全勝でプールBを首位通過! 1次ラウンドの侍ジャパンの戦いを振り返る

全勝でプールBを首位通過! 1次ラウンドの侍ジャパンの戦いを振り返る

侍J 1次Rの戦いを振り返り

■1次ラウンドは二刀流・大谷翔平の活躍で相手を圧倒

1次ラウンドで、投打ともにトップクラスの成績を残したのは大谷翔平だ。

メジャーリーグでも二刀流で活躍する大谷だが、このWBCという大舞台でも最高のパフォーマンスを残している。大会前の実戦形式が2試合のみと不安な部分が残るなかで、初戦から格の違いを見せつけた。

投げては、本調子からはほど遠かったものの、初戦の中国戦で4回を49球、被安打1、5奪三振の投球内容。

打っては、1点リードの4回に一死ランナー1,3塁のチャンスで、フェンス直撃の2点タイムリーツーベースを放った。

この試合は2安打とマルチヒットを記録。お立ち台に上がる活躍を見せ、緊張感があふれる初戦で日本を勝利に導く活躍をみせた。

また、この試合で記録した球速161km/hと打球速度177km/hは、両チーム1位の数字。

2戦目の韓国戦は、初回こそ金廣鉉(キム・グァンヒョン)の前に三振に倒れるが、5回裏にツーベースを放つ。さらに、6回裏には無死満塁からタイムリーを放ち、2試合連続でマルチヒットを記録した。

3戦目のチェコ戦は、2打席目まで全くタイミングが合わなかったものの、4回裏の一死2塁のチャンスでタイムリーツーベースを放つ。

4戦目のオーストリア戦は、初回に相手の出鼻を挫く、自身が写っている看板に直撃のスリーランホームランを放った。

1次ラウンド最終戦で、一振りで球場の雰囲気を変える、スターらしさあふれる特大のホームランだった。

今大会の大谷の1次ラウンドの成績は下記である。

投手成績:1試合  1勝0敗 4回 5奪三振 防御率0.00
野手成績:4試合  打率.500  1本塁打  8打点 出塁率.684  長打率1.000  OPS1.684

メジャーで、ここ2年間トップクラスの成績を残した選手として納得のいく数字となった。投手成績に関しては、2015年プレミア12を含めると、いまだに国際大会で失点をしていない。

この活躍ぶりもあって、1次ラウンド プールBのMVPに選出される。相手からのマークも厳しいなか、投打にわたり堂々たる成績を残した。

世界最高のプロ野球選手と言ってもいい大谷は、このWBCで最終的に大会そのものをひっくり返すような活躍を期待したい。

そのぐらいの実力と球場の雰囲気を変えられる人気もあることから、2009年以来の世界一に日本を導いて欲しい。

■世界最高の先発陣の調子は上々

これまでのWBCを振り返っても、今大会の先発陣は歴代最高峰といっても過言ではない。

先発陣の1次ラウンドの結果は下記である。

大谷翔平:1試合 1勝0敗 4回 5奪三振 防御率0.00  
ダルビッシュ有:1試合  1勝0敗  3回  1奪三振  防御率6.00
佐々木朗希:1試合  1勝0敗  3回⅔   8奪三振  防御率0.00
山本由伸:1試合  1勝0敗  4回  8奪三振  防御率0.00

最年長のダルビッシュ有は韓国打線に捕まるなど、調子がなかなか上がらなかった。

そのなかで、国際大会デビューをした佐々木朗希や東京五輪でエースとして活躍をした山本由伸は実力どおり相手打線を抑え、次の登板予定試合の準決勝・決勝に向けて期待できる結果に。

チェコ戦で先発した佐々木は、多少の力みはあったものの、160km/h以上のボールを連発。配球の影響からか、ストレートの割合が多かったものの、チェコ打線を抑えた。

さらに、平均球速で見ても160km/hを記録した。この数字は日本だけではなく、メジャーリーグでもトップクラスである。

昨年の強化試合ではボールに馴染めずに、圧倒的なピッチングは見られなかったが、この試合では21歳とは思えないマウンドさばきをみせた。

佐々木は現在地を見ても、投手として大谷翔平よりもポテンシャルの高さを感じられる。

プロ入り後は大事に育成されてきたが、シーズンを投げ切れる体力と投球術をさらに磨いていけば、国内だけではなくメジャーリーグでもトップクラスの成績を残せるだろう。

佐々木に関しては、このWBCで次回の登板も含め、さらに大きく成長することに期待したい。

オーストリア戦で先発した山本由伸は、4回を60球1安打8奪三振の完璧なピッチングを見せた。

バッテリーを組んだ中村悠平も、相手打者の反応をみての配球のバランスが素晴らしかった。このこともあり、多少の抜け球もオーストラリア打線は打ち損じていたのだろう。

また、山本由伸はフォーム変更から時間が浅いため不安材料もあったが、これまでの国際大会の経験も踏まえ、試合中にうまく対応できていた部分も大きかった。

佐々木と山本に関しては、この大会でメジャーのスカウトからの評価が、さらに上がっていくだろう。

■ラーズ・ヌートバーと吉田正尚も打線を引っ張る

今大会は、メジャーリーガーのラーズ・ヌートバーと吉田正尚も打線を引っ張っている。強化試合は2試合のみしか出場できなかったが、対応力の高さを見せた。

ヌートバーに関しては、トップバッターとして4試合中2試合の1打席目に出塁している。特に初戦の中国戦は、いきなりセンター前ヒットで出塁し、先制点のきっかけを作った。

出塁率に関しても.579と一番打者に相応しい成績を残し、相手バッテリーに隙があれば盗塁も決めている。

また、守備面では中国戦と韓国戦でファインプレーを見せるなど、投手陣を助けた。

走攻守で躍動し、人気も一気に上昇中のヌートバーは、準々決勝以降も目が離せない。

侍ジャパンのトップバッターとして大活躍のヌートバー 写真:CTK Photo/アフロ

吉田正尚は、今シーズンからメジャーリーガーの仲間入りをしたが、東京五輪と同様に国際大会の強さを見せている。

三振率の低さやコンタクト率の高さ、チャンスの強さはNPB時代に頭ひとつ抜けていたが、世界の舞台でも発揮している。

1次ラウンドの三振数は、スタメン出場した選手で唯一の0である。打点に関しても大谷に並ぶチームトップの8を記録した。

2番として機能している近藤健介を含め、得点力のある上位から中軸で、準々決勝以降も相手投手の攻略に期待していきたい。

■準々決勝以降は負けない試合をできるかどうか

これまでの4戦を振り返ると、投手・野手ともにほぼ全員を満遍なく起用できているのも大きい。

守護神として期待されていた栗林良吏が、腰の張りのため離脱となったのは痛いが、投手陣はほぼ盤石な体制になっている。(追加召集でオリックス・バファローズの山﨑颯一郎投手がメンバー入り)

今大会の日本投手陣の平均球速は、152.2km/hを記録しており、ベネズエラやプエルトリコと比較しても、引けを取らないレベルだ。

また、先発陣も残り3試合を考えると、1人が余るぐらいのレベルである。

1次ラウンドの内容や調子を考えると、準々決勝は大谷、準決勝と決勝は佐々木や山本を起用したほうがいいだろう。

韓国戦に先発したダルビッシュは、他の先発投手の調子の兼ね合いを見ると、準々決勝あたりで第二先発での登板もありえるだろう。

その他の投手を見ても、東京五輪でフル回転の活躍をみせた伊藤大海をはじめとして、宇田川優希、髙橋宏斗、大勢あたりをうまく起用していくのもポイントになっていく。

また、これまで併用されている捕手については、準々決勝以降の負けられない試合となると、各投手をうまくリードしており、打撃の調子もいい中村を中心に運用していったほうが得策だ。

甲斐拓也がマスクを被った試合は、配球の割合が高かったストレートを狙い打ちされていた。

大谷や佐々木レベルのストレートならば、1次ラウンドであれば長打はほとんどなかったが、準々決勝以降は相手のレベルも上がるため、非常に危険である。

野手陣をみていくと、4番を任されている村上宗隆にヒットが出始めて、復調の兆しを見せ始めている。

ラーズ・ヌートバーから始まり、近藤や大谷が並ぶ1〜3番や、吉田が機能しているため、村上の調子が上がっていけば、さらに打線に厚みはできるだろう。

現在の村上の起用法に賛否はあるが、ここまできたら復活を願うのみだ。

また、大会前に不調だった山田哲人も、中国戦とチェコ戦でタイムリーを放ち、国際大会での勝負強さを見せている。

山田に関しては、どの選手よりも国際大会の経験があることから、二塁手として固定していきたいところ。

山田を二塁手に固定することにより、一塁手はチームトップの2本塁打を記録している牧秀悟を抜擢したい。

中野拓夢と中村の8、9番も出塁できることから、4戦目時点で全体的に切れ目がなくなっていることが大きい。

懸念材料としては、ディフェンス面である。

源田壮亮が怪我をしたことにより、センターラインを含めたディフェンス力は低下している。

実際のところ、チェコ戦では守備の乱れから先制点を許している。これは準々決勝以降はなくしていきたい失点だ。

これまで対戦した相手は、投手力やビハインドをひっくり返せる打線の力技でなんとかなった部分はあったが、打線は水物であることや、準々決勝以降は徐々に平均球速を含めた相手投手力も上がるため、ロースコアゲームの対策も頭に入れておきたい。そうなると、ディフェンス面のミスは致命的な問題になりかねない。

前回大会の準決勝・アメリカ戦も、失策にはならなかったものの、松田宣浩へのサードゴロでファンブルをしなければ、日本は勝てていた可能性もあった。

逆に東京五輪では失策数1を記録。これは出場国で最も少ない数字。固いディフェンス力を活かしたのもあり、金メダルに輝いた。

短期決戦では、いかにミスをしない野球をできるかが重要である。

そのため、準々決勝以降は負ける確率を減らす戦い方ができるか、そこがポイントになっていくだろう。

いよいよ明日は準々決勝。相手はイタリア。これまでの勢いそのままに侍ジャパンに勝利を掴んでほしい。

■プロフィール

ゴジキ(@godziki_55)

自身の連載である「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球 2022」をはじめとした「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」などで、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心にコラムを執筆している。今回、新たに「WANI BOOKS NewsCrunch」でコラムを執筆。Twitter: @godziki_55

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