コロナがなければ…欧州に戻ったドラガン・ベンダーの課題を元同僚が証言「練習と試合で別人」〈DUNKSHOOT〉

コロナがなければ…欧州に戻ったドラガン・ベンダーの課題を元同僚が証言「練習と試合で別人」〈DUNKSHOOT〉

昨季はウォリアーズ移籍後にまずまずのプレーを見せていたベンダー。それだけに新型コロナでの中断が悔やまれる。(C)Getty Images

新型コロナウイルスは、多くの人の人生に影響を与えている。「コロナがなければ違う状況になっていたかもしれない……」という体験をしている人も、少なくないだろう。

 イスラエルの名門、マッカビ・テルアビブに所属するドラガン・ベンダーもおそらくその1人だ。彼は、新型コロナウイルスの影響でNBAが中断された2020年3月、アメリカでの生き残りを賭けた10日間契約の真っ只中にいた。

 ユーロリーグの2チームが初めてアメリカの地で対戦した、2015年10月のUSAツアー。マッカビ・テルアビブの一員としてアルマーニ・ミラノ戦に出場したベンダーは、シカゴとニューヨークで行われた2試合で、全フランチャイズのスカウトマンの目に触れた。

「2016年ドラフトの大本命。まだ18歳にもなっていない7フッターは、フロアを駆けまわり、ボールを巧みにハンドリングし、中からも外からも決められる。ディフェンス面でのインパクトもある」

 彼のパフォーマンスは噂どおりだと、ベテラン記者陣をも唸らせた。
  2014年のオフ、ベンダーはユーロリーグ優勝を果たしたばかりのマッカビ・テルアビブと4年契約を結んでいたが、130万ドルの契約解除金を支払う覚悟で、2016年のドラフトへのエントリーを表明。そして前評判どおり、全体4位でフェニックス・サンズから指名を受けた。

 ボスニア生まれのクロアチア人フォワードは当時18歳だったが、育成を受けたスプリトで15歳の時にプロデビューしていたから、すでに3年近いプロキャリアがあった。クロアチアの強豪スプリトは、同国の英雄トニー・クーコッチ(元シカゴ・ブルズほか)を輩出したクラブでもあり、ベンダーもクーコッチに憧れ、彼のビデオを観て育ったとたびたびインタビューで語っている。

 ベンダーは、2015年のドラフトで同じく4位で指名されたラトビア人フォワード、クリスタプス・ポルジンギス(ダラス・マーベリックス)に似た、シューティング力のある7フッターと表されることも多かった。本人も共通点はあると話していたが、ドラフト直後、最近のプレーで参考にしている選手は?と聞かれた時には、ドレイモンド・グリーン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)の名前を挙げている。
  ベンダーはいわゆる“少年時代はポイントガードだったが、身長が伸びるのに応じて5番(センター)まで経験して育った”という選手で、パスワークでゲームメークもできるビッグマンを自らの理想像としていたのだ。

 2016−17シーズンの開幕戦、サクラメント・キングスとの試合に約12分出場すると、ベンダーは2本の3ポイントを含む10得点に2リバウンドと、初陣としては及第点のパフォーマンスを見せた。その後もベンチ要員としてプレータイムを重ね、12月のヒューストン・ロケッツ戦では初のダブルダブル(11得点、13リバウンド)を記録。地道にルーキーとして経験を積んでいたが、2月に右足首の手術を受けてからは長期間の離脱を強いられ、自身も「自分にとっては2年目が本当のルーキーイヤー」と語ったように、翌シーズンに期待を残す形で初年度を終えた。
  2年目は、1月にマーキーズ・クリス(現ウォリアーズ)が腰のケガで欠場したのを機に、スターターに定着。平均25分のプレータイムで6.5点、4.4リバウンドと数字を倍に伸ばしたが“216cmのサイズながら敏捷性があり、バスケットボールIQが高く、パッシングゲームも得意。外からのシュートも打てて、攻守両面で求められる能力を備えている”という机上での評価を、コートの上では十分に証明できずにいた。

 4年目のルーキーオプションが行使されるか、フリーエージェント(FA)となるかを見極める重要な3年目を迎えるにあたり、ベンダーはオフになった直後から翌シーズンへの準備を始め、競り負けない体を作るべく体重も約10キロ増量。「3年目はよりアグレッシブになって、このシステムのなかで自分に最も適した役割は何かを見つける」と意気込んでいたが、オフシーズンに納得させられるパフォーマンスを発揮できなかったこともあり、3年目を終えてサンズとの契約は終了することになった。

 ベンダーの課題は、練習中にはできるプレーが、試合本番では出せないこと。サンズでチームメイトだったライアン・アンダーソンは当時、練習でベンダーが見せる実力をみなが評価していたと語っている。
 「彼に必要なのは、とにかく自分への絶対的な自信だ。俺たちは彼を信じている。彼に言っているんだよ。『お前がシュートを打つ時、俺たちは全員“絶対入る”と思っているんだぞ』ってね」

「彼はコートの中でも外でも年齢以上に成熟していて、練習の時はもの凄く知的だ。だけど、実戦となると途端に自信がなくなる。実際、試合は練習とはまったく別物で、自分もそこを乗り越える経験をしたからわかるが、彼の表情からもそれが伺える。“10本打ったシュートをすべて外しても11本目は入る”と信じることができるのは、自分のキャリアにおいて、みんなが俺にそう言い続けてきてくれたから。そして自分自身がその自信を持つことができれば、仲間は11本目のシュートを打たせてくれるんだ」
  ベンダーがデビューした年から、サンズでは毎年ヘッドコーチ(HC)が交代。彼の将来性を買ってドラフト指名を決めたゼネラルマネジャーのライアン・マクドノーも、ベンダーの4年目のオプションを決定する直前に解任されるなど、環境面でも逆風が吹いていた。

 翌2019−20シーズン、センター要員として迎えられたミルウォーキー・バックスでは、ブルック&ロビンのロペス兄弟がいたこともありわずか7試合で計91分の出場。2月にはマービン・ウィリアムズをシャーロット・ホーネッツから迎えるため、ロースター枠を空ける関係で解雇された。将来性は評価されていたが、この時のバックスにとっては、経済的な事情もあって将来性よりも即戦力を選んだ、というのが当時の見解だった。

 しかし直後にウォリアーズとの10日間契約にこぎつけると、先発した古巣のサンズ戦で3ポイント3本を沈めて勝利に貢献するなど、短期間で結果を出し契約更新をゲット。そして3月、NBAが中断された頃は2度目の10日間契約の真っ最中で、中断前最後のゲームとなった3月10日のロサンゼルス・クリッパーズ戦では、25分のプレータイムでキャリアハイに並ぶ23得点に7リバウンドと奮闘していた。
  ウォリアーズで出場した9試合は、平均21分の出場時間で9.0点、5.9 リバウンドと、4年間のキャリアでベストの数字をマーク。ようやく持てる力を発揮する兆しが見えてきたところでもあり、あのまま中断となっていなければ、あるいは契約にこぎつけていた可能性もあっただろう。

 結果的にマッカビに戻ることにはなったが、ベンダーは「ヨーロッパからきた若造にとって、タフな状況になることはわかっていた。(18歳でエントリーしたことに)後悔はまったくない」と話す。
  同じく今季、クリーブランド・キャバリアーズから欧州に戻った2016年のドラフト同期でクロアチア代表の同僚、アンテ・ジジッチとはチームメイトに。サンズ時代に共闘した仲間のマイク・ジェームズ(CSKA モスクワ)や、アレック・ピータース(バスコニア)、グレッグ・モンロー(ヒムキ)とは、対戦相手として再会している。

 すでに4年間のNBAキャリアを携えてなお、ベンダーは現在のマッカビのロースターでも若手に分類される23歳だ。アンダーソンが「通過すべき“成長痛”のようなもの」と例えた、試合の場で実力を発揮できる自信を身につける術も、これからさらに養われていくだろう。

2回目のNBA挑戦は、まだまだ十分ありうる。

文●小川由紀子

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