活躍がチームの勝利に直結! 21世紀最強のセットアッパー・クローザーを考える

昨今の野球で、日に日に重要性が増すセットアッパーとクローザーという役割。いわゆる中継ぎというポジションだ。試合終盤の勝敗が決まるしびれる場面で登板し、相手バッターと対峙する。

今回は、そんな重要な存在のセットアッパーとクローザーのなかで、素晴らしい成績をおさめている投手をみていこう。

■試合を締める役割を担うクローザー

クローザーは試合を締めるポジションであり、メンタル的な部分が大きく占められる。現役投手では、栗林良吏(広島)や松井裕樹(楽天)がこのポジションのトップで、大勢(巨人)もそのレベルになりつつあると言っていいだろう。

クローザーの代表格といえば岩瀬仁紀は外せない。大学社会人経由でプロ入りし、キャリア序盤はセットアッパーだったなかで、当時30歳を迎えた6年目からクローザーに転向。そこから最終的には407セーブを記録した。最初はセットアッパーの役割を担い、年齢的に落ち着き始めた時期にクローザーに転向したことが良かったのだろう。

岩瀬の持ち味といえば、横の角度があるスライダーである。さらにシュートも有効に使えており、左右の幅を効かせたピッチングで長年抑えてきた。全盛期の岩瀬は、球種がわかっていても打てないレベルだったのは間違いない。また、体の頑丈さもずば抜けており、セットアッパー時代に無理のある起用に耐えられた部分も大きい。

▲日本代表としてもマウンドにあがった岩瀬仁紀 写真:アフロスポーツ

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次は佐々木主浩だ。フィジカルの全盛期は1990年代といってもいいが、2000年にメジャーリーグに活躍の場を移してからは3年連続で30セーブを挙げ、メジャー4年間で228試合に登板し、129セーブを記録。

特に2001年は、シーズン中に自己最速の154km/hを記録。MLBタイ記録となるチーム116勝目を45セーブで締めくくるなどの活躍を見せた。ただ、佐々木の場合はスピードボールとフォークのイメージだが、コントロールの良さも素晴らしかった。1990年代にはなるが、1997年に記録した奪刷新率14.85は救援投手(50投球回以上)で歴代1位となる偉業である。

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最後は藤川球児だ。「火の玉ストレート」は、わかっていても打てないほどで、2006年のオールスターではカブレラに対して、全球ストレートを予告し、1回もバットに当てさせず空振り三振に打ち取った場面は今でも語り継がれている。

この藤川も岩瀬と同様に、セットアッパーから台頭し始めて、打高の時代に脅威の防御率0.68を記録。全盛期ともいえる2005年から2007年は、セットアッパーやクローザーにもかかわらず、100奪三振を超える数字を記録した。

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■セットアッパーの力量で優勝が決まる

過酷なポジションでもあるセットアッパーは、試合終盤のしびれる場面で登板することになる。岩瀬や藤川といった投手も素晴らしい活躍を見せて、のちにクローザーとなった。このセットアッパーの力量により、優勝した球団は多い。

そのため、求められる能力としてはピンチの場面を抑える「火消し」や、相手を制圧する圧倒的なボールだ。だからこそ、全盛期の岩瀬や藤川もセットアッパーとして起用されていた。

また、2022年シーズンを見るとオリックスの宇田川優希は、このポジションで活躍し、チームを日本一に導いた。さらに阪神の湯浅京己も、このポジションで一気に台頭した。今後が楽しみな選手たちである。

まずはプロ野球史上初の200ホールドを達成した山口鉄也だ。原辰徳監督の巨人第二政権時に二度の3連覇を達成した強さは、この山口がセットアッパーにいたことが一つの要因だったのは間違いない。

育成選手から日本を代表するセットアッパーにまで成長。この山口も岩瀬と同様にスライダーとシュートを武器にしており、当時の2軍投手コーチの小谷正勝氏に絶賛されたチェンジアップを投げていた。また、体の丈夫さもほかの選手と一線を画す。2008年から2016年までの9年連続60登板はプロ野球記録だ。

ただ、セットアッパーとして無理のある起用もあり、衰えてから引退までは早かった。クローザー転向を断ったこともあり、生涯セットアッパーで生きた山口。“たられば”にはなるが、クローザーとして最終回のマウンドに立っている世界線も見てみたかった。

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次は山口と同じ時期にセ・リーグで活躍した浅尾拓也だ。甘いマスクから人気もあり、若手の頃から期待される。

2年目には岩瀬が北京五輪でチーム不在時に、代役としてクローザーを務めるなどの活躍を見せて一気に台頭する。2009年には開幕投手を務めるも、先発としては難しいと感じて、再びセットアッパーとして投げ続けた。

全盛期は2010~2011年と短い期間だったが、最速157km/hのストレートと140km/h以上のフォークは、打者からするとお手上げ状態だった。もともと先発をしていたことから、重要な試合では回跨ぎもしており、セットアッパーとしてキャリアで一番フル回転した2011年は、100奪三振と脅威の防御率0.41を記録。

この成績を残したこともあり、セットアッパーとしては異例のシーズンMVPも獲得。さらにフィールディングの良さもあり、先発登板が一度もない投手としては初のゴールデングラブ賞も獲得した。

しかし、この無理のある起用は長続きせず、2012年以降は苦しんだ。ただ、瞬間最大風速で見ると、守り勝つ野球の落合・中日ドラゴンズの晩年を支えたと言っても過言ではない。

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続いては、現在も現役でマウンドに立つ宮西尚生(日本ハム)だ。380ホールド(2022年終了時点)は日本記録である。宮西に関しては、2008年から平均して50登板以上している息が長い投手である。

長期離脱は2022年のみで、体の強さも充分。そのため、1年目から14シーズン連続で50試合以上の登板を記録している。これまであげてきた山口や浅尾のように、1シーズンあたりの圧倒的な感じはないが、調子に大きな波がなく、細く長くプレーするスゴさがある投手だ。

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そして、先発・セットアッパー・クローザーで活躍した上原浩治も忘れてはいけない。日米通算100勝100セーブ100ホールドを達成した投手は上原だけである。

上原といえばフォークボールのイメージが強いが、ルーキーイヤーの1999年のはじめは、スライダーを中心に投げており、得意球のフォークを使い始めたのはシーズン中からだ。この年の上原はスゴいという言葉だけでは語れないレベルの投球を披露。

本塁打王を獲得したロベルト・ペタジーニや、首位打者と打点王の2冠を獲ったロバート・ローズが上原の直球に振り遅れ、手も足も出ない状態だった。

また、コントロールは歴代でもトップクラスで、K/BB(奪三振と与四死球の比率)はキャリアで1000イニング以上投げた投手のなかでは、歴代最高となる通算6.68を記録している。

先発時代はキャリアで二度の沢村賞を獲得し、五輪などの国際大会も負けなしのピッチングを見せた。さらにクローザーに転向したシーズンも、2007年に32セーブを挙げると、メジャー移籍後も3年連続で20セーブを記録。

2013年に関してはクローザーとして100奪三振を記録した。先発からクローザーまで万能的に活躍をした投手と言ってもいいだろう。

出典:https://sp.baseball.findfriends.jp/player/19750029/

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クローザーとしては現在、歴代最多セーブ数をあげた岩瀬仁紀が最強と呼ぶに相応しいのではないだろうか。

セットアッパーは、瞬間最大風速でいえば浅尾拓也、長年のチームへの貢献を考えれば山口鉄也となるだろうか。いまなお、現役でマウンドに立ち続ける宮西尚生も、さらに登板数を重ねていくはずだ。

また、宇田川優希や湯浅京己といった近年台頭してきた投手たちも、ゆくゆくは偉大な先輩たちに追いつき追い越すような活躍を期待したい。

■プロフィール

ゴジキ(@godziki_55)

自身の連載である「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球 2022」をはじめとした「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」などで、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心にコラムを執筆している。今回、新たに「WANI BOOKS NewsCrunch」でコラムを執筆。Twitter: @godziki_55

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