すべてのミスを劇的弾で相殺。最後は常に勝者として記憶された“コビーという男”を象徴する一戦【コビー・ブライアント名勝負:Part.3】

すべてのミスを劇的弾で相殺。最後は常に勝者として記憶された“コビーという男”を象徴する一戦【コビー・ブライアント名勝負:Part.3】

2度の劇的弾でチームを勝利に導いたコビー。だがこの試合、負けていれば戦犯だった。(C)Getty Images

2020年1月26日、世界中に衝撃を与えたロサンゼルス・レイカーズのレジェンド、コビー・ブライアントの事故死。あれから約1年……。コビーの肉体は滅びたが、その勇姿はファンの心に永遠に刻み付けられている。ここでは彼の20年の激闘譜のなかから、後世に語り継ぐべき名勝負を紹介する。

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■2004年4月14日 vsポートランド・トレイルブレザーズ

 2003−04シーズンの最終戦。レイカーズが勝利、そして別会場で戦うサクラメント・キングスが敗れれば地区優勝が決まり、プレーオフ第2シードの椅子が手に入る。そんな状況で迎えた試合は、ブレイザーズペースで進んでいく。レイカーズは試合開始から終始劣勢の苦しい展開。第4クォーター残り3分21秒にコビーが3ポイントを沈め、この試合初のリードを手にするもすぐに逆転を許し、残り1分7秒にデレック・アンダーソンのジャンパーで3点差をつけられた。
  瀬戸際まで追い詰められたレイカーズだが、残り8秒で迎えた最後の攻撃。コビーは自称“コビー・ストッパー”ルーベン・パターソンの厳しいマークに遭うも、何とかスペースをこじ開け、難しい体勢から3ポイントを沈めオーバータイムに持ち込む。

 1度目の延長戦は互いに点を取り合うも、決め手に欠けてダブルオーバータイムに突入。連戦で疲労が蓄積していたレイカーズは、2点を先制するも、残り3分7秒でシャキール・オニールが6ファウルで退場してしまう。するとブレイザーズは、地元ポートランド出身のデイモン・スタッダマイアーが躍動。3ポイント、ジャンパーを立て続けに決めると、残り2.2秒にはレイアップも放り込んでブレイザーズに2点のリードをもたらした。

 しかしゲームはまだ終わっていなかった。残り1.0秒で迎えた最後のポゼッション。コビーはペイントエリアから抜け出し、ブロック王に輝いたこともあるティオ・ラトリフ越しにキャッチ&シュートで3ポイントを放つ。高いアーチを描いたボールはネットを綺麗に通過し、レイカーズが105−104で逆転勝利を収めた。
  稀代の勝負師による劇的なブザービーターが決まった瞬間、ブレイザーズの実況と解説は沈黙。そして会場を埋めたブレイザーズファンから大きなどよめきが沸き起こる。その後、シード順位を争っていたキングスが敗れたことで、レイカーズの地区優勝とウエスト2位が決まった。

 延長に持ち込んだ同点弾について、シャックは「彼が『勝ってホームに帰ろうぜ』と俺に言ってきた。あれは偉大な選手のサインであり、自信に満ちあふれたショットだった」とコビーを称えたが、実はこの試合、一歩間違えればコビーは戦犯だった。
  3点を追う第4クォーター残り55.7秒にフリースローを2本とも外し、残り15秒に放った3ポイントもミス。さらに2度目の延長残り2.2秒には、ゲイリー・ペイトンからのスローインをファンブルしてしまい、あわやターンオーバーというケアレスミスをしていたのだ。

 だが、そういったミスをクラッチショットで相殺してしまうのがコビーという男。今となっては、この試合の勝負所でコビーがミスしたことを覚えている人はほとんどいないだろう。どれだけミスを犯したとしても、最後は勝者として記憶されたコビーを象徴するような一戦だった。

文●秋山裕之(フリーライター)

※ダンクシュート『コビー・ブライアント追悼号』原稿に加筆・修正

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