祝・55本塁打達成! 松井&岡本との比較でもわかる村上宗隆のスゴさ

■21世紀に50本塁打を達成した日本人スラッガーの比較論

2022年9月13日。東京ヤクルトスワローズの村上宗隆が、日本人最多のタイ記録となるシーズン55本塁打を達成した。21世紀のプロ野球において、日本人選手では村上と松井秀喜だけが50本塁打以上を記録している。

まずは、この2人が50本塁打をマークした年を見ていきたい。

松井秀喜(2002年・28歳)
打率.334 50本 107打点  OPS1.153

村上宗隆(2022年・22歳)
打率.337 55本 132打点  OPS1.219 ※9月13日現在

単純に比較すると、村上がすべての数字で、あの松井秀喜より上なことがわかる。当時の松井は脂の乗った28歳だったが、現在の村上はまだ22歳。年齢だけ見ると、大卒1年目の選手が打率3割・50本塁打・130打点を記録したことになる。

このなかでも特に注目したい点は打点だ。そこだけに絞っても、すでに132打点を記録している村上の“4番打者としての資質”も上と見える。4番打者は、勝負を避けられることや、チームプレーの意識により、出塁率が高くなる打者は多い。その点は村上と松井には共通事項としてある。

しかし村上は、その状況の中でも、自らがチームを勝利に導くことに重点を置いた打撃スタイルで、120打点以上を記録した。昨シーズンに112打点を記録した時点で、4番打者としての資質は松井よりも、すでに上だった可能性は高い。

これは個人的な考察であるが、4番打者である限り、チームの勝利に結びつく打点は最重要のポイントとして見てほしいと思っている。さらに、4番打者として必要な要素は、要所で打撃スタイルを変えて、軽打に切り替える器用さも兼ね備えていることだ。要所でのスタイルの変化により、勝利に導く殊勲打が増えていくため、成績や数字以上にチームから頼られ、他チームからは恐れられる選手になったのだろう。

また、現在のプロ野球は、セ・リーグ、パ・リーグともに極端な投高打低の時代である。そのため、村上のスゴさがなおさらわかる結果となる。あらためて数字で見てみよう。2002年と2022年シーズンのセ・リーグ打撃3部門のTOP3は下記である。

村上をのぞくと、今シーズンは、40本塁を記録する打者が高い確率で不在になるだろう。打率も3割2分以上が2選手のみで、2002年シーズンと比較すると、明らかに低い傾向である。また、上記の打撃部門に記載こそないが、打率に関しては、2002年シーズンは上位11選手まで3割を記録していたが、2022年シーズンは上位4選手だけが3割以上という結果である。

さらに、打率TOP3の選手だけを見てみよう。2002年シーズンの場合は、僅差で松井がタイトル争いをしているが、2022年シーズンにおいては、村上が2位の大島洋平に2分近い差をつけており、本塁打と打点のタイトルはほぼ確定している。過去と現在のプロ野球全体のレベルを考慮しても、松井よりも村上のほうが上と言っていいだろう。

■巨人ファン目線から見る野球選手としてのスゴさ

続いて、巨人の長距離砲・岡本と比較していこう。プロ野球は、年々レベルが上がっており、一流選手の定義も連動して上がってきている。打者においては、単に打球を飛ばす長打力だけでは物足りない選手と見なされつつある。ひと昔前は、体を大きくしなければ、スラッガーとしては台頭しづらい状況だった。

巨人の主砲である岡本和真は、2018年に台頭してからは、まさに年々、体を大きくしている傾向にある。その結果、2020年と2021年シーズンこそ2年連続で二冠王に輝いたが、走れないことが大きなウイークポイントになっている。

これまで守備などで不安が露呈する場面は多々あったが、持ち前の勝負強さと打力でカバーできていた。ただ、現代野球において、それだけでは物足らなさが露呈する。さまざまな要因が重なり、2022年シーズンは長期的な不調に陥ったため、4番から降格しているのが現状だ。

今後、岡本が超一流選手としてキャリアを築いていくためには、打撃フォームを含めた好不調の激しさの改善はもちろんのこと、若いうちはポジションにこだわりを持たず、選手としての市場価値を上げることが欠かせない。

そのために、2018年シーズンのようなユーティリティ性を持ったスタイルなどで、アレンジしていくことも一つの手段だろう。

一方、その岡本と昨シーズンにタイトル争いしていた村上は、2020年・2021年の岡本のように、複数個のタイトルを連続で獲得した経験こそないものの、じつは2020年から3年連続で2桁盗塁を記録している。

今では豪快な打撃ばかりが目立っている印象だが、2020年の阪神タイガース戦で1イニング3盗塁を記録するなど、走塁センスも抜けている。村上こそ、東京五輪代表監督を務めた稲葉篤紀氏がコメントしていた「スピード&パワー」を存分に発揮している選手ではないだろうか。

現在、MLBで活躍している大谷翔平はもちろんのこと、ヤクルトのキャプテンである山田哲人を見ても、今後の代表戦に選ばれる選手は、打力やユーティリティ性のみならず、水準以上の脚力も必要になっていくに違いない。そして、良い野手としての基準値も長打力だけではなく、動けたうえでの長打力が必要な時代になっていくだろう。

また、村上にあって岡本にない決定的な要素は、「中心選手としてチームを優勝に導く力があるかないかの差」である。この“導く力”により、冒頭に挙げた松井もチームを優勝に押し上げたが、今の村上にあって岡本にない点でもある。岡本に期待を込めて敢えて書くが、村上を越えるには自らチームを優勝に導く活躍こそが絶対に必要になっていくだろう。

■2022年データの視点から見る村上打者としてのスゴさ

さて、今年の村上をデータからの視点で見ると、凄まじい数字を叩き出している。各コースのデータを見ても穴らしい穴がない。下記がコース別成績である(9/13時点)。

▲参照:https://baseballdata.jp/playerB/1700084_course.html

各コースの成績を見ても、真ん中の外角以外はすべて3割を超えている。その真ん中の外角の本塁打数は9本と、三振の多さや3割を切る数字をうまくカバーしている。そのため、投手はリスクを避けて外角を攻めても、逆に本塁打にされるケースが多いことがわかる。真ん中から内角に関しては、一番難しいとされる内角高めでも打率.345を記録しており、どのコースや高さも打たれることが多いことがわかる。

9分割のストライクゾーンで8箇所は3割を超えており、比較的抑えている外角も他の打者と比較すると、長打のリスクもあることから、このデータだけを見ても、今年の村上のスゴさが際立っている。

また、対チーム別や球場別のデータを見ても、村上のカバーする力のスゴさがわかる(9/13時点)。

▲参照:https://baseball.yahoo.co.jp/npb/player/1700084/stadium

▲参照:https://baseball.yahoo.co.jp/npb/player/1700084/stadium

対巨人のデータでは、打率はセ・リーグで一番低いものの、本塁打はしっかりと8本を残す結果となっている(しかも9/13の巨人戦では2本塁打を放った)。つまり、得点圏打率の高さと打点の多さが、打率の低さをカバーし、逆に勝負強さを示している。

球場別のデータに目を移すと、東京ドームや神宮球場といった打者が有利とされる球場の打率がじつは低い。神宮球場はホームということもあり(試合数が多いということもあり)、22本塁打を記録している。

一方で、このデータからは、東京ドームで試合する際の巨人が村上を抑えていることがわかる。ただ、打者が不利となる広いバンデリンドームでは、打率・本塁打数・打点・OPSと非常にバランスよく打っている結果が明らかになった。平均飛距離117.9mを記録した点で見ても、広い球場を苦にしない打者ということがわかるし、要所でのスタイルの変化も伺える。

上記のデータなどからも、村上は苦手なコースや球場等で率が残せていなくても、長打や勝負強さでカバーができる傾向が強いことがわかる。さらに、広い球場においても、ものともしない飛距離があるため、高いレベルで状況によってうまく対応できることもわかる。ここまで圧倒的なレベルの成績を残すとなると、相手チームは打たれるにしてもシングルヒットであれば助かったという印象すらあるだろう。

このようにさまざまなデータから見ても、今年の村上は弱点らしい弱点がない打者であり、歴代を見渡してもトップクラスの打者と断言できるのだ。

9回ウラ2アウト
みんなが繋いでこの男に打席がやってきた。 #村上宗隆 選手 ついに #王貞治 さんに並ぶ日本人最多シーズン55号HR!! #村神   #神宮球場 #ヤクルト   #巨人 pic.twitter.com/wAhuQMHzgG

— 【公式】フジテレビ野球 (@fujitv_baseball) September 13, 2022

■プロフィール

ゴジキ(@godziki_55)

自身の連載である「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球 2022」をはじめとした「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」等で、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心にコラムを執筆している。今回、新たに「WANI BOOKS NewsCrunch」にてコラムを執筆。Twitter: @godziki_55

〈ゴジキ〉

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