「タイムで走るんじゃなくて人が走る」でサプライズを巻き起こした創価大の強さとは?

「タイムで走るんじゃなくて人が走る」でサプライズを巻き起こした創価大の強さとは?

箱根駅伝で準優勝に輝いた創価大の選手たち。左から石津佳晃(9区)、嶋津雄大(4区)、三上雄太(5区)。写真:JMPA

正月の箱根駅伝で世間を驚かせたのが創価大だ。残り2qで駒大に大逆転を許したとはいえ、4区でトップに立つと、その後は143q以上を独走。4回目の出場で準優勝に輝いた。誰も予想しなかった創価大の急浮上。そのなかで就任2年目の榎木和貴監督はチームの躍進を確信していた。

 箱根駅伝の最高順位は前回の9位。出雲駅伝と全日本大学駅伝には一度も出場していない。学生駅伝のキャリアに乏しいチームだが、今季は「箱根3位」という目標を掲げて取り組んできた。

「メディアからすれば創価大はノーマークだったと思います。ただ私が就任して、チームは着実に変わってきました。夏合宿と秋の試合でも前年以上の成長が見られましたし、チーム目標に向かって選手たちがひたむきに努力してくれたかなと思います。このチームだったら目標を達成できると感じていましたし、私が自信をなくすと、選手にも影響します。私は『絶対にいける』という声掛けをしてきました」

 学生駅伝の実績だけでなく、トラックでも創価大は強豪校ほどのタイムを残していなかった。箱根駅伝エントリー上位10人の10000m平均タイムは駒澤大が史上最速となる28分26秒81でトップ。一方の創価大は29分05秒37で13番目だった。

 それでも創価大は大舞台で堂々としたレース運びを見せる。榎木監督の「タイムで走るんじゃなくて人が走る」という指導が選手たちに魔法をかけた。
  ナイキの厚底シューズと高速スパイクの影響もあり、10000mのタイムは急上昇している。しかし、「タイムが上がった」=「走力が上がっている」というわけではない。ギアの進化、気象条件、レース状況によってタイムは変わってくるからだ。

 日本人は数字の“トリック”に翻弄されやすい。自分よりも好タイムを持つ選手に対して恐怖心を抱いてしまう選手は少なくないが、榎木監督には独自の哲学があった。

「10000m27分台の選手だから勝てないのではなく、その場にいる選手が走るわけだから、自分の走りに徹すれば27分台の選手にも勝てるチャンスがあるよ、ということを言い続けてきました。1〜9区までの選手は、そういう走りをしてくれたかなと思います」
  チームとしてはトラックのタイムではなく別の“指標”があった。11月に学内でハーフマラソンのトライアルを行うと、気温が高いなかで12〜3人が1時間3分台で走破した。12月には30秒の時差スタートで15qの単独走を実施すると、前年チーム3番目のタイムを11人がクリア。前回1区で区間歴代2位タイの快走を見せた米満怜(現・コニカミノルタ)のタイムも8人が上回ったという。

「米満が8人もいるチームなので、それだけみんな自信を持ってくれたと思います」

 どんなトレーニングを積んできたのかわからない選手のタイムに惑わされるのではなく、自分たちのチームが確実にレベルアップしているという実感を大切にしてきたのだ。さらに、出場するレース内容についても明確な意識づけがあった。

「人の後ろについてタイムを出すのではなく、自分たちの力でレースを作ってタイムを出せるように指導してきたんです。失敗もありましたけど、どの試合でもチャレンジすることを忘れなかったことに成長があったのかなと思います」
  駅伝は一斉スタートとなる1区以外は基本、単独走になる。集団でレースが進む記録会で好タイムを出すことと、単独走でもしっかりと走り切ることは別の能力が求められる。創価大が強く意識してきたのは後者だった。

 ときには自然の脅威が牙をむく箱根駅伝で勝負するには何が必要なのか。2021年の正月に強烈なインパクトを残した創価大が改めて教えてくれたような気がしている。

取材・文●酒井政人

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