違う多国籍のためコミュニケーションを取り自己主張をしなければならない海外プロリーグで身に付いたものではない。

「選手の間に来たボールに触れることができずボールが落ちたら、日本なら互いに『ゴメン』で済ます。『そこのボールはとってよ。ここのボールはオレがとるから』と決着をつけることで試合中に改善できることがある。プロの評価はプレーで決まる。誰がとるボールなのか。自分のやる仕事で評価してほしい。そこにはグレーはないのです」と柳田。プロであるからこそ、プレーを正しく評価してほしい。その指摘をプレーヤーひとり一人が考えることで、さらにチームがレベルアップすることにもつながる。「声かけも含めて意識してやっています」と自分の役目を心得ている。
  柳田の加入について、山村監督は「技術云々でなく、海外で培ってきたハングリー精神やもっとうまくなりたいというマインドや取り組む姿勢は、今までのサンバーズに欠けていたもの。主将の大宅も戦う姿勢を見せ率先して声を出すようになった。ひとり一人が変化することで大きな化学反応を起こすと思う。少しずつ化学反応が起き始めているのが、今のサンバーズ」とマサ効果を認める。

 4歳年上のアウトサイドヒッター・栗山雅史は「厳しいことを言い合うこともあるが、チームを鼓舞する声かけや、組織で動こうという柳田の声かけで、みんなの意識が変わってきている。僕にも苦手なディフェンスにチャレンジしようとさせてくれ、チームにプラスになる」と、柳田の存在を歓迎する。

 柳田は、そうした言動について「普通にキャッチボールをしている感覚と同じ。自分が投げてこうしてほしいというボールをキャッチしてプレーに生かしてくれて、それが結果に結びつくと、自分としても発信してよかったと思う。何もしゃべらないで、(ボールが)落ちるのが一番、悔いが残る。だから起きる(プレーの)可能性を声に出したい。今は日本語で会話ができるからやりやすい」と静かに語る。
  プロ意識は、コート上にとどまらない。今リーグ開幕前の9月中旬に行なわれたVリーグ機構の運営会議。席上、サントリーの山本和史ゼネラルマネジャー(GM)は、コロナ禍で来日が遅れたり、2週間の隔離でチームに合流ができたりしていない外国人選手が多いことから、「外国人選手が揃うまで、開幕後も日本人選手だけで戦うことも考えてはどうか」と提案した。各チームともに同じ条件で戦う公平な試合開催がファンファーストにもつながるという部分では共感したものの、すでに外国人選手が来日しチーム練習に参加しているチームからの賛同は得られず、総論賛成・各論反対で採用はされなかった。

 実は、この提案の発案者は柳田自身だった。山本GMによると「来日の遅れはチーム側に問題があるのでなく、相手国も含めてコロナ禍による様々な制限が原因。外的要因で、有利不利が出るのはおかしいのでは」と柳田から指摘され、「当然の意見。私も感じていたのでチームの意見として提案させてもらった」という。「選手としては、リーグの方針に従うだけです」とこの件に関しては多くを語らない柳田だが、いち選手の思いがリーグの運営方法に一石を投じたことは間違いない。
  遅咲きの山内、高橋も高さを生かしたミドルブロッカーとして活躍している。ともに高校入学後、バレーボールを始めた。バスケットボールから転向した山内は、2014年のワールドリーグで国際大会に初出場し、地元である愛知県の小牧会場で国内デビューを果たした。経験不足を多くの練習で補う努力家。

 NEXT4に選ばれたことは「発表の5分くらい前に聞いて、驚いた。実力がなく自信はなかったが、思い切ってやろうとしか考えなかった。選んでもらってよかった」と振り返る。南部(現パナソニックGM)は「努力をしないと技術がついてこないから、練習をするしかない。向上心があり、のんびりしているように見えて、負けず嫌い。東京五輪では世界と戦える」と評価する。

 高橋も、昨秋のワールドカップでは高さを生かしたブロックと強打で存在感を示した。高校までは野球で甲子園を目指した球児。並外れた身体能力は誰しもが認めるところだが、ケガに泣かされ続けた。南部は「エンジンにボディが付いてこず、ケガが成長を妨げていた」という。入団時の監督で、現GMの小林敦は「故障が多く詰めて練習ができなかったが、東レに入って自分の体と向き合い、どう体をコントロールすればいいか、自分の中で消化できるようになった。NEXT4からはコースアウトしていたが、ワールドカップの活躍でコースに戻ってきたのではないか。攻撃力はトップクラスでブロックもよくなってきた。あとは西田君(ジェイテクト)のようなサーブをコンスタントに。人間としても魅力的」と成長ぶりを語る。
  2016年12月から日本バレーボール協会男子強化委員長を務める矢島久徳は、NEXT4の現在地≠ノついて「私の就任当時からみて、驚くほどレベルアップしている。しかし、4人とも若く、伸びる余地はまだある」とみる。4人について「石川は食事面も気を付けるなどプロとしての自覚が高く、体も強くなった。海外でプレーして人間としての強さを感じさせるのが柳田。代表のキャプテンとしてコミュニケーションもうまく取ってくれている。山内は練習中も真面目でネットの真ん中にいても両サイドをカバーできる。ブロック賞など数字の上でも結果を残してほしい。故障のなくなった高橋は攻撃の幅も広がりブロック力も付きプレーがうまくなった」と評価している。
 
 4人が真価を発揮するのは、東京五輪、2021年7月24日のベネズエラ戦(有明アリーナ)からだ。
 
文●北野正樹(フリーライター)
きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。

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